一級建築士の過去問
令和3年(2021年)
学科4(構造) 問84

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問題

一級建築士試験 令和3年(2021年) 学科4(構造) 問84 (訂正依頼・報告はこちら)

鉄筋コンクリート構造の保有水平耐力計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
  • 増分解析に用いる外力分布は、地震層せん断力係数の建築物の高さ方向の分布を表す係数Aiに基づいて設定した。
  • 全体崩壊形を形成する架構では、構造特性係数DSは崩壊形を形成した時点の応力等に基づいて算定した。
  • せん断破壊する耐力壁を有する階では、耐力壁のせん断破壊が生じた時点の層せん断力を当該階の保有水平耐力とした。
  • 付着割裂破壊する柱については、急激な耐力低下のおそれがないので、部材種別をFAとして構造特性係数DSを算定した。

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この過去問の解説 (3件)

01

鉄筋コンクリート構造の保有水平耐力計算に関する問題です。

選択肢1. 増分解析に用いる外力分布は、地震層せん断力係数の建築物の高さ方向の分布を表す係数Aiに基づいて設定した。

 

建築物の保有水平体力は、以下の条件を原則として、増分解析法で計算します。

・想定する外力分布は地震力の作用を近似値化した水平力の外力分布に基づいて、原則、Ai分布に基づく外力分布にすること

・地震力と建築物の各部の応力のつり合い条件が満足していること

・建築物の各部の応力は全部において各部材の終局体力を超えないこと

・建築物が崩壊形の形成条件であること

選択肢2. 全体崩壊形を形成する架構では、構造特性係数DSは崩壊形を形成した時点の応力等に基づいて算定した。

 

保有水平体力の計算の原則に「建築物が崩壊形の形成条件にあること」とあります。

選択肢3. せん断破壊する耐力壁を有する階では、耐力壁のせん断破壊が生じた時点の層せん断力を当該階の保有水平耐力とした。

 

耐力壁は、破壊時に変形が小さく、靭性に乏しい脆性部材です。ゆえに、せん断破壊(脆性破壊)が生じた時点の層せん断力を当該階の保有水平耐力とします。

また、脆性部材と靭性部材が混在する架構の場合、脆性部材が破壊する時の変形状態において各部材が負担する水平せん断力の和として求めます。

選択肢4. 付着割裂破壊する柱については、急激な耐力低下のおそれがないので、部材種別をFAとして構造特性係数DSを算定した。

 

鉄筋コンクリート造の構造特性係数DSを算定するにあたって、靭性の高い順にFA、FB、FC、FDの4つに分類されます。FAが一番靱性が高く、FDが最も靱性が低くなります。

付着割裂破壊は急激な耐力低下(脆性破壊)を起こします。この場合、部材種別はFDとなります。

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02

正解は「4」です。

1.正しい

各階に想定する水平力の分布は、地震力の作用と近似した分布を

利用して求めることができます。

具体的には、国交省告示にて「各階の保有水平耐力を求める際に増分解析を使う場合、

地震層せん断力係数(Ai)×層の荷重 を水平力として作用させる」という内容が書かれており、

地震層せん断力係数を用いることができます。

なので1は正しいです。

2.正しい

構造特性係数DSは建物の構造の特性に応じて、建物に働く地震力を低減する係数です。

また、保有水平耐力とは地震力等の水平力で建物が崩壊する(崩壊荷重に達する、

崩壊系を形成する)時の水平せん断力の和です。

従って、「建物が崩壊する状態」を基準に地震力をどの程度低減できるか決めるため、

2は正しいです。

3.正しい

2の解説にも書いたとおり、保有水平耐力は建物が崩壊する時の水平せん断力の和です。

耐力壁が「せん断破壊」しているという事は、既に脆性破壊が起こっているということなので

崩壊系が形成されています。

従って、この時点での層せん断力が保有水平耐力となるため、3は正しいです。

4.誤り

付着割裂破壊は脆性破壊であり、耐力が大きく低下します。

脆性破壊を起こす柱は、変形性能の低い部材種別FDとして考える必要があります。

なので4は誤りです。

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03

こういう問題難しいですよね。数をこなして覚えていくのがいいと思います。

1、2、3 正 いずれも設問のとおりです。

いずれもよく出る内容なので覚えましょう。

4 誤 付着割裂破壊は脆性破壊を起こすのでランクFDになります。

鉄筋は引張力を負担して伸びることで靭性を発揮しますが、鉄筋とコンクリートの付着力が限界になり鉄筋がコンクリートから抜け出すような破壊をすると、鉄筋が伸びずに脆性的な破壊になります。

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