司法書士 過去問
令和5年度
問51 (午後の部 問16)
問題文
判決による登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
ア AからBへの所有権の移転の登記の抹消登記手続を命ずる旨の判決が確定した後、当該所有権の移転の登記を抹消する前にAが死亡し、Cが単独でAを相続した場合には、Cは、承継執行文の付与を受けることなく、CがAの相続人であることを証する情報を提供して、単独で当該判決による当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる。
イ 所有権の登記名義人はAであるが、実際の所有者はBである甲土地について、Bが死亡した後、Bの唯一の相続人であるCが、AからBへの真正な登記名義の回復を登記原因とする所有権の移転の登記手続を命ずる旨の確定判決を得た場合には、Cは、単独で当該判決による当該所有権の移転の登記を申請することができる。
ウ Aが所有権の登記名義人である甲土地に、Bを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされている場合において、Aの債権者であるCが、詐害行為を理由として当該抵当権の設定契約を取り消し、Bに対して当該抵当権の設定の登記の抹消登記手続を命ずる旨の判決が確定したときは、Cは、自らを登記権利者として単独で当該判決による当該抵当権の設定の登記の抹消を申請することができる。
エ Aが所有権の登記名義人である農地である甲土地について、農地法所定の許可があったことを条件としてAからBへの所有権の移転の登記手続を命ずる旨の判決が確定した場合において、Bが単独で当該判決による当該所有権の移転の登記を申請するときは、当該判決に執行文の付与を受けることを要する。
オ AからBへの所有権の移転の登記の抹消登記手続を命ずる旨の判決が確定した後、当該所有権の移転の登記を抹消する前にBが死亡し、BからBの相続人であるCへの相続を原因とする所有権の移転の登記がされている場合には、Aは、Cに対する承継執行文の付与を受けることなく、単独で当該判決による当該相続を原因とする所有権の移転の登記の抹消を申請することができる。
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問題
司法書士試験 令和5年度 問51(午後の部 問16) (訂正依頼・報告はこちら)
判決による登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
ア AからBへの所有権の移転の登記の抹消登記手続を命ずる旨の判決が確定した後、当該所有権の移転の登記を抹消する前にAが死亡し、Cが単独でAを相続した場合には、Cは、承継執行文の付与を受けることなく、CがAの相続人であることを証する情報を提供して、単独で当該判決による当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる。
イ 所有権の登記名義人はAであるが、実際の所有者はBである甲土地について、Bが死亡した後、Bの唯一の相続人であるCが、AからBへの真正な登記名義の回復を登記原因とする所有権の移転の登記手続を命ずる旨の確定判決を得た場合には、Cは、単独で当該判決による当該所有権の移転の登記を申請することができる。
ウ Aが所有権の登記名義人である甲土地に、Bを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされている場合において、Aの債権者であるCが、詐害行為を理由として当該抵当権の設定契約を取り消し、Bに対して当該抵当権の設定の登記の抹消登記手続を命ずる旨の判決が確定したときは、Cは、自らを登記権利者として単独で当該判決による当該抵当権の設定の登記の抹消を申請することができる。
エ Aが所有権の登記名義人である農地である甲土地について、農地法所定の許可があったことを条件としてAからBへの所有権の移転の登記手続を命ずる旨の判決が確定した場合において、Bが単独で当該判決による当該所有権の移転の登記を申請するときは、当該判決に執行文の付与を受けることを要する。
オ AからBへの所有権の移転の登記の抹消登記手続を命ずる旨の判決が確定した後、当該所有権の移転の登記を抹消する前にBが死亡し、BからBの相続人であるCへの相続を原因とする所有権の移転の登記がされている場合には、Aは、Cに対する承継執行文の付与を受けることなく、単独で当該判決による当該相続を原因とする所有権の移転の登記の抹消を申請することができる。
- アイ
- アエ
- イウ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (2件)
01
不動産登記法(判決による登記)の問題です。司法書士試験の午後の部で、ほぼ毎年出題される論点です。
(ア)AからBへの所有権移転登記の抹消を命じる判決が確定したが、当該所有権の移転登記を抹消する前にAが死亡し、Cが単独でAを相続したときは、Cは当該判決について執行文の付与を受けることなく、CはAの相続人であることを証する情報を提供して、当該判決に基づき、単独で所有権の移転登記をすることができます。従って、本肢は正しいです。
(イ)Bが死亡した後に、Bの唯一の相続人であるCが真正な登記名義の回復を登記原因とするAから亡Bへの所有権の移転を命じる確定判決を得たときは、Cは当該判決に基づき、単独でAから亡Bへの所有権移転登記をすることができるとされています。従って、本肢は正しいです。
(ウ)本肢のケースでは、Cは、自ら登記権利者として抵当権の抹消登記を申請することができるのではなく、判決に基づき、登記権利者であるAに代位して当該抹消登記を申請することができます。従って、本肢は誤りです。
(エ)農地法の許可があったことを条件に所有権移転登記を命じる確定判決があった場合、農地法の許可があった時に債務者が意思表示をしたものとみなされるので、当該判決に基づき、所有権移転登記の申請をするためには執行文の付与が必要になります。従って、本肢は正しいです。
