司法書士の過去問
令和4年度
午後の部 問25
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問題
令和4年度 司法書士試験 午後の部 問25 (訂正依頼・報告はこちら)
抵当権又は根抵当権の仮登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 土地の所有権を目的とする不動産登記法第105条第1号による根抵当権の設定の仮登記がされている場合において、当該根抵当権の担保すべき元本が根抵当権者の請求により確定したときは、元本確定の仮登記を申請することができる。
イ 根抵当権の設定の登記のある土地についてする当該根抵当権の極度額増額の予約を原因とする不動産登記法第105条第2号による根抵当権の変更請求権保全の仮登記は、当該仮登記につき登記上の利害関係を有するAの承諾を証するAが作成した情報又はAに対抗することができる裁判があったことを証する情報の提供がない場合であっても、付記登記によってすることができる。
ウ 土地の所有権を目的として、乙区1番でAを登記名義人とする抵当権の設定の登記がされ、乙区2番で不動産登記法第105条第1号によるBを登記名義人とする根抵当権の設定の仮登記がされている場合には、乙区1番の登記を順位2番とし、乙区2番の仮登記を順位1番とする順位の変更の登記を申請することはできない。
エ Aが所有権の登記名義人である土地について、農地法所定の許可があったことを停止条件とする不動産登記法第105条第2号によるAからBへの条件付所有権移転仮登記がされている場合には、当該仮登記された条件付所有権を目的として、当該許可があったことを停止条件とする同号によるCを根抵当権者とする条件付根抵当権設定の仮登記を申請することができる。
オ 同一の登記所の管轄区域内にあり、いずれもAが所有権の登記名義人である甲土地と乙土地について、それぞれBを根抵当権者とし、根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者及び極度額を同一とする根抵当権の設定の仮登記を申請する場合には、仮登記の登記原因及びその日付が同一であったとしても、一の申請情報によって申請することはできない。
(参考)不動産登記法
第105条 仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。
一 第3条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第25条第9号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち法務省令で定めるものを提供することができないとき。
二 第3条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。
ア 土地の所有権を目的とする不動産登記法第105条第1号による根抵当権の設定の仮登記がされている場合において、当該根抵当権の担保すべき元本が根抵当権者の請求により確定したときは、元本確定の仮登記を申請することができる。
イ 根抵当権の設定の登記のある土地についてする当該根抵当権の極度額増額の予約を原因とする不動産登記法第105条第2号による根抵当権の変更請求権保全の仮登記は、当該仮登記につき登記上の利害関係を有するAの承諾を証するAが作成した情報又はAに対抗することができる裁判があったことを証する情報の提供がない場合であっても、付記登記によってすることができる。
ウ 土地の所有権を目的として、乙区1番でAを登記名義人とする抵当権の設定の登記がされ、乙区2番で不動産登記法第105条第1号によるBを登記名義人とする根抵当権の設定の仮登記がされている場合には、乙区1番の登記を順位2番とし、乙区2番の仮登記を順位1番とする順位の変更の登記を申請することはできない。
エ Aが所有権の登記名義人である土地について、農地法所定の許可があったことを停止条件とする不動産登記法第105条第2号によるAからBへの条件付所有権移転仮登記がされている場合には、当該仮登記された条件付所有権を目的として、当該許可があったことを停止条件とする同号によるCを根抵当権者とする条件付根抵当権設定の仮登記を申請することができる。
オ 同一の登記所の管轄区域内にあり、いずれもAが所有権の登記名義人である甲土地と乙土地について、それぞれBを根抵当権者とし、根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者及び極度額を同一とする根抵当権の設定の仮登記を申請する場合には、仮登記の登記原因及びその日付が同一であったとしても、一の申請情報によって申請することはできない。
(参考)不動産登記法
第105条 仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。
一 第3条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第25条第9号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち法務省令で定めるものを提供することができないとき。
二 第3条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。
- アウ
- アオ
- イウ
- イエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
