司法書士の過去問
令和4年度
午後の部 問5
このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。
問題
令和4年度 司法書士試験 午後の部 問5 (訂正依頼・報告はこちら)
控訴に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 控訴をする権利は、第一審裁判所が判決を言い渡す前にあらかじめ放棄することができる。
イ 第一審判決が判決書の原本に基づいて言い渡されたときは、控訴の提起は、判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に、控訴状を第一審裁判所に提出してしなければならない。
ウ 主位的請求を棄却し予備的請求を認容した第一審判決に対し、被告のみが控訴し、原告が控訴も附帯控訴もしないときは、予備的請求に対する第一審判決の当否のみが控訴審の審判の対象となる。
エ 被控訴人は、既に自らの控訴期間が経過しているとき又は既に控訴をする権利を放棄しているときは、控訴審の口頭弁論の終結前であっても、附帯控訴をすることができない。
オ 第一審裁判所が、100万円の貸金返還請求について、60万円の限度で一部認容する判決をした場合には、原告が請求棄却部分のうち20万円の部分についてのみ控訴したときであっても、控訴審裁判所は、原判決を取り消して100万円全額について請求を認容することができる。
ア 控訴をする権利は、第一審裁判所が判決を言い渡す前にあらかじめ放棄することができる。
イ 第一審判決が判決書の原本に基づいて言い渡されたときは、控訴の提起は、判決書の送達を受けた日から2週間の不変期間内に、控訴状を第一審裁判所に提出してしなければならない。
ウ 主位的請求を棄却し予備的請求を認容した第一審判決に対し、被告のみが控訴し、原告が控訴も附帯控訴もしないときは、予備的請求に対する第一審判決の当否のみが控訴審の審判の対象となる。
エ 被控訴人は、既に自らの控訴期間が経過しているとき又は既に控訴をする権利を放棄しているときは、控訴審の口頭弁論の終結前であっても、附帯控訴をすることができない。
オ 第一審裁判所が、100万円の貸金返還請求について、60万円の限度で一部認容する判決をした場合には、原告が請求棄却部分のうち20万円の部分についてのみ控訴したときであっても、控訴審裁判所は、原判決を取り消して100万円全額について請求を認容することができる。
- アエ
- アオ
- イウ
- イエ
- ウオ
正解!素晴らしいです
残念...
この過去問の解説 (3件)
01
控訴提起及び控訴審における審判の範囲に関する問題です。
ア・・誤りです。
民事訴訟法284条において「控訴をする権利は,放棄することができる。」と規定していますが,控訴をする権利が発生しなければ控訴権の放棄ができないと解されています。
イ・・正しいです。
民事訴訟法285条本文において「控訴は,判決書・・・の送達を受けた日から提起しなければならない。」旨規定しています。
判決のあった日からではなく,判決の送達を受けた日から起算して2週間以内に控訴しないと判決が確定します。
そして,同法286条1項において「控訴の提起は,第一審裁判所に提出してしなければならない。」旨規定しています。
ウ・・正しいです。
最初に主位的請求と予備的請求の言葉の意味を理解する必要があります。
主位的請求とは,原告が一番認めて欲しい請求であり,予備的請求とは,主位的請求が認められなかった場合の請求内容(副位請求ともいいます)をいいます。
例えば,売主が買主に対し,売買代金請求をするのが主位的請求とすれば,売買が無効であった場合に,すでに引き渡した目的物の返還請求を予備的請求といいます。
主位的請求を棄却し予備的請求を認容した第一審判決に対し、被告のみが控訴し、原告が控訴も附帯控訴もしないときは、被告は,予備的請求が認められた点についても不服としていることから控訴審において予備的請求の範囲で審理する必要があります。
さらに,原告は控訴等をしていないのですから,第一審の判決に不満ではないということになりますから,原告の利益を考慮して,申立てのない範囲については,審理する必要はないことになります。本肢同様の事例として,最判昭和58年3月22日があります。
もし,控訴審において,予備的請求も棄却されると第一審の判決も取り消されるので,結局,原告は全面的に敗訴します。
エ・・誤りです。
民事訴訟法293条1項において「被控訴人は,控訴権が消滅した後であっても,口頭弁論の終結に至るまで,附帯控訴をすることができる。」旨規定しています。
控訴の場合は,控訴人に不服申立ての範囲を拡張を認めているのであれば,被控訴人にも審判範囲の拡張を認めるのが公平という観点から,附帯控訴ができることになっています。
以上のとおり,控訴と附帯控訴は別物ですので,控訴権を放棄しても,附帯控訴は事実審の口頭弁論終結前まで可能です(民事訴訟法293条1項)。
オ・・誤りです。
民事訴訟法304条において「第一審の取消し及び変更は,不服申立ての限度においてのみ,これをすることができる。」旨規定しています。
本肢では,原告は,請求棄却部分のうち20万円の部分についてのみ控訴していますから,不服申立てのあった20万円の範囲で,控訴審は審理をすることになります。
以上から,イとウが正しいといえます。
参考になった数19
この解説の修正を提案する
02
控訴に関する問題です
アは誤りです。
控訴権の放棄は公訴権発生後(第一審判決言渡後)にできるようになります。(284条)
イは正しいです。
控訴期間は判決書又は調書の謄本を受けた日から2週間の不変期間内にしなくてはなりません(285条)
ウは正しいです。
主位的請求を棄却し予備的請求を認容した第一審判決に対し、第一審被告のみが控訴し、第一審原告が控訴も附帯控訴もしない場合には、主位的請求に対する第一審の判断の当否は、控訴審の審判の対象とはなりません。(最判昭58.3.22)
エは誤りです。
控訴権消滅後でも口頭弁論が終結するまでなら附帯控訴をすることはできます。(293条1項)
オは誤りです。
控訴審判決は当事者の不服申し立ての範囲内のみで行われます。(304条)その範囲を超えて第一審判決の変更や取り消しをすることはできません。
参考になった数6
この解説の修正を提案する
03
控訴に関する問題です。
アは誤りです。控訴をする権利は、放棄することができます(284条)が、これは終局判決言い渡し前にはできません。さすがに、一方当事者に不公平だからといわれています。
イは正しいです(285条、286条1項)。ちなみに、「不変期間」については、裁判所は、法定の期間又はその定めた期間を伸長し、又は短縮することができません(96条1項)。遠隔の地に住所又は居所を有する者のために付加期間を定めることができます(同2項)。
ウは正しいです。最高裁は、「主位的請求を棄却し予備的請求を認容した第一審判決に対し、第一審被告のみが控訴し、第一審原告が控訴も附帯控訴もしない場合には、主位的請求に対する第一審の判断の当否は控訴審の審判の対象となるものではないと解するのが相当である」と述べています(最判昭58.3.22)。
エは誤りです。被控訴人は、控訴権が消滅した後であっても、口頭弁論の終結に至るまで、附帯控訴をすることができます(293条1項)。
オは誤りです。第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみできます(304条)。
参考になった数5
この解説の修正を提案する
前の問題(問4)へ
令和4年度問題一覧
次の問題(問6)へ