司法書士の過去問
令和4年度
午後の部 問24
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問題
令和4年度 司法書士試験 午後の部 問24 (訂正依頼・報告はこちら)
登記された根抵当権の元本確定前に根抵当権者又は債務者に相続が開始した場合における根抵当権に関する登記についての次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。なお、本問において、不動産登記法第92条に規定する民法第398条の8第1項の合意の登記を「指定根抵当権者の合意の登記」といい、民法第398条の8第2項の合意の登記を「指定債務者の合意の登記」という。
ア 根抵当権の債務者Aが死亡し、指定債務者の合意の登記がされないまま、その相続の開始後6か月以内にAの唯一の相続人であるBが更に死亡した場合には、Bの相続の開始後6か月を経過するまでは、指定債務者の合意の登記をすることができる。
イ 根抵当権の登記名義人がA及びBである場合において、Aのみが死亡したときは、その相続開始後6か月以内であっても指定根抵当権者の合意の登記を申請することができない。
ウ 根抵当権の債務者が死亡したことによる相続を原因とする根抵当権の債務者の変更の登記と指定債務者の合意の登記は、一の申請情報により申請することができる。
エ 根抵当権の登記名義人Aが死亡し、その相続人がB及びCである場合において、B とCとの間でBが当該根抵当権を単独で承継する旨の遺産分割がされた場合には、B は、相続を原因とするAからBへの根抵当権の移転の登記を申請することができる。
オ 根抵当権の登記名義人Aが死亡し、その唯一の相続人Bへの相続を原因とする根抵当権の移転の登記がされた場合において、Bと根抵当権設定者Cとの間で指定根抵当権者の合意がされたときは、その後にCが破産手続開始の決定を受けたため当該根抵当権の担保すべき元本が確定したとしても、当該相続の開始後6か月以内に指定根抵当権者の合意の登記を申請することができる。
(参考)不動産登記法
第92条 民法第398条の8第1項又は第2項の合意の登記は、当該相続による根抵当権の移転又は債務者の変更の登記をした後でなければ、することができない。
(参考)民法
第398条の8 元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。
2 元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。
3・4 (略)
ア 根抵当権の債務者Aが死亡し、指定債務者の合意の登記がされないまま、その相続の開始後6か月以内にAの唯一の相続人であるBが更に死亡した場合には、Bの相続の開始後6か月を経過するまでは、指定債務者の合意の登記をすることができる。
イ 根抵当権の登記名義人がA及びBである場合において、Aのみが死亡したときは、その相続開始後6か月以内であっても指定根抵当権者の合意の登記を申請することができない。
ウ 根抵当権の債務者が死亡したことによる相続を原因とする根抵当権の債務者の変更の登記と指定債務者の合意の登記は、一の申請情報により申請することができる。
エ 根抵当権の登記名義人Aが死亡し、その相続人がB及びCである場合において、B とCとの間でBが当該根抵当権を単独で承継する旨の遺産分割がされた場合には、B は、相続を原因とするAからBへの根抵当権の移転の登記を申請することができる。
オ 根抵当権の登記名義人Aが死亡し、その唯一の相続人Bへの相続を原因とする根抵当権の移転の登記がされた場合において、Bと根抵当権設定者Cとの間で指定根抵当権者の合意がされたときは、その後にCが破産手続開始の決定を受けたため当該根抵当権の担保すべき元本が確定したとしても、当該相続の開始後6か月以内に指定根抵当権者の合意の登記を申請することができる。
(参考)不動産登記法
第92条 民法第398条の8第1項又は第2項の合意の登記は、当該相続による根抵当権の移転又は債務者の変更の登記をした後でなければ、することができない。
(参考)民法
第398条の8 元本の確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に取得する債権を担保する。
2 元本の確定前にその債務者について相続が開始したときは、根抵当権は、相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続の開始後に負担する債務を担保する。
3・4 (略)
- アウ
- アオ
- イウ
- イエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
元本確定前の根抵当権の根抵当権者又は債務者に相続が発生した場合に関する知識について問う問題です。
ア・・誤りです。
根抵当権の債務者について,いわゆる数次相続が生じた場合,当該登記申請の起算点は,第1の相続を基準とします。
したがって,第1の相続開始後,6か月以内に指定債務者の合意がなされないときは,その相続人について第2の相続が開始しても,第1の相続開始時に根抵当権の元本が確定したものとみなされます(民法398条の8第2項,第4項)。
早期に元本を確定させて,設定者の保護を図るという趣旨にあると思われます。
平成13年第17問目ウでも聞かれていますので,確認しておくとよいでしょう。
イ・・誤りです。
根抵当権者のうち一人が死亡した場合,その者について指定根抵当権者の合意の登記を申請できます。
