司法書士の過去問
令和4年度
午後の部 問20
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問題
令和4年度 司法書士試験 午後の部 問20 (訂正依頼・報告はこちら)
不動産登記の申請に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 司法書士Aが、法人Bの唯一の代表者Cから法人Bを申請人とする登記申請の委任を受けた後、Cが法人Bの代表者を辞任し、新たに代表者Dが就任した場合には、A は、Dから改めて当該登記申請の委任を受けなければ、法人Bを代理して当該登記申請をすることができない。
イ Aに相続人のあることが明らかでないため相続財産管理人が選任された場合には、当該相続財産管理人は、Aが所有権の登記名義人である不動産について「A」から「亡A相続財産」への所有権の移転の登記を申請することができる。
ウ 成年後見人Aが、成年被後見人Bが所有権の登記名義人であり、Bの居住の用に供しない建物をCとの間で売買した場合において、当該売買を原因とする所有権の移転の登記を申請するときは、当該売買につき家庭裁判所の許可を得たことを証する情報を提供することを要しない。
エ 不動産の遺贈がされた場合において、遺言執行者があるときは、遺贈を受けた者は、遺言執行者と共同して、遺贈を原因とする当該不動産の所有権の移転の登記を申請することができる。
オ 令和4年1月1日に遺産の分割の方法の指定としてAの遺産に属する甲不動産を共同相続人の1人であるBに承継させる旨の遺言がされ、その後にAが死亡した場合には、当該遺言に係る遺言執行者は、単独で、甲不動産について、AからBへの相続を原因とする所有権の移転の登記を申請することができる。
ア 司法書士Aが、法人Bの唯一の代表者Cから法人Bを申請人とする登記申請の委任を受けた後、Cが法人Bの代表者を辞任し、新たに代表者Dが就任した場合には、A は、Dから改めて当該登記申請の委任を受けなければ、法人Bを代理して当該登記申請をすることができない。
イ Aに相続人のあることが明らかでないため相続財産管理人が選任された場合には、当該相続財産管理人は、Aが所有権の登記名義人である不動産について「A」から「亡A相続財産」への所有権の移転の登記を申請することができる。
ウ 成年後見人Aが、成年被後見人Bが所有権の登記名義人であり、Bの居住の用に供しない建物をCとの間で売買した場合において、当該売買を原因とする所有権の移転の登記を申請するときは、当該売買につき家庭裁判所の許可を得たことを証する情報を提供することを要しない。
エ 不動産の遺贈がされた場合において、遺言執行者があるときは、遺贈を受けた者は、遺言執行者と共同して、遺贈を原因とする当該不動産の所有権の移転の登記を申請することができる。
オ 令和4年1月1日に遺産の分割の方法の指定としてAの遺産に属する甲不動産を共同相続人の1人であるBに承継させる旨の遺言がされ、その後にAが死亡した場合には、当該遺言に係る遺言執行者は、単独で、甲不動産について、AからBへの相続を原因とする所有権の移転の登記を申請することができる。
- アイ
- アウ
- イエ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
委任による代理人又は法定代理人による登記申請手続についての理解を問う問題です。
選択肢ウについては,迷った方もいると思いますが,「成年被後見人の居住の用に供しない建物」であれば家庭裁判所の許可は不要(民法859条の3)ですので,居住の用に供する建物か供しない建物かを区別して回答するようにしましょう。
ア・・誤りです。
民法(111条2項)と異なり,登記申請をする者の委任による代理権の権限は,法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更によっては消滅しません(不動産登記法17条4号)。
この法定代理人には法人の代表者も含まれます(平成5年7月30日民三5320号通達)。
したがって,法人の代表者が辞任しても,前任の代表者の委任状を添付して登記申請ができますので,現在の代表者から改めて委任を受ける必要はありません。
イ・・誤りです。
「所有権移転登記」ではなく「氏名変更の登記」です。
相続人があることが明らかでないために相続財産は法人となります(民法951条)。
この場合,家庭裁判所によって選任された相続財産管理人(民法952条1項)が,所有権の登記名義人を相続財産法人名義とする所有権登記名義人氏名変更の登記(不動産登記法64条1項)を申請することになります(昭和10年1月14日民事甲39号通牒)。
ウ・・正しいです。
