司法書士の過去問
令和4年度
午前の部 問31

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問題

令和4年度 司法書士試験 午前の部 問31 (訂正依頼・報告はこちら)

取締役に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
なお、問題文に明記されている場合を除き、定款に法令の規定と異なる別段の定めがないものとする。

ア  会社法上の公開会社でない株式会社においては、取締役が株主でなければならない旨を定款に定めることができる。
イ  監査等委員会設置会社において、監査等委員である取締役が5人いる場合には、そのうちの3人以上は社外取締役でなければならない。
ウ  成年被後見人及び被保佐人は、取締役となることができない。
エ  監査等委員会を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、取締役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。
オ  株主総会の決議によって取締役の報酬額が具体的に定められた場合であっても、その後の株主総会において当該取締役について定められた報酬を無報酬と変更する旨の決議がされたときは、当該取締役は、無報酬とすることに同意していなくても、報酬の請求権を失う。
  • アイ
  • アエ
  • イウ
  • ウオ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

取締役に関する問題です。

選択肢4. ウオ

アは正しいです。株式会社は原則として、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができませんが、公開会社でない株式会社においては可能です(331条2項)。

イは正しいです。監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役は、3人以上で、その過半数は、社外取締役でなければなりません(331条6項)。

ウは誤りです。成年被後見人及び被保佐人は、取締役となることができないと定めていた331条1項2号は改正で削除され、331条の2において成年被後見や被保佐人が取締役に就任する際の特別の規定が置かれました。

エは正しいです。監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の変更や同定めを廃止する定款の変更などがある場合には、取締役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了します(332条7項)。

オは誤りです。最高裁は、「株式会社において、定款又は株主総会の決議・・・によって取締役の報酬額が具体的に定められた場合には、その報酬額は、会社と取締役間の契約内容となり、契約当事者である会社と取締役の双方を拘束するから」、その後、株主総会が無報酬に変更する旨の決議をしても、当該取締役は、その変更に同意しない限り、報酬請求権を失わないと判断しています(最判平4.12.18)。

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02

取締役に関する条文及び判例を問う問題です。監査等委員会の場合、社外取締役は「過半数」ですが(会社法331条6項、本問の選択肢イ)、監査役会における社外取締役は「半数以上」(会社法335条3項)という点もあわせて覚えましょう。

選択肢4. ウオ

ア・・正しいです。

会社法331条2項において、「株式会社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができない。ただし、公開会社でない株式会社においては、この限りでない。」と規定しており、公開会社でない株式会社において、取締役が株主でなければならない旨を定款に定めることができます。

イ・・正しいです。

会社法331条6項において、「監査等委員会設置会社においては、監査等委員である取締役は、三人以上で、その過半数は、社外取締役でなければならない。」旨規定しています。したがって、監査等委員会に監査等委員である取締役が5名いる場合は、過半数である3名以上が社外取締役でなければなりません。本肢は、正しい肢となります。

ウ・・誤りです。

会社法331条1項において、取締役の欠格事由に成年被後見人や被保佐人を掲げていませんので、いずれも取締役に就任できます。ただし、成年被後見人が就任する場合、成年後見人が成年被後見人の同意を得た上、就任を承諾し(会社法331条の2第1項)、被保佐人が就任する場合、保佐人の同意を得る必要(会社法331条の2第2項)があります。

<参考>

※被保佐人に代理権付与の審判がある場合、就任承諾は保佐人、同意は被保佐人

 被保佐人に代理権付与の審判がない場合、就任承諾は被保佐人、同意は保佐人 

エ・・正しいです。

会社法332条7項2号において、監査等委員会又は指名委員会等を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更により、取締役の任期が終了する旨規定しています。

オ・・誤りです。

 最判平成4年12月18日は、「株式会社において、定款又は株主総会の決議によ って取締役の報酬額が具体的に定められた場合には、その報酬額は、会社と取締役間の契約内容となり、契約当事者である会社と取締役の双方を拘束するから、その後株主総会が当該取締役の報酬につきこれを無報酬とする旨の決議をしたとしても、 当該取締役は、これに同意しない限り、右報酬の請求権を失うものではないと解す るのが相当である。」旨判示しています。

 したがって、当該取締役が報酬請求権を失うわけではありません。

 本件は、取締役である上告人が常勤の取締役から非常勤の取締役に変更されたことを前提にして株主総会で無報酬と決議されたが、これに同意していなかったという事案です。

 仮に、この判例を知らなくてオが正解か不正解かを判断できなくても、アとイが正しいと判断できた時点で、ウオかエオの2択となります。

 オは誤りの肢で共通していますから、ウが誤りと判断できれば正解にたどり着けます。 

まとめ

以上から、ウとオが誤っている記述になります。

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03

取締役に関する問題です。

選択肢4. ウオ

アは正しいです。

非公開会社においては定款において取締役を株主に限定することを設定することができます(331条2項但書)

イは正しいです。

監査等委員会設置会社では監査等委員である取締役は過半数以上が社外取締役でなくてはいけません。331条6項)

監査当委員である取締役が5人の場合は3人以上が社外取締役である必要があります。

ウは誤りです。

成年後継人及び被保佐人は取締役に就任することができます。令和元年の法改正によって改正されました。

エは正しいです。

監査等委員会を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、取締役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了します(332条7項)

監査当委員会設置会社では取締役の位置づけや役割が違うので取締役が形態を変えたあとの株式会社に対応することができない場合があるためです。

オは誤りです。

株式会社において、定款又は株主総会の決議によって取締役の報酬額が具体的に定められた場合には、その報酬額は、会社と取締役間の契約内容となるので、契約当事者である会社と取締役の双方を拘束します。その後株主総会が取締役の報酬についてこれを無報酬とする旨の決議をしたとしても、取締役は、これに同意しない限り、報酬の請求権を失うものではないと解するのが相当です。(最判平4.12.18)

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