指定根抵当権者の合意,及びその旨の登記については,相続開始後6か月以内に行なう必要がある旨民法398条の8第4項前段において規定していることから,債務者のみならず根抵当権者のうち一人が死亡した場合にも指定根抵当権者の合意の登記を申請できると考えられます。
ウ・・誤りです。
根抵当権の債務者が死亡して相続が開始し,指定債務者の合意がされた場合には,相続による根抵当権の債務者変更登記及び指定債務者の合意の登記を申請する必要があります(民法398条の8第4項参照,不動産登記法92条)。
債務者の相続における変更登記においては,
「目的 何番根抵当権変更,原因 年月日相続,
変更後の事項 債務者 何某(被相続人 何某)」となります。
指定債務者の合意の登記においては,
「目的 何番根抵当権変更 原因 年月日合意
指定債務者 何某 」となります。
以上のとおり,登記原因等が異なりますので,一の申請情報で申請できません。
エ・・正しいです。
相続放棄をした者(昭和46年10月4日民事甲3230号通達)は,申請人となりません。
さらに,特別受益者であることを証する情報,遺産分割協議を証する情報等により既発生の債権を相続しない旨及び指定根抵当権者の指定を受ける意思のない旨が明らかであるもの(昭和46年12月27日民事三960号)も申請人となりません。相続放棄及びそれに準ずる者は,最初から相続人とならないからです。
本肢の場合,Cは,既発生の債権を相続する意思のない旨が明らかであるといえるので,Bは,Aからの相続を登記原因とする根抵当権移転の登記を申請できます。
オ・・正しいです。
元本確定前の根抵当権における根抵当権者について相続が開始し,指定根抵当権者の合意がされたときは,相続開始後6か月以内であれば,合意の登記ができます(民法398条の8第1項,第4項)。
そして,合意がされた後,合意の登記をする前に他の事由で元本が確定しても,相続開始後6か月以内であれば,合意の登記を申請できます。
なぜなら,根抵当権者に相続が開始してから元本確定までの間,指定根抵当権者が発生させた債権が被担保債権となることを公示する実益があるからです。
以上から,エとオが正しいといえます。
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02
元本確定前の根抵当権の相続に関する登記についての問題です。
アは誤りです。
債務者に相続が開始し6か月以内に合意の登記をしないうちにさらに相続が発生した場合は第一の相続開始後6か月以内に合意の登記をしなければ元本が確定します。
イは誤りです。
根抵当権の共有者の1人に相続が発生した場合その相続人を合意により指定根抵当権者と定めることができます。
また、その場合他の共有者の同意は要しません。
ウは誤りです。
根抵当権の債務者が死亡したことによる債務者の変更登記と指定債務者の合意登記は一の申請情報により申請することはできません。
登記原因が違うからです。
エは正しいです。
BとCの遺産分割協議書のなかでCが「被相続人の既発生債権を相続しない旨」を明らかにされている場合はCは申請人になりません。
この肢はこのことについての記載がされてないのでどちらともいえない肢ではあるのですが、他の肢で正解を導けるので、この肢を軸足にせずに解答できれば問題ありません。
オは正しいです。
相続開始して合意をした後に破産開始手続開始決定がされているので、相続開始後6か月以内であれば合意の登記は申請可能です。
相続開始から元本確定までの間の指定根抵当権者が誰かを公示する意味があるからです。
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03
不動産登記法(根抵当権に関する登記)の問題です。この問題で問われている根抵当権の元本確定に関する論点は、司法書士試験で最も重要な分野の一つですので、徹底的に習得する必要があります。
(ア)根抵当権者の指定債務者の合意の登記については、根抵当権の債務者につき相続が開始したのち、その相続人につきさらに相続が開始した場合でも、第一の相続が開始した時から6カ月以内に登記をする必要があります。従って、本肢は誤りです。
(イ)元本確定前に、AB共有根抵当権のAについて相続が開始した場合には、その相続人により、指定根抵当権者の合意をすることは差し支えないとされています。従って、本肢は誤りです。
(ウ)相続による債務者の変更登記と、指定債務者の合意の登記を一の申請情報で申請することはできません。登記原因日付が異なっているからです。従って、本肢は誤りです。
(エ)相続人BとCの間で、被相続人Aが登記名義人である根抵当権について、Bが単独承継する遺産分割協議が成立した場合には、相続を登記原因とするAからBへの根抵当権の移転登記ができます。従って、本肢は正しいです。
(オ)相続によるAからBへの根抵当権の移転登記がされた後に、Bと根抵当権設定者Cとの間で指定根抵当権者の合意がなされた、その後にCが破産して元本が確定した場合でも、Aが死亡してから元本確定までに発生した債権を担保する実益があるため、指定根抵当権者の合意の登記をすることができます。従って、本肢は正しいです。
(オ)の論点は、抵当権設定者が破産して元本が確定した後に、指定根抵当権者の合意の登記をすることは、常識的には不可能に思われます。しかし、不動産登記法上ではそれが可能です。常識的には不可能そうに見えることが、法律上は可能な論点が、あるいはその反対が、よく問題の材料にされます。
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