司法書士の過去問
令和4年度
午後の部 問3
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問題
令和4年度 司法書士試験 午後の部 問3 (訂正依頼・報告はこちら)
訴えの利益に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 訴え提起前の協議において被告が既に履行期にある請求権の存在を認め、訴え提起後もこれを争わないことが明らかなときは、その請求権に係る給付の訴えには、訴えの利益が認められない。
イ 甲土地が原告の所有であることの確認を求める本訴に対し、甲土地が被告の所有であることを前提としてその所有権に基づき甲土地の返還を求める反訴が提起された場合において、所有権確認を求める本訴には、訴えの利益が認められない。
ウ 現に生存している遺言者が提起した遺言無効確認の訴えには、訴えの利益が認められない。
エ 債権者がその債権について執行証書を所持している場合において、同一の債権に係る給付の訴えには、訴えの利益が認められない。
オ 将来の給付を求める訴えには、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、訴えの利益が認められる。
ア 訴え提起前の協議において被告が既に履行期にある請求権の存在を認め、訴え提起後もこれを争わないことが明らかなときは、その請求権に係る給付の訴えには、訴えの利益が認められない。
イ 甲土地が原告の所有であることの確認を求める本訴に対し、甲土地が被告の所有であることを前提としてその所有権に基づき甲土地の返還を求める反訴が提起された場合において、所有権確認を求める本訴には、訴えの利益が認められない。
ウ 現に生存している遺言者が提起した遺言無効確認の訴えには、訴えの利益が認められない。
エ 債権者がその債権について執行証書を所持している場合において、同一の債権に係る給付の訴えには、訴えの利益が認められない。
オ 将来の給付を求める訴えには、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、訴えの利益が認められる。
- アウ
- アエ
- イエ
- イオ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
将来給付の訴えの要件と確認の訴えにおける確認の利益についての理解を問う問題です。
ア・・誤りです。
「被告が既に履行期にある請求権の存在を認め」の部分は,現在給付の訴えですので,訴えの利益が認められます。被告が任意に支払う意思を有していたかどうかは関係ありません。
したがって,「訴え提起後もこれを争わないことが明らかなとき」であっても,訴えの利益はあると認められます。
イ・・誤りです。
本問と同様に,原告の土地についての所有権の確認を求める本訴が係属中に,被告人が前述の土地の返還を求める反訴が提起された場合,当該反訴によって甲土地の所有権の所在については既判力が生じない(民事訴訟法114条1項参照)ので,甲土地の所有権の確認を求める本訴には,訴えの利益が認められます。
所有権の確認という体裁を本訴でとっていても,明渡請求権の基になっている所有権の確認であり,訴えの利益があるといえます。
次の判例と混同しないようにしてください。
債務不存在確認訴訟が係属中,債権者から債務の履行を求める反訴が提起された場合には,本訴である債務不存在確認訴訟は,後発的に確認の利益を欠くことになる(最判平成16年3月25日)。
本肢の事例と異なり,本訴が債務不存在確認訴訟です。
この場合,反訴の前提となった本訴は,確認の利益を欠くことになります。
反訴で債権債務の有無を争えばいいので,債務不存在確認訴訟の本訴の場合,債務の履行を求める反訴が提起されると確認の利益がなくなるという違いがあります。
ウ・・正しいです。
現に生存している遺言者が提起した遺言無効確認訴訟の訴えには,確認の利益が認められません(最判昭和31年10月4日)。そもそも,遺言者は,生存中,いつでも遺言を撤回できます(民法1022条)し,即時確定する利益も必要性もないからです。
エ・・誤りです。
債権者がすでに執行力のある公正証書(民事執行法22条5号,執行証書)を有していても,執行証書には既判力がないので,給付請求権の存在を既判力をもって確定する必要がありますから,訴えの利益が認められます(大判大正7年1月28日)。
本問と類似の過去問として平成19年1問目ウがありますので,時間がある方はご参照ください。
オ・正しいです。
将来給付の訴えは,原則として訴えの利益がありませんが,「あらかじめその請求をする必要がある場合」には認められます(民事訴訟法135条)。
<確認の利益について>
確認の利益は,①対象選択の適否、②方法選択の適否、③即時確定の利益という3つの要件が必要です。このように確認の利益には厳格な要件が求められています。
そして,過去の法律関係について確認の訴えをすることで,現在の法律関係を明確にすることができるのであれば可能であるのに対し,現在の法律関係を確認しても即時確定の利益がない(例:生存している遺言者が提起した遺言無効確認訴訟)のであれば,確認の利益が認められないということになります。
司法書士試験対策としては,過去問や模試で問われた事例について,個別に確認の利益の有無を覚えていけば足ります。
本問では,ウとオが正しいといえます。
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02
訴えの利益に関する問題です。
アは誤りです。そもそも履行期にある債務は履行されるべきであり、被告が債務の存在を認めて払うと言っていても、原告にとってはその言葉を信じずに裁判を経て強制執行に移りたいこともあります。
イは誤りです。既判力が生じる範囲(114条1項参照)に違いがあるので、本訴の訴えの利益は依然としてあります。
ウは正しいです。最高裁は、「仮りにある法律関係が将来成立するか否かについて現に法律上疑問があり将来争訟の起り得る可能性があるような場合においても、かかる争訟の発生は常に必ずしも確実ではなく、しかも争訟発生前予めこれに備えて未発生の法律関係に関して抽象的に法律問題を解決するというが如き意味で確認の訴を認容すべきいわれはなく、むしろ現実に争訟の発生するを待つて現在の法律関係の存否につき確認の訴を提起し得るものとすれば足ると解せられる」との考えを示した上で、「元来遺贈は死因行為であり遺言者の死亡によりはじめてその効果を発生するものであつて、その生前においては何等法律関係を発生せしめることはない。」として、遺言者の生前の遺言無効確認の訴は不適法であると判断しています(最判昭31.10.4)。
エは誤りです。執行証書とは、「金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの」(22条5号)をいい、それがあると、強制執行に移ることはできますが、既判力はないので、裁判を通して既判力を得る利益があります。
オは正しいです。将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができます(135条)。裏を返せば、原則として認められないということです。
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03
訴えの利益に関する問題です。
アは誤りです。
被告が既に履行期にある請求権の存在があるのなら現在給付の訴えにあたるので特段の事情がない限り訴えの利益が認められます。
イは誤りです。
反訴によって甲土地の所有権が原告のものであるという既判力は生じないので本訴には訴えの利益があります(114条1項参照)
ウは正しいです。
遺言者が生存中に受遺者に対して遺言無効確認の訴えをすることはできません。(最判昭31.10.4)まだ遺言の効力は確定しておらず、将来の法律関係となってしまうからです。また遺言は自由にその内容や効力を変えることができることも理由です。
エは誤りです。
執行証書は強制執行をすることはできますが、既判力はありませんので、既判力を得るために訴えの利益があります。
オは正しいです。
将来の給付の訴えは原則訴えの利益はありません。あらかじめ請求をする必要がある場合に認められます。(135条)
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