司法書士の過去問
令和5年度
午後の部 問15

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問題

令和5年度 司法書士試験 午後の部 問15 (訂正依頼・報告はこちら)

一の申請情報による登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
なお、複数の不動産について申請がされる場合には、当該不動産は、同一の登記所の管轄区域内にあるものとする。

ア  信託財産に属する不動産に関する権利が受託者の固有財産となった場合には、信託の登記の抹消と当該信託財産に属する不動産に関する権利の変更の登記とは、一の申請情報によって申請しなければならない。
イ  Aが所有権の登記名義人である甲土地及び乙土地について、売主をAとし、買主をBとする売買により同一の日に所有権がAからBに移転した場合には、甲土地について登記識別情報を提供して申請する所有権の移転の登記と、乙土地について登記識別情報を提供することができないために事前通知による手続を利用して申請する所有権の移転の登記とは、一の申請情報によって申請することができる。
ウ  同一の債権を担保するために複数の土地に設定された元本の確定前の根抵当権の一部譲渡を登記原因とする根抵当権の一部移転の登記は、各土地についての登記原因の日付が異なる場合であっても、一の申請情報によって申請することができる。
エ  根抵当権者が単独で申請する根抵当権の元本の確定の登記と代位弁済を登記原因とする根抵当権の移転の登記は、一の申請情報によって申請しなければならない。
オ  Aが所有権の登記名義人である甲土地とA及びBが所有権の登記名義人である乙土地について、A及びBが同一の日に、同一の住所に住所を移転した場合には、A及びBは、甲土地及び乙土地に係る所有権の登記名義人の住所の変更の登記を、一の申請情報によって申請することができる。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (2件)

01

不動産登記法(一の申請情報による登記)の問題です。一の申請にまとめることができるかどうかで、登記申請に係る登録免許税の金額が変わってきますので、実務においても、この分野の知識は非常に重要です。

選択肢5. エオ

(ア)信託財産が受託者の固有の財産となった旨の変更登記と、信託登記の抹消登記は、一の申請情報によってしなくてはなりません(不動産登記令5条3項)。従って、本肢は正しいです。

 

(イ)不動産の所有権移転登記において、登記の目的及び登記原因日付が同一であれば、一方の不動産については、登記識別情報を提供し、もう一方の不動産については、登記識別情報を提供せず、事前通知を利用する場合でも、一の申請情報で登記の申請ができます。従って、本肢は正しいです。

 

(ウ)不動産登記令35条10号は「同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記が、同一の債権を担保する先取特権、質権又は抵当権(以下「担保権」と総称する。)に関する登記であって、「登記の目的が同一であるとき」は、一の申請情報で登記を申請できると規定しています。従って、本肢の登記は一の申請情報で申請できるので、正しいです。

 

(エ)根抵当権者が単独で申請する根抵当権の元本の確定の登記の登記原因は確定、申請人は根抵当権者です。一方、代位弁済を原因とする根抵当権の移転の登記の登記原因は「代位弁済」、申請人は、根抵当権者と代位弁済者です。双方で、登記原因と申請人が異なるため、この2つの登記を一の申請情報で申請することはできません(不動産登記令4条但書参照)。従って、本肢は誤りです。

 

(オ)Aが所有権登記名義人である甲土地と、A及びBが所有権の登記名義人である乙土地について、A及びBが同一の日に同一の場所に住所を移転した場合でも、甲土地と乙土地に係る所有権の登記名義人の住所変更登記を一の申請情報で申請することはできません(質疑登記研究519p187参照)。理由は、甲土地についてはAが、乙土地についてはA及びBが申請人となるため、双方の登記で申請人が異なるためです。従って、本肢は誤りです。

まとめ

不動産登記令4条は 一の申請情報による登記の基本となる条文です。ここで覚えてしまいましょう。ちなみに条文は「申請情報は、登記の目的及び登記原因に応じ、一の不動産ごとに作成して提供しなければならない。ただし、同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記の目的並びに登記原因及びその日付が同一であるときその他法務省令で定めるときは、この限りでない。」です。

 

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02

一の申請情報による登記の論点です。一の申請として、処理出来るかどうかで、登録免許税の金額が変わってきますし、記述式問題だと、いわゆる枠ズレ問題が起こる可能性が出てきますから、非常に重要な論点です。

選択肢5. エオ

ア 信託の登記は一部の例外を除いて、一の申請情報によって登記申請をする必要があります。 不動産登記令5条3項により、信託財産が受託者の固有の財産となった場合も、その旨の変更登記と、信託登記の抹消登記を一の申請情報によってする必要があります。よって、本肢は正解となります。
 

イ 同一管轄で、同一当事者、同一の登記目的、登記原因日付で、複数の不動産の移転登記をする場合、真正担保の情報として、登記識別情報と事前通知を組み合わせても、一の申請情報で登記の申請は可能です。よって、本肢は正解となります。
 

ウ 一の申請情報によって申請することができる場合の規定、不動産登記令35条の10号で、”同一の登記所の管轄区域内にある二以上の不動産について申請する登記が、同一の債権を担保する先取特権、質権又は抵当権(以下「担保権」と総称する。)に関する登記であって、登記の目的が同一であるとき。”とあるので、本肢の場合、一の申請情報で申請できますから、正解となります。
 

エ 一の申請情報で申請するには登記原因と申請人が同一である必要がありますが、代位弁済を原因とする根抵当権の移転の登記は共同申請となるので、根抵当権者が単独で申請する根抵当権の元本の確定の登記とは、申請人が異なります。もちろん、登記原因も異なるので、本肢の一の申請情報で申請しなければならないとする記述は不正解となります。
 

オ 不動産登記令35条の8号で”同一の登記所の管轄区域内にある一又は二以上の不動産について申請する二以上の登記が、いずれも同一の登記名義人の氏名若しくは名称又は住所についての変更の登記又は更正の登記であるとき。”とありますが、本肢では、甲土地はAが所有権登記名義人であり、乙土地はA及びBが所有権の登記名義人であり、同一の登記名義人とは言えません。よって、本肢は不正解となります。

まとめ

解法のポイント

一の申請情報による登記が可能かどうかは、記述式の枠ズレに直結する問題となります。通常、登録免許税がもっとも安くなる方法を採用しなければならないからです。不動産登記令4条を基本として、一の申請情報による登記が出来るパターンを整理して暗記しておきましょう。

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