司法書士の過去問
令和4年度
午後の部 問17

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問題

令和4年度 司法書士試験 午後の部 問17 (訂正依頼・報告はこちら)

甲不動産の所有権の移転の登記(以下「本件登記」という。)の申請に際して申請人が登記義務者の登記識別情報を提供することができない場合における次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。なお、申請人はいずれも自然人とする。

ア  登記官が本件登記の登記義務者に対して事前通知をする場合には、法令で定める期間内に当該登記義務者から本件登記の申請内容が真実である旨の申出がされた日が、本件登記の申請の受付日として記録される。
イ  委任による代理人によって本件登記の申請をする場合において、その権限を証する情報を記載した書面に申請人が本件登記の登記義務者であることを確認するために必要な公証人による認証がされ、かつ、登記官がその内容を相当と認めたときは、本件登記の申請情報を記載した書面に同内容の公証人による認証がされていなかったとしても、登記官は、当該登記義務者に対して事前通知をすることを要しない。
ウ  本件登記の申請代理人である司法書士から本人確認情報の提供がされたが、登記官が当該情報の内容を相当と認めないときは、登記官は、本件登記の登記義務者に対して事前通知をすることなく、本件登記の申請を却下しなければならない。
エ  甲不動産の所有権の登記名義人の住所の変更の登記と当該登記名義人を登記義務者とする本件登記の申請を同時にした場合において、その住所の変更の登記に係る住所の変更があった日から3か月を経過しているときは、登記官は、事前通知のほかに、本件登記の登記義務者の登記記録上の前の住所にあてて、本件登記の申請があった旨の通知をすることを要しない。
オ  本件登記の申請が書面を提出する方法により行われた場合において、登記官が本件登記の登記義務者に対して事前通知をしたときは、当該登記義務者は、電子情報処理組織を使用する方法によって、本件登記の申請内容が真実である旨の申出をすることはできない。
  • アイ
  • アウ
  • イオ
  • ウエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

登記識別情報を提供することができない場合の事前通知,前の住所地への通知の手続(いわゆる「前住所通知」)についての知識を問う問題です。

選択肢3. イオ

ア・・誤りです。

「申し出がされた日」ではなく,申請の受付がされた日が登記の申請の受付日として記録されることになります。(不動産登記法19条1項)。

官公署にとっては,受付をしなければ記録が残らないと考えれば,わかりやすいと思います。

イ・・正しいです。

申請情報(委任による代理人によって申請する場合は,代理権限を証する情報)を記録(記載)した電磁的記録(書面)に,公証人から,申請人が登記義務者であることを確認するために必要な認証がされ,かつ,登記官がその内容を相当と認めるときは,事前通知を要しません(不動産登記法23条4項2号)。

法務大臣から任命を受けた公証人は,私人が公証人の面前で行った署名等に認証を付す権限があります(公証人法58条,62条の6)。

公証人が代理権限情報である委任状等に認証をしており,登記官がその内容を相当と認めているのであれば,申請情報を記載した書面に公証人の認証がなくても申請人本人が申請していることが公に証明されるからです。

ウ・・誤りです。

権利に関する登記の申請が資格者代理人(登記の申請の代理を業務とすることができる代理人)によってされた場合,当該代理人により申請人が登記義務者であることを確認するために必要な情報(本人確認情報)が提供され,かつ,登記官がその内容を相当と認めるときに事前通知を省略できます(不動産登記法23条4項1号)。

このような場合には,原則どおり,登記義務者本人に対し事前通知を行うことになるだけであり,登記の申請が却下になるわけではありません(不動産登記法23条1項,25条参照)。

資格者代理人というのは,あくまでも司法書士のような業務遂行をする上での代理人に過ぎず,最終的には登記義務者本人に確認すれば足りるので,いきなり却下をする必要がないからです。

エ・・誤りです。

この肢は,文章が長く一見難しそうに見えますが,その住所の変更の登記に係る住所の変更があった日から3か月を経過しているとき」が誤りです。

正しくは,「最後の変更の登記の申請に係る日から3月を経過しているとき」(不動産登記規則71条2項2号)となります。

この肢についての考え方は,次のとおりです。

原則として,不動産登記法23条2項において「登記官は,前項の登記の申請が所有権に関する者である場合において,同項の登記義務者の住所について変更の登記がされているときは,法務省令で定める場合を除き,同項の申請に基づいて登記をする前に,・・・当該登記義務者の登記記録上の前の住所にあてて,当該申請があった旨を通知しなければならない。」としています。

