選択肢5. ウオ
ア・・誤りです。
「被告が既に履行期にある請求権の存在を認め」の部分は,現在給付の訴えですので,訴えの利益が認められます。被告が任意に支払う意思を有していたかどうかは関係ありません。
したがって,「訴え提起後もこれを争わないことが明らかなとき」であっても,訴えの利益はあると認められます。
イ・・誤りです。
本問と同様に,原告の土地についての所有権の確認を求める本訴が係属中に,被告人が前述の土地の返還を求める反訴が提起された場合,当該反訴によって甲土地の所有権の所在については既判力が生じない(民事訴訟法114条1項参照)ので,甲土地の所有権の確認を求める本訴には,訴えの利益が認められます。
所有権の確認という体裁を本訴でとっていても,明渡請求権の基になっている所有権の確認であり,訴えの利益があるといえます。
次の判例と混同しないようにしてください。
債務不存在確認訴訟が係属中,債権者から債務の履行を求める反訴が提起された場合には,本訴である債務不存在確認訴訟は,後発的に確認の利益を欠くことになる(最判平成16年3月25日)。
本肢の事例と異なり,本訴が債務不存在確認訴訟です。
この場合,反訴の前提となった本訴は,確認の利益を欠くことになります。
反訴で債権債務の有無を争えばいいので,債務不存在確認訴訟の本訴の場合,債務の履行を求める反訴が提起されると確認の利益がなくなるという違いがあります。
ウ・・正しいです。
現に生存している遺言者が提起した遺言無効確認訴訟の訴えには,確認の利益が認められません(最判昭和31年10月4日)。そもそも,遺言者は,生存中,いつでも遺言を撤回できます(民法1022条)し,即時確定する利益も必要性もないからです。
エ・・誤りです。
債権者がすでに執行力のある公正証書(民事執行法22条5号,執行証書)を有していても,執行証書には既判力がないので,給付請求権の存在を既判力をもって確定する必要がありますから,訴えの利益が認められます(大判大正7年1月28日)。
本問と類似の過去問として平成19年1問目ウがありますので,時間がある方はご参照ください。
オ・正しいです。
将来給付の訴えは,原則として訴えの利益がありませんが,「あらかじめその請求をする必要がある場合」には認められます(民事訴訟法135条)。