持分会社の社員の責任、社員の持分の譲渡などについて条文の知識を問う問題です。選択肢オについては、株式会社と持分会社の差異に注意してください。
法人は、株式会社の取締役及び監査役の欠格事由(会社法331条1項1号、335条1項)にあたりますので、法人は取締役及び監査役になれません。一方、法人は、持分会社の業務執行社員にはなれます(会社法598条1項)。
このように株式会社と持分会社で異なる点について意識して学習するとよいでしょう。
選択肢3. イオ
ア・・誤りです。
会社法605条2項において「持分会社の成立後に加入した社員は、その加入前に生じた持分会社の債務についても、これを弁済する責任を負う。」と規定しています。
なお、合資会社の有限責任社員は、出資の未履行部分がある場合、その未履行部分を限度として、合資会社の債務を弁済する責任を負います。
※参考
合同会社の社員は、全員が有限責任社員ですし、加入前に出資の履行をしなければなりません(会社法578条本文、604条3項)から、加入前に生じた持分会社の債務という概念は存在しないので、合同会社の債務を弁済する責任は負いません(会社法580条2項かっこ書)。
イ・・正しいです。
会社法587条2項において「持分会社が当該持分会社の持分を取得した場合には、当該持分は、当該持分会社がこれを取得した時に、消滅する。」と規定しています。
なお、株式会社では、自己株式を取得しても自己株式は消滅しない(会社法155条以下)ので、持分会社との違いに注意しましょう。
ウ・・誤りです。
会社法607条1項において、法定の退社自由を定めており、破産手続開始の決定があった場合には、退社をするのが原則とされています(同項5号)。
しかし、同条2項において、破産手続開始の決定(同項5号)、解散(同項6号)、後見開始の審判を受けたこと(同項7号)によっては、退社しないことを定めることができる旨規定しています。
ですから、持分会社は、無限責任社員が破産手続開始の決定によっては退社しない旨を定款で定めることができます。
エ・・誤りです。
会社法832条1号において、社員が民法その他の法律の規定により設立に係る意思表示を取り消すことができるとき、当該社員は、持分会社の設立の日から2年以内であれば、訴えをもって持分会社の設立の取消しを請求できるとしています。
オ・・正しいです。
冒頭に記載したとおり、法人は、持分会社の業務執行社員になることができます(会社法598条1項)。
この場合、業務執行社員の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を他の社員に通知する必要があります(同条1項)。
まとめ
以上から、正しい肢は、イとオになります。