(オ)AからBへの所有権移転登記の抹消を命じる判決が確定したが、当該登記を抹消する前にBが死亡し、BからCへの相続登記が行われている場合でも、CはBの包括承継人であり、判決の効力はCにも及びます。このため、AはCに対する承継執行文の付与を受けて、当該判決に基づき、相続によるCへの所有権移転登記の抹消を申請したうえで、AからBへの所有権移転登記の抹消登記を申請できます。従って、本肢は誤りです。
(ウ)について、抵当権抹消登記についてCは登記権利者にはなりませんので、「Cは登記権利者として」という記述は明らかにおかしいです。しかし、問題文が長いので、丁寧に読み込まないと明らかにおかしいことを見落としてしまいます。普段から、長文の問題に慣れておくことが大切です。
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02
判決による登記の問題を解く前提知識として、次のことを理解する必要があります。
・確定した給付判決は債務名義(民執22条)のひとつであり、強制執行(民執25条)できるか否かが問題となる。
・判決による登記が単独申請によってできるのは、不動産登記法における例外的な取扱いである(不登63条)。
複雑な問題文も多いですが、上記の前提を押さえたうえで情報を整理していきましょう。
承継執行文(民執27条2項)は、債務名義に書かれた当事者以外の者にその効力を及ばせるものです。
本問においては以下のように定義できます。
・債務名義:AからBへの所有権の移転の登記の抹消登記手続を命ずる旨の判決
・当事者:A(権利者)とB(義務者)
そして最初にも述べたとおり、確定した給付判決(=債務名義)による登記は強制執行であり、本問におけるCはA(権利者)を単独で相続しているため、この債務名義を使って強制執行をすることができます(民執23条1項3号)し、登記を申請することもできます(不登法62条)。
よって、Cは、AとBを当事者とする債務名義を使って、AからBへの所有権移転登記の抹消登記手続を申請することができるため、本肢は正しいです。
※ 今回の登記では、Cは名義人として登場しないため、承継執行文付与の要件である債務名義に書かれた当事者以外の者にその効力を及ばせる場合には当たりません。
暗記のポイント:不動産登記法における承継執行文は、口頭弁論終結後、登記義務者側に相続などの一般承継が起きた場合に必要
(ア)と同様に考えてみましょう。
本問において、債務名義と当事者は以下のように定義できます。
・債務名義:AからBへの所有権の移転の登記手続を命ずる旨の確定判決
・当事者:A(義務者)とB(権利者)
そして、CはB(権利者)を単独で相続しているため、この債務名義を使って強制執行をすることができます(民執23条1項3号)し、登記を申請することもできます(不登法62条)。
よって、Cは、AとBを当事者とする債務名義を使って、AからBへの所有権移転登記を申請することができるため、本肢は正しいです。
なお、甲土地の所有権は最終的にCに帰属しますが、今回の判決はあくまでAからBへの所有権移転を命ずるものなので、甲土地の所有権は次のように移転していきます。
1 AからB(登記原因:真正な登記名義の回復)
2 BからC(登記原因:相続)
※ 真正な登記名義の回復の登記には原因日付がないので、相続との先後は問題となりません。
暗記のポイント:中間省略登記はできないのが原則
本問において、登記権利者はあくまで所有権の登記名義人であるAであり、Cは、Aの債権者として代わりに登記を申請できるにすぎません(代位登記・民423条参照)。
よって、Cが登記権利者になるわけではないので、本肢は誤りです。
ポイント:登記権利者・登記義務者と登記申請人は別物
本問は執行文の付与に関するとてもシンプルな問題です。
執行文の付与については、民事執行法177条で、債務者(義務者)の意思表示が①債権者(権利者)の証明すべき事実によって完成する場合や、②反対給付の履行があったことを債権者(権利者)が証明した場合には、執行文の付与があった時に債務者の意思表示があったものとみなすと規定されています。
つまり、今回の判決のように、所有権移転を命ずる給付判決はあるものの、「公的機関の許可が得られていない」場合や、「債権者からの反対給付(金銭の支払等)が終わっていない」場合に、執行文の付与の問題がでてきます。
噛み砕いていえば、判決文を見ただけでは登記をしていいのか否かがわからない場合に、執行文の付与が必要ということです。
よって、Bがこの判決を使って登記申請をする場合には、条件が満たされていることを証明するため、執行文の付与を受ける必要があるため、本肢は正しいです。
※ 本問の場合、Bは、事件の記録がある裁判所の書記官に農地法の許可書を提出して、執行文を付与してもらいます(民執26条)。
暗記のポイント:執行文の付与は、判決文だけでは登記をしていいか否かがわからない場合に必要
(ア)と同様に考えましょう。
本問において、債務名義と当事者は以下のように定義できます。
・債務名義:AからBへの所有権の移転の登記の抹消登記手続を命ずる旨の判決
・当事者:A(権利者)とB(義務者)
そして最初にも述べたとおり、確定した給付判決(=債務名義)による登記は強制執行であり、本問におけるAには、AからBへの所有権の移転の登記の抹消登記をする権限しかありません。
そこで活躍するのが承継執行文です。
今回、CはB(義務者)を相続しているため、AはCに対して強制執行をすることができます(民執23条1項3号)が、Cの名前は債務名義に登場しません。
よって、Aは、債務名義に書かれた当事者以外の者(C)にその効力を及ばせるために、承継執行文の付与を受けなければ強制執行ができないため、本肢は誤りです。
※ 判決確定時にBが生きているため、承継執行文について考えるときの当事者はあくまでAとBです。
判決による登記の問題は、①どのような登記が必要か、②登記の当事者(権利者・義務者)は誰か、③判決の内容は何かを整理しながら解きましょう。
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