司法書士 過去問
令和5年度
問53 (午後の部 問18)
問題文
共有の不動産に係る登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア A及びBが所有権の登記名義人である甲土地をAが単独で取得し、Aが所有権の登記名義人である乙土地をBが単独で取得する共有物分割の協議により甲土地の登記を申請する場合の登記原因は、共有物分割による交換である。
イ 所有権の登記がない建物の表題部所有者であるA及びBが、当該建物について所有権の保存の登記を申請する場合には、当該登記の申請情報と同一の申請情報により共有物の分割をしない旨の定めの登記を申請することができない。
ウ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地について、Aが自己の持分をCに売却した後にBが自己の持分を放棄した場合には、AからCへの持分の移転の登記をする前であっても、持分放棄を登記原因とするBからCへの持分の移転の登記を申請することができる。
エ 甲土地の所有権の登記名義人であるAが死亡し、Aの法定相続人であるB及びCがそれぞれ自己の相続分をAの相続人でないDに贈与した場合には、相続分の贈与を登記原因として直接AからDへの所有権の移転の登記を申請することができる。
オ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地のAの持分に対してCを債権者とする差押えの登記がされている場合において、A及びBが、Dに対して、同一の売買契約に基づいて、同一の日に甲土地のそれぞれの持分を売却したときであっても、A及び BからDへの共有者全員の持分の全部の移転の登記は、一の申請情報により申請することはできない。
ア A及びBが所有権の登記名義人である甲土地をAが単独で取得し、Aが所有権の登記名義人である乙土地をBが単独で取得する共有物分割の協議により甲土地の登記を申請する場合の登記原因は、共有物分割による交換である。
イ 所有権の登記がない建物の表題部所有者であるA及びBが、当該建物について所有権の保存の登記を申請する場合には、当該登記の申請情報と同一の申請情報により共有物の分割をしない旨の定めの登記を申請することができない。
ウ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地について、Aが自己の持分をCに売却した後にBが自己の持分を放棄した場合には、AからCへの持分の移転の登記をする前であっても、持分放棄を登記原因とするBからCへの持分の移転の登記を申請することができる。
エ 甲土地の所有権の登記名義人であるAが死亡し、Aの法定相続人であるB及びCがそれぞれ自己の相続分をAの相続人でないDに贈与した場合には、相続分の贈与を登記原因として直接AからDへの所有権の移転の登記を申請することができる。
オ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地のAの持分に対してCを債権者とする差押えの登記がされている場合において、A及びBが、Dに対して、同一の売買契約に基づいて、同一の日に甲土地のそれぞれの持分を売却したときであっても、A及び BからDへの共有者全員の持分の全部の移転の登記は、一の申請情報により申請することはできない。
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問題
司法書士試験 令和5年度 問53(午後の部 問18) (訂正依頼・報告はこちら)
共有の不動産に係る登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア A及びBが所有権の登記名義人である甲土地をAが単独で取得し、Aが所有権の登記名義人である乙土地をBが単独で取得する共有物分割の協議により甲土地の登記を申請する場合の登記原因は、共有物分割による交換である。
イ 所有権の登記がない建物の表題部所有者であるA及びBが、当該建物について所有権の保存の登記を申請する場合には、当該登記の申請情報と同一の申請情報により共有物の分割をしない旨の定めの登記を申請することができない。
ウ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地について、Aが自己の持分をCに売却した後にBが自己の持分を放棄した場合には、AからCへの持分の移転の登記をする前であっても、持分放棄を登記原因とするBからCへの持分の移転の登記を申請することができる。
エ 甲土地の所有権の登記名義人であるAが死亡し、Aの法定相続人であるB及びCがそれぞれ自己の相続分をAの相続人でないDに贈与した場合には、相続分の贈与を登記原因として直接AからDへの所有権の移転の登記を申請することができる。
オ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地のAの持分に対してCを債権者とする差押えの登記がされている場合において、A及びBが、Dに対して、同一の売買契約に基づいて、同一の日に甲土地のそれぞれの持分を売却したときであっても、A及び BからDへの共有者全員の持分の全部の移転の登記は、一の申請情報により申請することはできない。
ア A及びBが所有権の登記名義人である甲土地をAが単独で取得し、Aが所有権の登記名義人である乙土地をBが単独で取得する共有物分割の協議により甲土地の登記を申請する場合の登記原因は、共有物分割による交換である。
イ 所有権の登記がない建物の表題部所有者であるA及びBが、当該建物について所有権の保存の登記を申請する場合には、当該登記の申請情報と同一の申請情報により共有物の分割をしない旨の定めの登記を申請することができない。
ウ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地について、Aが自己の持分をCに売却した後にBが自己の持分を放棄した場合には、AからCへの持分の移転の登記をする前であっても、持分放棄を登記原因とするBからCへの持分の移転の登記を申請することができる。
エ 甲土地の所有権の登記名義人であるAが死亡し、Aの法定相続人であるB及びCがそれぞれ自己の相続分をAの相続人でないDに贈与した場合には、相続分の贈与を登記原因として直接AからDへの所有権の移転の登記を申請することができる。