冒頭に記載したとおり,成年被後見人の居住の用に供する建物等の場合は,売却等の処分行為について家庭裁判所の許可を得ないといけません(民法859条の3)
しかし,本問は,「居住の用に供しない建物」ですので,家庭裁判所の許可は不要です。
エ・・正しいです。
遺言執行者は,遺言の内容を実現するため,相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します(民法1012条1項,1014条1項参照)。
遺言執行者がある場合,遺贈の履行は,遺言執行者のみが行えます(民法1012条2項)。
そのため,遺贈の目的が不動産である場合,遺言執行者が選任されているときは,遺言執行者は,受遺者と共同して登記を申請すべき義務を負います(不動産登記法60条)。
このとき,相続人は,登記の申請に関与できません。
オ・・正しいです。
遺言者が,遺産分割方法の指定として特定の不動産を共同相続人の一人又は数人に相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)があったときは,遺言執行者は,当該共同相続人が対抗要件としての登記(民法899条の2第1項)を備えるために必要な行為をすることができます(民法1014条2項)。
この場合,遺言執行者による相続を登記原因とする所有権移転の登記の申請が認められます(令和1年6月27日民二68号通達)。
したがって,本肢でも,AからBに対する所有権移転登記を単独で行なうことができます。
以上から,誤りは,アとイになります。
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02
登記の申請に関する問題です。
アは誤りです。
法人の代表者が変わっても委任による代理権は消滅しないのであたらめて委任を受ける必要はありません。
イは誤りです。
所有権移転登記ではなく氏名変更登記をすることになります。
ウは正しいです。
裁判所の許可を要するのは成年後見人が居住している建物をを売買する時なので、居住の用に供しない建物の場合は裁判所の許可は不要です。
エは正しいです。
遺贈の際に遺言執行者がいるときは遺言執行者と共同で遺贈の所有権移転をすることができます。
オは正しいです。
遺言書にてBに相続させる旨を書いているのでこの場合は遺言執行者が単独で相続登記をすることができます。
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03
不動産登記法(不動産登記の申請)に関する問題です。司法書士が申請人を代理して登記申請ができるケースと、できないケースについて、正確な理解があるかどうかを問う問題です。
(ア)法人の代表者から、その法人の登記申請の委任状を受けた後、代表者が交代した場合でも、新しい代表者からあらためて委任状を受けなくても、当該法人の登記申請が可能です。従って、本肢は誤りです。
(イ)Aに相続人のあることが明らかでないために、相続財産管理人が選任された場合には、「A」から「亡A相続財産」に氏名変更登記を行います。本肢は、「所有権移転登記を行う」としているため、誤りです。
(ウ)成年後見人が、成年被後見人が所有権登記名義人である居住用不動産を売却する場合には、家庭裁判所の許可が必要ですが、居住に供しない不動産を売却する場合には、家庭裁判所の許可は不要です。従って、本肢は正しいです。
(エ)不動産が遺贈された場合において、遺言執行者がある場合には、遺贈を受けたものは遺言執行者と共同して、遺贈を原因とする当該不動産の所有権移転登記を申請することができます。従って、本肢は正しいです。
(オ)民法1014条2項は「遺産分割の方法の指定として、遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言があったときは、遺言執行者は、法定相続分を超える部分について対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる」と規定しています。このため、遺言執行者は、被相続人が遺言で別段の定めをした場合を除き、単独で法定代理人として、相続による権利の移転登記を申請できます。従って、本肢は正しいです。
(イ)について、相続財産管理人がされた場合の被相続人から相続財産法人への名義変更は、所有権移転ではなく、氏名変更登記で行います。「氏名変更」を「所有権移転」として問題を作っているのは、明らかなひっかけ問題です。ただし、ひっかけ問題は、からくりが分かっていれば、逆に得点源になります。
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