株券発行会社についての知識の有無を問う問題です。選択肢イについては、株券発行会社の場合、株式の譲渡についての会社に対する対抗要件と第三者に対する対抗要件が違うので、整理して記憶しましょう。
株券発行会社における会社に対する対抗要件は「株主名簿の名義書換」ですが、第三者に対する対抗要件は「株券の所持」となり、それぞれ対抗要件が異なっています。ひっかかりやすいので注意しましょう。
なお、株券発行会社でない株式会社の場合は、株式の譲渡についての会社・第三者に対する対抗要件はいずれも「株主名簿の名義書換」となります(会社法130条1項)。
選択肢1. アエ
ア・・正しいです。
会社法216条3号では「譲渡による当該株券に係る株式の取得について株式会社の承認を要することを定めたときは、その旨」を株券に記載する旨規定しています。
イ・・誤りです。
前述のとおり、株券発行会社における会社に対する対抗要件は「株主名簿の名義書換」(会社法130条1項、2項)、第三者に対する対抗要件は「株券の所持」です。この点、本肢では、第三者に対しても「株主名簿の名義書換」を対抗要件としている点で誤りです。
なお、株券発行会社における効力発生要件は「当事者間の意思表示」と「株券の交付」(会社法128条1項本文)です。
ウ・・誤りです。
株券発行会社の株券を喪失したときは、株券喪失登録(会社法221条以下)によって手続を行います。除権決定は非訟事件手続法第4編の106条に規定されています。
しかし、会社法233条では「非訟事件手続法第4編の規定は、株券については、適用しない」旨規定しているので、除権決定によって喪失した株券を無効とすることはできません。
エ・・正しいです。
株券の交付を受けた者は、悪意又は重過失の場合を除き、その株券に係る株式についての権利を取得します(会社法131条2項、善意取得)。会社法でも民法同様、一定の場合には善意取得を認めています。
オ・・誤りです。
株主は、株券発行会社に対して、その有する株式に係る株券の所持を希望しない旨を申し出ることができます(会社法217条1項)。条文上、株券発行会社としか規定しておらず、公開会社、公開会社でない会社の区別がなされていないことから、株券発行会社であれば、217条1項の申出をすることができます。
まとめ
以上から、アとエが正しい記述になります。