抵当権,根抵当権の仮登記の可否等について問う問題です。
ア・・誤りです。
根抵当権の元本確定の仮登記はできません(登記研究435号)。
なぜなら,順位を保全する実益がないからです。
イ・・誤りです。
根抵当権の極度額の変更の仮登記は1号仮登記,2号仮登記(不動産登記法105条1号,2号の仮登記のことです。)を問わず申請可能です(昭和41年3月29日民事三158号回答)。
ただし,極度額の変更については,必ず付記登記によって行なう必要があり(不動産登記規則3条2号,不動産登記法66条,昭和46年10月4日民事甲3230号通達),その仮登記も付記登記によって行なう必要があります。
したがって,登記上の利害関係を有する第三者の承諾を証する情報の提供なしに,極度額増額予約の登記申請を行なうことはできません。
ウ・・誤りです。
抵当権又は根抵当権のうち仮登記を含む場合でも,順位変更をすることができます。
順位変更登記は,抵当権,根抵当権のみならず,不動産質権(民法361条),先取特権(民法341条)についても可能であり,それらの物権が仮登記でも差し支えないという取扱いをされています。
エ・・正しいです。
不動産登記法に規定はありませんが,権利変動そのものが始期付き又は停止条件付きである場合でも2号仮登記は認められています。
農地法の許可があった時に所有権が移転する旨の売買契約が締結された場合には,停止条件付所有権移転の仮登記を申請できます(昭和37年1月6日民事甲3289号回答参照)。
したがって,当該許可があったことを停止条件とする同号によるCを根抵当権者とする条件付根抵当権設定の仮登記を申請することができます。
オ・・正しいです。
最初に共同根抵当権の効力発生要件,共同根抵当権設定の仮登記の可否について説明します。
民法398条の16によれば「・・・根抵当権については,その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り,適用する。」旨規定しています。
つまり,共同根抵当権である旨の登記は,共同根抵当権の効力発生要件となっています。
したがって,共同根抵当権設定の仮登記を申請することはできません(昭和47年11月25日民事甲4945号回答)。
以上の内容を前提に本肢について検討します。
本肢は,いわゆる共同根抵当権設定の仮登記ではなく,累積根抵当権の仮登記です。
累積根抵当権は,別々に独立した根抵当権であるため,担保すべき債権の範囲,極度額,債務者,根抵当権者が同じでも,一の申請情報によって申請することはできません。
この場合には,累積根抵当権の仮登記後,本登記の際に共同担保である旨を申請情報の内容として表示し(不動産登記令別表56申ハ),共同根抵当権とすることができます(登記研究527号)。
本肢では,累積根抵当権の仮登記のままで共同根抵当権の設定ができるかを問われていますが,累積根抵当権の仮登記のままでは共同根抵当権の設定はできないので,正しい肢となります。
以上から,エとオが正しいといえます。
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02
不動産登記法(抵当権又は根抵当権の仮登記)の問題です。問題文が長いので、問題文を読み込むだけで結構時間がかかります。司法書士試験の午後の部は試験時間が短いので、午後の部の長文問題対策として、文章を短時間に正確に読み込む訓練が必要です。
(ア)不動産登記法第105条1項の仮登記をした根抵当権について、元本が確定した場合は元本確定の登記をすることができますが、この登記は付記の仮登記ではなく、付記の本登記で行われます。従って、本肢は誤りです。
(イ)根抵当権の極度額変更登記において、登記上の利害関係人の承諾を証する情報は、必ず必要です。この登記は常に付記登記で行われますので、その仮登記も当然、付記の仮登記によって行う必要があります。このため、根抵当権の極度額の変更又は変更請求権の仮登記は、その申請時における登記上の利害関係人の承諾を証する情報がなければ申請できません。従って、本肢は誤りです。
(ウ)抵当権の設定仮登記でも、根抵当権の設定仮登記でも、順位変更登記をすることができます。従って、本肢は誤りです。
(エ)仮登記された停止条件付所有権を目的として、停止条件の成就を停止条件とする根抵当権設定仮登記を申請することは可能です。従って、本肢は正しいです。
(オ)共同根抵当権の仮登記は申請できません。予備的登記にすぎない仮登記について、効力発生要件である共同根抵当権の登記を認めることは相当でないことが、その理由となります。従って、本肢は正しいです。
仮登記をした根抵当権の元本が確定した場合には元本確定の登記ができますが、この登記は付記の本登記で行います。意外に良く出題される論点なので、この問題を機会に覚えてしまいましょう。
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03
抵当権又は根抵当権の仮登記に関する問題です。
アは誤りです。
根抵当権の元本の確定の仮登記はできません。
イは誤りです。
根抵当権の極度額増額の登記は不動産登記法66条の付記登記ができる場合に該当しないため付記登記することができません。
ウは誤りです。
抵当権と根抵当権の順位変更登記はすることができます。これは根抵当権が仮登記だったとしても同様です。
エは正しいです。
農地法の許可を条件とした所有権移転仮登記に根抵当権設定仮登記をすることはできます。
オは正しいです。
累積根抵当権は登記することはできません。
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