司法書士の過去問
令和4年度
午前の部 問34

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問題

令和4年度 司法書士試験 午前の部 問34 (訂正依頼・報告はこちら)

株式会社の組織再編等に関する次の1から5までの記述のうち、正しいものは、どれか。
なお、問題文に明記されている場合を除き、定款に法令の規定と異なる別段の定めがないものとする。
  • 株式会社は、株主総会の決議によって承認を受けなくても、他の会社の事業の一部を譲り受けることができる。
  • 吸収合併消滅会社が発行した新株予約権は、吸収合併の登記をした時に、消滅する。
  • 吸収分割をする場合において、吸収分割後吸収分割会社に対して債務の履行を請求することができる吸収分割会社の債権者は、吸収分割会社に対し、吸収分割について異議を述べることができる。
  • 吸収合併が法令又は定款に違反し、吸収合併存続会社の株主が不利益を受けるおそれがあるときであっても、吸収合併存続会社の株主は、吸収合併存続会社に対し、当該吸収合併の差止めを請求することはできない。
  • 株式交換をする場合において、株式交換完全親会社の反対株主は、株式交換完全親会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することはできない。

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この過去問の解説 (3件)

01

株式会社の組織再編等に関する問題です。

選択肢1. 株式会社は、株主総会の決議によって承認を受けなくても、他の会社の事業の一部を譲り受けることができる。

正しいです。事業譲渡等の承認について、株式会社は、467条1項各号に掲げられている行為をする場合には、当該行為の効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、当該行為に係る契約の承認を受けなければならなりませんが、各号には、他の会社の事業の全部の譲受け含まれます(3号)が、一部の譲受けは含まれません。

選択肢2. 吸収合併消滅会社が発行した新株予約権は、吸収合併の登記をした時に、消滅する。

誤りです。会社が吸収合併をする場合において、吸収合併存続会社が株式会社であるときは、吸収合併契約において、吸収合併がその効力を生ずる日を定めなければなりません(749条1項6号)。吸収合併の登記をした時ではありません。

選択肢3. 吸収分割をする場合において、吸収分割後吸収分割会社に対して債務の履行を請求することができる吸収分割会社の債権者は、吸収分割会社に対し、吸収分割について異議を述べることができる。

誤りです。吸収分割をする場合、吸収分割後吸収分割株式会社に対して債務の履行を請求することができない吸収分割株式会社の債権者は消滅株式会社等に対し、吸収合併等について異議を述べることができます(789条1項2号)。

選択肢4. 吸収合併が法令又は定款に違反し、吸収合併存続会社の株主が不利益を受けるおそれがあるときであっても、吸収合併存続会社の株主は、吸収合併存続会社に対し、当該吸収合併の差止めを請求することはできない。

誤りです。当該吸収合併等が法令又は定款に違反する場合において、存続株式会社等の株主が不利益を受けるおそれがあるときは、存続株式会社等の株主は一定の場合を除いて、存続株式会社等に対し、吸収合併等をやめることを請求することができます(796条の2)。

選択肢5. 株式交換をする場合において、株式交換完全親会社の反対株主は、株式交換完全親会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することはできない。

誤りです。吸収合併等をする場合には、反対株主は一定の場合を除いて、存続株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができます(797条1項)。

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02

吸収型組織再編(吸収合併、吸収分割、株式交換)及び事業譲渡についての設問です。

事業譲渡においては、事業の全部の譲受けの場合は、株主総会の決議による承認が必要ですが、事業の一部の譲受けの場合は、株主総会の決議による承認は不となる点に注意しましょう。

なお、組織再編には、吸収型組織再編のほかに新設型組織再編もあります。

新設型組織再編とは、新設合併、新設分割、株式移転のことです。

選択肢1. 株式会社は、株主総会の決議によって承認を受けなくても、他の会社の事業の一部を譲り受けることができる。

1・・正しいです。

条文については、会社法467条1項を参照してください。

冒頭に記載したとおり、事業の全部の譲受けの場合、株主総会の決議による承認が必要ですが、事業の一部の譲受けの場合は、株主総会の決議による承認は不要となります。

事業の全部の譲受けをすると、株式会社及び株主にとって重大な影響を及ぼしますが、一部の譲受けであれば、株式会社及び株主にとって重大な影響までは及ぼさないという観点で考えるとよいでしょう。

選択肢2. 吸収合併消滅会社が発行した新株予約権は、吸収合併の登記をした時に、消滅する。

2・・誤りです。

吸収型組織再編(吸収合併、吸収分割、株式交換)については、「吸収合併の登記をした時」ではなく、「合併の効力が生じた日」(効力発生日)に効力が生じます。(吸収合併については、会社法750条6項、749条1項6号)。

