選択肢3. イウ
ア・・誤りです。
民事訴訟法284条において「控訴をする権利は,放棄することができる。」と規定していますが,控訴をする権利が発生しなければ控訴権の放棄ができないと解されています。
イ・・正しいです。
民事訴訟法285条本文において「控訴は,判決書・・・の送達を受けた日から提起しなければならない。」旨規定しています。
判決のあった日からではなく,判決の送達を受けた日から起算して2週間以内に控訴しないと判決が確定します。
そして,同法286条1項において「控訴の提起は,第一審裁判所に提出してしなければならない。」旨規定しています。
ウ・・正しいです。
最初に主位的請求と予備的請求の言葉の意味を理解する必要があります。
主位的請求とは,原告が一番認めて欲しい請求であり,予備的請求とは,主位的請求が認められなかった場合の請求内容(副位請求ともいいます)をいいます。
例えば,売主が買主に対し,売買代金請求をするのが主位的請求とすれば,売買が無効であった場合に,すでに引き渡した目的物の返還請求を予備的請求といいます。
主位的請求を棄却し予備的請求を認容した第一審判決に対し、被告のみが控訴し、原告が控訴も附帯控訴もしないときは、被告は,予備的請求が認められた点についても不服としていることから控訴審において予備的請求の範囲で審理する必要があります。
さらに,原告は控訴等をしていないのですから,第一審の判決に不満ではないということになりますから,原告の利益を考慮して,申立てのない範囲については,審理する必要はないことになります。本肢同様の事例として,最判昭和58年3月22日があります。
もし,控訴審において,予備的請求も棄却されると第一審の判決も取り消されるので,結局,原告は全面的に敗訴します。
エ・・誤りです。
民事訴訟法293条1項において「被控訴人は,控訴権が消滅した後であっても,口頭弁論の終結に至るまで,附帯控訴をすることができる。」旨規定しています。
控訴の場合は,控訴人に不服申立ての範囲を拡張を認めているのであれば,被控訴人にも審判範囲の拡張を認めるのが公平という観点から,附帯控訴ができることになっています。
以上のとおり,控訴と附帯控訴は別物ですので,控訴権を放棄しても,附帯控訴は事実審の口頭弁論終結前まで可能です(民事訴訟法293条1項)。
オ・・誤りです。
民事訴訟法304条において「第一審の取消し及び変更は,不服申立ての限度においてのみ,これをすることができる。」旨規定しています。
本肢では,原告は,請求棄却部分のうち20万円の部分についてのみ控訴していますから,不服申立てのあった20万円の範囲で,控訴審は審理をすることになります。