選択肢1. アイ
ア・・誤りです。
民事保全法13条2項において「保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は,疎明しなければならない。」と規定しているので,疎明の対象は,「保全すべき権利又は権利関係」及び「保全の必要性」に限定されます。
管轄や当事者能力については,疎明の対象ではありません。
イ・・誤りです。
占有移転禁止の仮処分については,口頭弁論を経ないですることができ(民事保全法3条),口頭弁論をしないときは,当事者を尋問できます(民事保全法7条,民事訴訟法87条2項)。
民事保全法においては,基本的に,口頭弁論は任意的です。
例外的に,仮の地位を定める仮処分命令については,口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ,これを発することができない(民事保全法23条4項本文)としています。
ウ・・正しいです。
民事保全法22条1項において「仮差押命令においては,仮差押えの執行の停止を得るため,又は既にした仮差押えの取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めなければならない。」旨規定しています(必要的設定)。
なお,これに対し,仮処分解放金(民事保全法25条1項)については,債務者が供託すべき金銭の額については,「定めることができる。」としており,裁量的設定になっています。
つまり,仮差押命令においては,仮差押解放金を定めなければなりませんが,仮処分解放金については,仮処分解放金を定めるかどうかは自由ということです。
エ・・正しいです。
民事保全における迅速性・緊急性という観点から,債務者に送達する前でも保全執行をすることができます(民事保全法43条3項)。
オ・・正しいです。
民事保全法37条1項において「保全命令を発した裁判所は,債務者の申立てにより,債権者に対し,相当と認める一定の期間内に,本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出し,既に本案の訴えを提起しているときはその係属を証する書面を提出すべきことを命じなければならない。」旨規定しています。
同条2項において,1項の「相当と認める一定の期間内」を「2週間以上」としています。
一見難しそうに見える条文ですが,平成15年6問目,平成23年6問目でも出題されていますので,条文を確認しましょう。
これらの条文の趣旨は,債務者の申立てにより裁判所が保全命令を発したのだから,公平の観点から債権者にも起訴命令の負担を課すことによって,起訴がなされた場合には,被保全権利の存否を確定するということにあります。
もし,債権者が起訴命令により書面を一定の期間内に提出しなかった場合には,裁判所は,債務者の申立てにより,保全命令を取り消さなければなりません(民事保全法37条3項)。