オ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地のAの持分に対してCを債権者とする差押えの登記がされている場合において、A及びBが、Dに対して、同一の売買契約に基づいて、同一の日に甲土地のそれぞれの持分を売却したときであっても、A及び BからDへの共有者全員の持分の全部の移転の登記は、一の申請情報により申請することはできない。
- アウ
- アエ
- イエ
- イオ
- ウオ
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この過去問の解説 (2件)
01
不動産登記法(共有の不動産の登記)に関する問題です。共有物の分割に関する論点は、実務でも大変重要になっています。
(ア)A及びBが所有権登記名義人である甲土地をAの単独所有とし、Aが所有権登記名義人である乙土地をBが単独で所有する共有物分割協議が成立した場合は、甲土地については共有物分割を登記原因とする持分移転登記を申請し、乙土地については、共有分割による交換を登記原因として、所有権移転登記を申請します。本肢は、甲土地の申請の登記原因を「共有物分割による交換」と記述しているため、誤りです。
(イ)所有権の登記がない建物について、その表題部所有者A及びBが保存登記と、共有物分割しない旨の定めの登記を一の申請情報ですることはできません。その理由は、保存登記はA及びBの単独申請、共有物を分割しない旨の定めは共有者全員からの共同申請で、申請方式が異なるからです。従って、本肢は正しいです。
(ウ)A及びBの共有名義の土地について、実体上はCがAから持分を譲り受けているが登記が未了である場合、Bが持分を放棄したとしても、BからCへの持分移転登記はできません。登記名義人でないCに移転登記を行うことはあり得ないからです。従って、本肢は誤りです。
(エ)甲土地の所有権登記名義人であるAが死亡し、Aの法定相続人がB及びCである場合に、B及びCがDに対して相続分を譲渡した場合は、一度Aから相続登記によりBCに名義変更をしたうえで、BCからDに対して持分全部移転登記を行うことになります。Aから直接Dに所有権移転登登記を行うことはできません。従って、本肢は誤りです。
(オ)A及びBの共有名義の土地について、A持分について差押えの登記がされている場合は、A及びBがDに対して同日に持分を全部を売却した場合でも、A及びBの、Dに対する持分全部移転の登記は一の申請情報ですることはできません。A持分に差押え登記が入っているためです。従って、本肢は正しいです。
本問題で問われている論点は基礎的なものが多く、問題文もそれほど長文ではなかったため、解きやすい問題だったと思います。こういった問題は確実に得点しなくてはなりません。
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02
登記原因の使い分けや単独申請・共同申請の違いといった、基本概念を問う問題です。
不動産登記法においては売買や相続といった各論部分の理解はもちろん必要ですが、
それ以上に、本問のような総論部分の理解が重要です。
確実に解けるよう理解しておきましょう。
「共有物分割による交換」と「共有物分割」という登記原因の使い分けを問う問題です。
まず前提として、共有物の分割については、民法第256条前段で「各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができる」と規定されています。
そして共有物の分割は通常、現物分割(物で対価を支払う)や換価分割(お金で対価を支払う)の方法によりますが、前者の場合、共有者の1人が単独で所有する不動産を対価として譲り渡すことがあります。
(本肢におけるB所有の乙土地がこれに当たります。)
このような場合において、乙土地についてBからAへの所有権移転登記の登記原因を単に「共有物分割」としてしまえば、「共有じゃないのにどうして共有物分割?」と違和感が生じてしまいます。
なので「共有物分割による交換」という登記原因を使い、「交換の結果、乙土地が対価として支払われた」という事実を公示することになったのです。
反対に元から共有である土地については、単に「共有物分割」を登記原因とすれば十分です。
よって、共有名義である甲土地の登記を申請する場合の登記原因は「共有物分割」なので、本肢は誤りです。
暗記のポイント:「共有物分割」は共有、「共有物分割による交換」は単有のときに使う。
本肢の場合、所有権の保存の登記は表題部所有者からの単独申請により(不登法74条1項1号)、共有物の分割をしない旨の定めの登記は共有者全員を権利者兼義務者とする共同申請によります(不登法65条)。
よって、申請形態が異なるため、これらの登記は一の申請情報によってはすることができないため、本肢は正しいです。
暗記のポイント:たとえ当事者が同じでも、単独申請の登記と共同申請の登記を一の申請情報によってすることはできない。
そもそも共有物の持分放棄とは、共有者の一人がその持分を放棄することで、その持分が当然に他の共有者のものになることを指します(民法255条)。
よって、「持分放棄」を登記原因とする登記は、必ず権利者も義務者もどちらもが共有者でなければなりませんので、本肢は誤りです。
なお、本肢の場合、まずはAからCへの売買による持分全部移転登記をした後、BからCへの持分放棄による持分全部移転登記をします。
「相続」を登記原因とする場合、当然ながら権利者は相続人等の一般承継人でなければなりません。
本肢のような場合、いったんB及びCを相続人とする「相続」による所有権移転登記をしてから、BからD、CからDにそれぞれ「相続分の贈与」を原因とする持分全部移転登記をします。
よって、本肢は誤りです。
一部の持分にのみ第三者の権利に関する登記(差押え等)がされている場合、後の権利関係が複雑になってしまうため、持分の全部の移転の登記をすることはできません(昭37.1.23民甲112参照)。
よって、本肢は正しいです。
登記原因にはさまざまなものがありますが、その一つひとつが一定の法律上の効果を表しています。
どのような場合にどの登記原因を使うのか、理由をつけて覚えましょう。
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