なお、新設型組織再編(新設合併、新設分割、株式移転)は、設立株式会社の成立の日、つまり設立登記の日に効力が生じます新設合併は会社法754条1項、新設分割は764条1項、株式移転は774条1項にそれぞれ規定されています。なお、株式会社の成立49条も参照してください)。

このように吸収型組織再編では「効力発生日」に効力が生じるのに対し、新設型組織再編では「設立登記の日」に効力が生じるという違いがあります。

選択肢3. 吸収分割をする場合において、吸収分割後吸収分割会社に対して債務の履行を請求することができる吸収分割会社の債権者は、吸収分割会社に対し、吸収分割について異議を述べることができる。

3・・誤りです。

会社法789条1項2号において、「吸収分割後吸収分割株式会社に対して債務の履行を請求することができない吸収分割株式会社の債権者は、吸収分割について異議を述べることができる」旨規定しています。

ですから、「債務の履行を請求することができる吸収分割会社の債権者」は吸収分割会社に対し、吸収分割について異議を述べることはできません。

選択肢4. 吸収合併が法令又は定款に違反し、吸収合併存続会社の株主が不利益を受けるおそれがあるときであっても、吸収合併存続会社の株主は、吸収合併存続会社に対し、当該吸収合併の差止めを請求することはできない。

4・・誤りです。

「当該吸収合併等が法令又は定款に違反する場合には、存続株式会社等の株主が不利益を受けるおそれがあるときは、存続株式会社等の株主は存続株式会社等に対し、吸収合併等をやめることを請求することができる」旨規定されています(会社法796条の2柱書、同条1号)。

したがって、株主が不利益を受けるおそれがあるときには、吸収合併存続株式会社の株主は、吸収合併存続会社に対し、当該吸収合併の差止めを請求できます。

選択肢5. 株式交換をする場合において、株式交換完全親会社の反対株主は、株式交換完全親会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することはできない。

5・・誤りです。

会社法797条1項において、「吸収合併等をする場合には、反対株主は、存続株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。」(吸収合併等には、株式交換も含まれます。797条1項における吸収合併等の定義については、会社法782条1項柱書を参照してください。)と規定しています。

したがって、株式交換完全親会社の反対株主は、株式交換完全親会社に対し、買取を請求できます。

なお、吸収型組織再編の存続株式会社等において株式買取請求できない場合は、以下の2つです。

①簡易手続による場合(会社法797条1項但書、796条2項本文)

②略式手続による場合(特別支配会社のみ)(会社法797条2項2号かっこ書、796条1項本文)

本肢では、上記2つの場合に該当しないので、株式買取請求をできると考えてもいいでしょう。

まとめ

以上から、「株式会社は、株主総会の決議によって承認を受けなくても、他の会社の事業の一部を譲り受けることができる。」が正しい記述になります。

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03

株式会社の組織再編等に関する問題です。

選択肢1. 株式会社は、株主総会の決議によって承認を受けなくても、他の会社の事業の一部を譲り受けることができる。

正しいです。

株式会社は他の会社の事業の全部の譲り受けをする際には株主総会の決議による承認が必要ですが、会社の事業の一部の場合は株主総会決議は必要ありません(467条1項)

選択肢2. 吸収合併消滅会社が発行した新株予約権は、吸収合併の登記をした時に、消滅する。

誤りです

吸収合併消滅株式会社の新株予約権は効力発生日に消滅します。(749条1項6号)

選択肢3. 吸収分割をする場合において、吸収分割後吸収分割会社に対して債務の履行を請求することができる吸収分割会社の債権者は、吸収分割会社に対し、吸収分割について異議を述べることができる。

誤りです

吸収分割株式会社に対して債務の履行を請求できるので吸収分割会社に異議を述べることはできません。異議を述べることができるのは吸収分割会社にたいして履行の請求ができなくなってしまう債権者です。(789条1項2号)

選択肢4. 吸収合併が法令又は定款に違反し、吸収合併存続会社の株主が不利益を受けるおそれがあるときであっても、吸収合併存続会社の株主は、吸収合併存続会社に対し、当該吸収合併の差止めを請求することはできない。

誤りです

吸収合併が法令又は定款に違反し株主が不利益を受けるおそれがある場合、株主は株式会社に対して吸収合併の差し止めを請求することができます。(796条の2)

選択肢5. 株式交換をする場合において、株式交換完全親会社の反対株主は、株式交換完全親会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することはできない。

誤りです

組織再編は原則として反対株主の株式買取請求があります。大規模な会社の再編にあたるからです。ですので株式交換完全親会社の反対株主は株式買取請求ができます。(797条1項)

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