司法書士の過去問
令和4年度
午後の部 問31

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問題

令和4年度 司法書士試験 午後の部 問31 (訂正依頼・報告はこちら)

次の対話は、会社の変更の登記等に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

教授: 会社の本店の登記について質問します。会社の本店の所在場所において、市町村の合併により、A市がB市と名称を変更した場合には、会社は変更の登記の申請をする義務がありますか。
学生:ア  その場合、会社に変更の登記を申請する義務はありません。
教授: 商号がカタカナ表記である「株式会社コウ」の本店がA市B町一丁目1番1号である場合に、同一の所在場所を本店とする、商号がひらがな表記である「株式会社こう」の設立の登記を申請することはできますか。
学生:イ  他の会社が既に登記した商号と同一の商号を用い、かつ、その本店の所在場所が当該他の会社の本店の所在場所と同一であるときは、登記をすることができませんが、読み方が同一であっても表記が異なるときは同一の商号とはならないので、そのような登記を申請することもできます。
教授: それでは、会社の商号の登記について質問します。会社はその商号中に「支部」という文字を使用し、「株式会社コウ東京支部」のような会社の商号の登記を申請することができますか。
学生:ウ  そのような会社の商号の登記を申請することはできません。
教授: 次は、会社の公告方法の登記についてお聞きします。公告方法を「官報に掲載してする」とする登記をしている株式会社が貸借対照表の電磁的開示の制度を採用し、そのウェブページのアドレスの設定の登記を申請する場合には、何か添付書面が必要ですか。
学生:エ  委任による代理人が申請する場合の委任状のほか、代表者がそのウェブページのアドレスを決定した旨の証明書を添付する必要があります。
教授: それでは、持分会社が貸借対照表の電磁的開示制度を採用し、そのウェブページのアドレスの設定の登記の申請をすることはできますか。
学生:オ  持分会社は貸借対照表を公告する義務はありませんが、貸借対照表の電磁的開示制度を採用し、そのウェブページのアドレスの設定の登記の申請をすることができます。
  • アイ
  • アエ
  • イオ
  • ウエ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

 商号,本店,公告方法の変更等についての問題です。

選択肢1. アイ

ア・・正しいです。

 商業登記法26条において「行政区画,郡,区,市町村内の町若しくは字又はそれらの名称の変更があったときは,その変更による登記があったものとみなす。」旨規定しています。

 本肢は,行政区画による名称の変更にあたりますので,変更登記の申請は不要です。

イ・・正しいです。

 商業登記法27条では「商号の登記は,その商号が他人の既に登記した商号と同一であり,かつ,その営業所(会社にあっては,本店。以下この条において同じ。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは,することができない。」旨規定しています。

そして,同一の商号かどうかは,全体的にみて,形式的に同一と言えるかで判断します。

 例えば,「株式会社A」と「株式会社エイ」は,表記が違いますから,同一の商号とはなりません。

 しかし,「株式会社一会(いちえ)」と「株式会社一会(いっかい)」は,表記が同じなので,読み方が違っても同一商号と判断されることになります。

 本肢では,「株式会社コウ」と「株式会社こう」は,表記が異なることから同一商号とは判断されず,設立登記を申請できます。

ウ・・誤りです。

 「支部」という名称を会社の商号中に用いることについては,認められています。

 これに対し,銀行ではないのに「銀行」や「バンク」は用いてはいけません。 

エ・・誤りです。

 「代表者が決定した証明書」を添付書類とすることはありません。

 添付するなら,委任状のみ(解散の場合のように「なし」の場合もあります)ということはありますが,「代表者が決定した証明書」を添付するということはありません。 

オ・・誤りです。

 持分会社は,貸借対照表を作製しなければなりませんが,公告義務はありません(会社法617条)。これに対し,株式会社は貸借対照表の公告義務があります(会社法440条1項)。

 会社法912条ないし914条に照らすと,持分会社では,貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項は登記事項ではありません

 したがって,本肢の登記をすることはできません。

まとめ

 以上から,アとイが正しいといえます。 

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02

会社の変更登記に関する問題です。

選択肢1. アイ

アは正しいです。

市町村が名称を変更した場合変更登記はする必要はありません。(商登26)

イは正しいです。

同じ住所で同じ商号は登記することはできません。ですが今回は読み方は同じですが表記がちがうので登記することはできます。

ウは誤りです。

独立性が疑われないものはしようすることができるので支部は登記で使用することができます。

他にも、特約店、代理店も使用できます。

(昭29.12.21.民甲2613号)

なお、会社の一営業所、一営業部門であるようなことを示すような称号は使用できません。(昭29.7.16.民甲1679号)

例)出張所、支社、支店等

エは誤りです。

貸借対照表に係る情報の提供を受けるために必要な事項のHPアドレスについては登記することができますが、その際に決定したことを証明する書面は不要です。

オは誤りです。

持分会社は貸借対照表の作成義務はありますが告示義務はありませんので登記事項にはなりません。

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03

商業登記法(会社の変更登記等)に関する問題です。実務で商業登記を行う場合には、会社変更登記の細かいルールを知っていなくてはなりません。その知識を確認する問題です。

選択肢1. アイ

(ア)登記簿に記録された行政区画等に変更があった場合、その旨の登記がない時であっても、その変更による登記があったものとみなされます。この場合は、登記官が職権をもって変更があったことを記載することができます。従って、本肢は正しいです。

(イ)同一の本店所在場所における同一の商号の登記は禁止されています。「同一の商号」とは、会社の種類を表す表示(株式会社や合同会社など)も含めて、商号全体の表記が完全に一致するものを言います。「株式会社コウ」と「株式会社こう」は、標記が異なるため、読み方が一致しても同一商号に該当しません。従って、本肢は正しいです。

(ウ)会社の商号には、「支部」という称号を使用することは可能です。従って、本肢は誤りです。

(エ)公告方法を「官報に掲載してする」と登記している株式会社が、貸借対照表の電磁的記録開示制度を採用し、そのウェブページアドレスを登記する場合の添付書類は、委任状だけです。従って、本肢は誤りです。

(オ)持分会社は貸借対照表を作成しなければなりませんが、株式会社とは異なり、その内容を公告する必要はありません。従って、持分会社が貸借対照表の電磁的開示制度を利用できる旨の規定は存在せず、その登記もできません。従って、本肢は誤りです。

まとめ

(イ)のような、株式会社の商号を登記する場合のルールについては、毎年ではないですが数年周期で出題されていますので、決して疎かにできない論点です。

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