司法書士の過去問
令和4年度
午後の部 問34
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問題
令和4年度 司法書士試験 午後の部 問34 (訂正依頼・報告はこちら)
組織変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 合名会社が組織変更をした場合の組織変更後の株式会社についてする登記の申請書には、資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面を添付しなければならない。
イ 合名会社が組織変更をした場合において、債権者保護手続に係る公告を官報のほか定款の定めに従って時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙によってしたときは、組織変更後の株式会社についてする登記の申請書には、知れている債権者に対して各別の催告をしたことを証する書面を添付することを要しない。
ウ 合同会社が取締役会設置会社でない株式会社となる組織変更をした場合は、組織変更後の株式会社についてする登記の申請書には、取締役が就任を承諾したことを証する書面に押印された印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。
エ 合同会社が組織変更をした場合において、当該組織変更を無効とする判決が確定したときは、当該合同会社は、組織変更後の会社についての解散の登記及び組織変更前の会社についての回復の登記を申請しなければならない。
オ 株式会社が合資会社となる組織変更をした場合は、組織変更による設立の登記の申請書には、有限責任社員が既に履行した出資の価額を証する書面を添付しなければならない。
ア 合名会社が組織変更をした場合の組織変更後の株式会社についてする登記の申請書には、資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面を添付しなければならない。
イ 合名会社が組織変更をした場合において、債権者保護手続に係る公告を官報のほか定款の定めに従って時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙によってしたときは、組織変更後の株式会社についてする登記の申請書には、知れている債権者に対して各別の催告をしたことを証する書面を添付することを要しない。
ウ 合同会社が取締役会設置会社でない株式会社となる組織変更をした場合は、組織変更後の株式会社についてする登記の申請書には、取締役が就任を承諾したことを証する書面に押印された印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。
エ 合同会社が組織変更をした場合において、当該組織変更を無効とする判決が確定したときは、当該合同会社は、組織変更後の会社についての解散の登記及び組織変更前の会社についての回復の登記を申請しなければならない。
オ 株式会社が合資会社となる組織変更をした場合は、組織変更による設立の登記の申請書には、有限責任社員が既に履行した出資の価額を証する書面を添付しなければならない。
- アウ
- アオ
- イウ
- イエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
組織変更の登記に関する問題です。
やはり,会社法の組織変更の知識が基本になります。
ア・・正しいです。
合名会社では,資本金が登記事項とされていません(会社法912条1項参照)。
株式会社では,資本金が登記事項ですから(会社法911条3項5号),合名会社の資本金と確認する必要があります。
なぜなら,株式会社の資本金と合名会社の資本金が一致しなくてはいけないからです(会社計算規則34条1号)。
登記官としては,登記記録から株式会社に組織変更する前の資本金がわからないので,本肢の登記をする際には,資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面を確認する必要があります(商業登記規則61条9項)。
したがって,組織変更後の株式会社についてする登記の申請書には、資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面を添付しなければなりません。
イ・・誤りです。
組織変更をする持分会社は,債権者保護手続に係る官報による公告及び知れている債権者に対する各別の催告をする必要があります(会社法781条2項前段,779条1項,2項)。
組織変更をする持分会社が合同会社の場合は,官報及び日刊新聞紙又は電子公告によって債権者保護手続を行なえば,知れている債権者に対する各別の催告は不要です(会社法781条2項・779条3項)。つまり,組織変更をする持分会社が合資会社と合名会社の場合には,知れている債権者に対する各別の催告が必要になります。
しかし,本肢では,組織変更をする持分会社は,合名会社であり,合同会社ではないので,知れている債権者に対する各別の催告は省略できません。
したがって,本肢の申請では,催告をしたことを証する書面を添付しないといけません(商業登記法107条1項6号)。
ウ・・誤りです。
株式会社の設立登記では,設立時取締役の就任承諾書に押印された印鑑についての印鑑証明書(市町村長作成の印鑑証明書)を添付する必要があります(商業登記規則61条4項前段)。
しかし,組織変更又は合併による設立登記の申請書には,印鑑証明書の添付は必要ありません(同条4項前段かっこ書,5項)。
エ・・誤りです。
本肢の場合には,当事者の申請ではなく,裁判所書記官の嘱託による登記が行なわれます(会社法937条3項1号)。
基本的には,裁判所が関与したものについては,裁判所書記官の嘱託による登記(裁判所が清算人を選任した場合に当事者が申請するような例外的な場合を除く)が原則と覚えておくといいと思います。
オ・・正しいです。
合資会社では,会社法913条7号に基づき,「有限責任社員の出資の目的及びその価額並びに既に履行した出資の価額」が登記事項です。
したがって,株式会社が組織変更して合資会社になるときには,有限責任社員が既に履行した出資の価額を証する書面を添付して申請する必要があります(商業登記法77条8号)。
以上から,アとオが正しいといえます。
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02
組織変更登記に関する問題です。
アは正しいです。
合名会社は全員が無限責任社員のため資本金の額は登記されてません。ですので組織変更で株式会社になるには資本金の額は登記する必要があります。
よって資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面を添付しなければなりません。
イは誤りです。
合名会社が組織変更した場合は債権者保護手続は必須となります。
ですので知れている債権者に対して各別の催告をしたことを証する書面を添付することを要します。
ウは誤りです。
合同会社から取締役会非設置株式会社に組織変更した際は取締役の就任承諾書に印鑑の押印は不要です。
エは誤りです。
この場合は登記官の嘱託によって登記されるため登記する必要はありません。
オは正しいです。
株式会社が合資会社に組織変更した際は有限責任社員と無限責任社員と有限責任社員とに分かれます。
有限責任社員については有限責任社員が既に履行した出資の価額を証する書面を添付しなければなりません。
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03
商業登記法(組織変更登記)に関する問題です。司法書士試験の商業登記法における組織変更に関する論点も、非常に難しい分野に属しますが、この問題は文章が短く端的なので、比較的解きやすい問題と言えます。
(ア)合名会社が組織変更した場合の組織変更後の株式会社についてする設立の登記申請書には、資本金の額が会社法及び会社計算規則に従って計上されたことを証する書面の添付が必要です。従って、本肢は正しいです。
(イ)合名会社が株式会社に組織変更する場合は、社員の責任の変更により債権者に大きな影響が出るので、官報のほか、日刊新聞誌に掲載する方法又は電子公告をした場合でも、知れている債権者に対する格別を省略することはできません。従って、本肢は誤りです。
(ウ)合併及び組織変更による取締役設置会社以外の株式会社の設立登記の場合には、取締役が就任を承諾したことを証する書面に、印鑑証明書を添付する必要はありません。従って、本肢は誤りです。
(エ)会社の組織変更の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合、裁判所書記官は職権で、遅滞なく各会社の本店所在地を管轄する登記所に組織変更後の会社について解散の登記及び組織変更をする会社についての回復の登記を嘱託しなければなりません。本肢の登記は、裁判所の嘱託登記によるので、誤りです。
(オ)株式会社が合資会社となる組織変更をする場合、組織変更による設立の登記申請書には、有限責任社員が既に履行をした出資の価額を証する書面の添付が必要です。従って、本肢は正しいです。
本問で問われている論点は、すべて商業登記法の組織変更の論点としてはやさしいものですので、確実に正解しておきたいものです。
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