一級建築士の過去問
令和3年(2021年)
学科4(構造) 問86
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問題
一級建築士試験 令和3年(2021年) 学科4(構造) 問86 (訂正依頼・報告はこちら)
鉄骨構造の接合部に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 高力ボルト摩擦接合において、肌すきが1mmを超えるものについては、母材や添え板と同様の表面処理を施したフィラープレートを挿入し、高力ボルトを締め付けた。
- 高力ボルト摩擦接合の二面せん断の短期許容せん断応力度を、高力ボルトの基準張力T0(単位 N/mm2)に対し、0.9T0とした。
- 基準強度が同じ溶接部について、完全溶込み溶接とすみ肉溶接におけるそれぞれののど断面に対する許容せん断応力度を、同じ値とした。
- 角形鋼管柱とH形鋼梁の柱梁仕口部において、梁のフランジ、ウェブとも完全溶込み溶接としたので、梁端接合部の最大曲げ耐力にはスカラップによる断面欠損の有無を考慮しないこととした。
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この過去問の解説 (3件)
01
鉄骨構造の接合部に関する問題です。
正
高力ボルト摩擦接合は、高力ボルトの高い締め付け力によって生じる部材間の摩擦力によって、応力を伝達する接合法です。
そのため、接合部材間に隙間があると摩擦力が十分に得られません。
接合部材間に1mmを超える肌すきが生じた場合は、フィラープレートを入れ、肌すきを失くし、摩擦力が得られるようにします。
正
高力ボルトの許容せん断応力度は、品質に応じて定める基準張力をT0とすると、1面せん断の場合の長期許容せん断応力度は0.3T0、2面せん断の場合は1面せん断の2倍の0.6T0となります。
そして、短期の場合は長期の1.5倍となるため、1面短期:0.45T0、2面短期:0.9T0となります。
正
完全溶込み溶接とすみ肉溶接におけるそれぞれののど断面に対する許容せん断応力度は等しくなります。
この値は、接合される母材のせん断応力度と同じとなります。
誤
スカラップとは、溶接面が交差しないように設ける扇形の切り欠きのことです。
地震時にスカラップ部分にひずみが集中し、破断する可能性があります。そのため、完全溶け込み溶接にした場合でも梁端接合部の最大曲げ耐力にはスカラップによる断面欠損の有無を考慮する必要があります。
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02
正解は「4」です。
1.正しい
高力ボルトは、板を締め付けることで板との間に発生する
摩擦力によって部材を接合します。
部材とボルトの間に隙間(肌すき)があると摩擦力が十分生じません。
なので1mm以上の肌すきがある場合はフィラープレートを設け、
摩擦力が生じるようにします。
なので1は正しいです。
2.正しい
高力ボルト摩擦接合の許容せん断力は、
摩擦が生じる面の数(一面せん断、二面せん断)と
短期か長期かで変わります。
・二面せん断は一面せん断の2倍
・短期は長期の1.5倍
なので、どれか1種類覚えておけば、残りの数値は簡単に計算で出すことができます。
例えば、一面せん断の長期許容せん断力は
0.3T0(T0は高力ボルトの基準張力)なので、
二面せん断の短期許容せん断力は
0.3T0 × 2 × 1.5 = 0.9T0 となります。
なので2は正しいです。
3.正しい
問題文の通り、許容せん断応力は完全溶込み溶接とすみ肉溶接で
同じ値とすることができます。
ただし、すみ肉溶接は完全溶込み溶接と異なり
母材と溶接金属が同一平面上で完全に一体化しているわけではないので、
せん断以外の圧縮・引張・曲げの許容応力は完全溶込み溶接の1/√3 倍となります。
4.誤り
スカラップは、直交する部材同士の溶接などの際に
溶接線(溶接を行う範囲)が途切れてしまわないように、
片側の部材の一部を切り欠いた部分のことです。
溶接作業のためには必要な処置ですが、部材を切り欠くため
地震等の大きな力が加わった際に応力が集中し弱点となってしまいます。
従って、断面欠損を考慮する必要があるので4は誤りです。
なお最近では、この弱点を克服したノンスカラップ工法
(スカラップを設けない溶接方法)も採用されています。
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03
1 正 設問のとおりです。
2 正 二面せん断というのは接合部のプレートが片側2枚になっていて、もう片方を挟むようにしてボルトで締め付ける方法です。
単純に2倍の強さとしないことを覚えておきましょう。
3 正 互いにのど断面は違いますが、のど断面に対する強さは同じです。
4 誤 この場合、スカラップは断面欠損として考慮することになっています。
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