選択肢2. アオ
ア・・正しいです。
合名会社では,資本金が登記事項とされていません(会社法912条1項参照)。
株式会社では,資本金が登記事項ですから(会社法911条3項5号),合名会社の資本金と確認する必要があります。
なぜなら,株式会社の資本金と合名会社の資本金が一致しなくてはいけないからです(会社計算規則34条1号)。
登記官としては,登記記録から株式会社に組織変更する前の資本金がわからないので,本肢の登記をする際には,資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面を確認する必要があります(商業登記規則61条9項)。
したがって,組織変更後の株式会社についてする登記の申請書には、資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面を添付しなければなりません。
イ・・誤りです。
組織変更をする持分会社は,債権者保護手続に係る官報による公告及び知れている債権者に対する各別の催告をする必要があります(会社法781条2項前段,779条1項,2項)。
組織変更をする持分会社が合同会社の場合は,官報及び日刊新聞紙又は電子公告によって債権者保護手続を行なえば,知れている債権者に対する各別の催告は不要です(会社法781条2項・779条3項)。つまり,組織変更をする持分会社が合資会社と合名会社の場合には,知れている債権者に対する各別の催告が必要になります。
しかし,本肢では,組織変更をする持分会社は,合名会社であり,合同会社ではないので,知れている債権者に対する各別の催告は省略できません。
したがって,本肢の申請では,催告をしたことを証する書面を添付しないといけません(商業登記法107条1項6号)。
ウ・・誤りです。
株式会社の設立登記では,設立時取締役の就任承諾書に押印された印鑑についての印鑑証明書(市町村長作成の印鑑証明書)を添付する必要があります(商業登記規則61条4項前段)。
しかし,組織変更又は合併による設立登記の申請書には,印鑑証明書の添付は必要ありません(同条4項前段かっこ書,5項)。
エ・・誤りです。
本肢の場合には,当事者の申請ではなく,裁判所書記官の嘱託による登記が行なわれます(会社法937条3項1号)。
基本的には,裁判所が関与したものについては,裁判所書記官の嘱託による登記(裁判所が清算人を選任した場合に当事者が申請するような例外的な場合を除く)が原則と覚えておくといいと思います。
オ・・正しいです。
合資会社では,会社法913条7号に基づき,「有限責任社員の出資の目的及びその価額並びに既に履行した出資の価額」が登記事項です。
したがって,株式会社が組織変更して合資会社になるときには,有限責任社員が既に履行した出資の価額を証する書面を添付して申請する必要があります(商業登記法77条8号)。