→次に,不動産登記規則71条2項2号では,不動産登記法23条2項の「法務省令で定める場合」,つまり例外として事前通知を不要とする場合について「登記義務者の住所について最後の変更の登記の申請に係る受付の日から3月を経過している場合」をあげています。

最後の住所変更があった日については,市町村役場でないと知り得ず,登記所では把握ができないので,3か月の起算点としては,最後の申請日とするほうが登記所にとって便宜だからと考えればいいと思います。

類似の問題として,平成23年13問目がありますので,時間がある方は確認してみるといいと思います。

オ・・正しいです。

事前に通知に対する申出ですが,電子申請と書面申請の二種類があります。

それぞれ,登記申請を最初に電子申請で行ったか,それとも書面申請で行ったかによって事前通知に対する申出の方法も決まります。

つまり,登記申請を電子申請で行った場合は,事前通知に対する申出も電子申請によって行います(不動産登記規則70条5項1号,6項,不動産登記令14条)

これに対し,登記申請を書面申請で行った場合は,事前通知に対する申出も書面申請によって行います(不動産登記規則70条5項2号)

登記申請が電子申請なのに,申出を書面で申請したり,登記申請を書面申請しているのに,申出を電子申請するというのはできません。必ずオンラインか必ず書面と覚えておくといいです

まとめ

以上から,イとオが正しいといえます。

参考になった数18

02

不動産登記法(事前通知)に関する問題です。問題文がやや長文なので、丁寧な読み込みが必要な問題でした。(エ)がひっかけ問題となっていますが、これをうまく見抜ければ、正解できます。

選択肢3. イオ

(ア)現在の不動産登記法における事前通知制度では、事前通知がなされた場合は、申請時に受け付けがなされることになっています。従って、本肢は誤りです。

(イ)事前通知が不要になる公証人の認証は、本人申請の場合は申請情報に、代理申請の場合は代理権限証明情報に対して実施されます。本肢は、代理申請に関する申請であるため、代理権限証明情報に対して公証人の認証がされていれば、申請情報に対して公証人の認証がなくても、事前通知は省略されます。従って、本肢は正しいです。

(ウ)申請代理人である司法書士から、本人確認情報の提供があった場合に、登記官がその内容を相当と認めた場合には、事前通知が省略されます。相当と認めない場合には、事前通知がされます。登記官が、本人確認情報の内容を相当と認めない場合に、申請が却下されるわけではありません。従って、本肢は誤りです。

(エ)前住所通知が不要とされるのは、登記識別情報を提供しない登記申請において、その申請に係る受付日が、登記義務者についてされた最後の住所変更登記の申請に係る受付日から3か月を経過している場合です。住所変更があった日から3か月を経過している場合ではないので、本肢は誤りです。

(オ)書面申請の場合、事前通知に対する、本件登記申請が真実である旨の申出は、書面で行う必要があります。従って、本肢は正しいです。なお、電子申請の場合には、事前通知は書面で行われますが、それに対する真実の申出は、電子情報処理組織を使って行います。

まとめ

(エ)の問題は、前住所通知を省略できる、住所変更登記から3か月経過の期間の起算点が、最後の住所変更日ではなく最後の住所変更登記の申請受け付日であることを正確に理解していないと、正誤判定ができません。少し紛らわしく細かい論点なので、間違いやすいひっかけ問題です。

参考になった数5

03

事前通知、前住所通知に関する問題です。

選択肢3. イオ

アは誤りです。

事前通知をして登記義務者から本件登記の申請内容が真実である旨の申出がされた場合その登記の登記申請日が受付日になります。(19条1項)

イは正しいです。

代理権限証明情報に公証人の認証があった場合でかつ登記官がその内容を相当であると認めた場合は事前通知は要しません。(23条4項2号)

公証人は私署証書についての認証ができるため本人確認ができます。

ウは誤りです。

この場合は、原則に従って事前通知がされます。すぐに却下されるわけではありません。

エは誤りです。

前住所通知は住所についてされた最後の変更(更正)登記から3か月を経過してる場合は要しません。(規71条2項2号)住所の変更があった日からではありません。

オは正しいです。

書面申請で行われた場合に事前通知が登記義務者に届いた場合、本件登記の申請内容が真実である旨を申出する場合は書面で行わなければなりません。(規70条5項2号)

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