選択肢3. イウ
ア・・誤りです。
Aの相続人は,BとCの2名います(Aの相続①)ので,後にBが死亡して相続人がCのみ(Bの相続②)になっておりますが,Aが死亡した際は,相続人が複数いることになります。
問題は,Aの死亡時に相続人が複数いても,登記申請時に相続人が一人であれば,結果として中間省略登記が認められるかということです。
相続人が一人(単数)の場合は,中間省略登記が認められます。
例えば,Aの相続人がBのみで,Aが死亡してBがAを相続したが,その後,Bが死亡し,CがBを相続した場合には,登記原因日付欄に「年月日B相続(Aの死亡の日を記載する)
年月日相続(Bの死亡の日を記載する)」
として登記申請を行なうことができます。
しかし,本肢のように,相続人が複数いる場合は,中間省略登記を行なうことができません。
それでは,どのような申請をすればよいか説明します。
本問では,最初に,①Aの死亡した日付で,AからB及びCに対する相続による所有権移転登記を申請します。
そして,次に,②Bが死亡した日付でBからCに対する相続による所有権移転登記をを行ないます。
したがって,本肢では,相続人が複数いることから,中間省略登記を行なうことができないので,Aが死亡した日付を登記原因日付として,Aから直接Cに対する所有権移転登記を申請することはできません。
イ・・正しいです。
表題部所有者が死亡し,包括受遺者が表題部所有者から譲り受けた持分について,自己名義で所有権保存登記の申請を行なうことができるかが問題となります。
結論としては,できません。
なぜなら,包括受遺者は,「相続人」に含まれないからです(登記研究223号)。
理由は,2点あります。
1つ目ですが,包括受遺者は,相続人と同一の権利を有しますが(民法990条),その権利義務の取得は相続ではなく,包括遺贈という意思表示によってされることにあります。
2つ目ですが,相続人の場合は,戸籍謄本等の公文書で,自己が受遺者であることを証明できますが,包括受遺者の場合は,公文書により自己が受遺者であることを証明できないからです。
包括受遺者が保存登記をするためには,前提として,被相続人名義への所有権保存登記を経由する必要があります。
本肢では,唯一の相続人がBということですから,「所有者(被相続人A) B」とする保存登記を行なって,BからCに対する所有権移転登記を行なう必要があります。
ウ・・正しいです。
共同相続登記が未了の間に,共同相続人間における相続分の譲渡があった場合に,被相続人から譲渡後の持分で相続登記ができるかという問題です。
これについては,認められます(昭和59年10月15日民三5196号回答)。
したがって,Aの死亡した日付を登記原因日付として,Aから直接Dに対する相続による所有権移転登記を行なうことができます。
エ・・誤りです。
遺産分割協議前に共同相続人の一人が死亡した場合,他の共同相続人で遺産分割協議を行なって登記申請できるかという問題ですが,認められます(登記研究374号)。
本肢の場合,B,C,,Eの遺産分割協議に基づいて,Bは,Aの死亡した日を登記原因日付として,AからBに対する相続による所有権移転登記を申請できます。
オ・・誤りです。
共同相続人中の一部の者が自己の相続分のみについて,又は共同相続人全員が自己の相続分のみについて各別に相続登記を申請することはできません(昭和30年10月15日民事甲2216号回答)。
相続は包括承継ですから,一部移転登記などができません。
相続登記を行なう場合は,共同相続人である権利者ごとの共有持分を申請情報の内容とする必要があるからです(不動産登記法59条4号,不動産登記令3条9号)。