第三種電気主任技術者の過去問
平成28年度(2016年)
電力 問23

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問題

第三種 電気主任技術者試験 平成28年度(2016年) 電力 問23 (訂正依頼・報告はこちら)

下記の諸元の揚水発電所を、運転中の総落差が変わらず、発電出力、揚水入力ともに一定で運転するものと仮定する。この揚水発電所における発電出力の値[kW]、揚水入力の値[kW]、揚水所要時間の値[h]及び揚水総合効率の値[%]として、最も近い値の組合せを次の( 1 )~( 5 )のうちから一つ選べ。
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この過去問の解説 (3件)

01

まず、発電出力を求めます。
落差(総落差H₀)は400mありますが、損失(発電損失水頭hG)がH₀の3%ありますので、有効落差は損失分だけ低くなります。よって有効落差は、
(有効落差)=H₀-H₀×hG
=400-400×0.03
=388[m]
となります。

水力発電所の理論発電出力を求めると、
(理論発電出力)=9.8×(発電使用水量QG)×(有効落差)
=9.8×60×388
=228144[kW]

発電運転時の効率を考えると、発電出力は、
(発電出力)=(理論発電出力)×(発電運転時の効率)
=228144×0.87
=198485.28
≒198500[kW]
となります。よって発電出力は、198500[kW]となります。

次に揚水入力を求めます。
揚水が必要な高さは、落差(総落差H₀)400mに対し、損失(揚水損失水頭hP)がH₀の3%ありますので、その損失分を補う為に高く揚水する必要があります。揚水高さは、
(揚水高さ)=H₀+H₀×0.03
=400+400×0.03
=412[m]
となります。

揚水入力を求めます。ポンプ運転時の効率を補う為に、損失分の揚水入力を増やす必要があります。よって揚水入力は、ポンプ運転時の効率で割ります。
(揚水入力)=9.8×(揚水量QP)×(揚水高さ)/(ポンプ運転時の効率)
=9.8×50×412/0.85
≒237506
≒237500[kW]
よって揚水入力は、237500[kW]となります。

次に揚水所要時間を求めます。
揚水に必要な時間は、発電使用水量が60m³/sに対して揚水量が50m³/sとなっていて、揚水量の方が少なく、60/50=1.2倍の時間がかかります。
発電運転時間が8時間ですので、その1.2倍の9.6時間掛かります。
---------または---------
発電運転時間の8時間で使用した水量は、
(発電運転使用水量)=(発電使用水量QG)×(時間から秒への変換)×(発電運転時間)
=(揚水量QP)×(時間から秒への変換)×(揚水所要時間)
この式から揚水所要時間を求めると、
(揚水所要時間)=(発電使用水量QG)×(時間から秒への変換)×(発電運転時間)
/[(揚水量QP)×(時間から秒への変換)]
=(発電使用水量QG)×(発電運転時間)/(揚水量QP)
=60×8/50
=9.6[h]
---------------------
よって揚水所要時間は9.6[h]となります。

次に揚水総合効率を求めます。
揚水総合効率は揚水に要したエネルギーに対し、どれくらいのエネルギーを出力したか、を求めます。
(揚水総合効率)=(発電出力)×(発電運転時間)/[(揚水入力)×(揚水所要時間)]
=198500×8/(237500×9.6)
≒0.6964
≒69.6[%]
よって揚水総合効率は、69.6[%]となります。

以上より、正解は5.となります。

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02

水力発電のエネルギー計算に関する問題です。


水力発電の出力Pは、

P = 9.8 × 流量Q[m^3/s] × 有効水頭H[m] × 効率η

基本この式を使い求めていきます。


① 発電の出力
  流量Q = 60 m^3/s
  有効水頭H = 総落差ー損失水頭 = 400 - (400×0.03) = 388m
  効率η = 0.87

よって出力P=9.8 × 60 × 388 ×0.87 = 198,485.28
近似値の198,500を選びます。


② 揚水にかかる電動機入力
  流量Q = 50 m^3/s
  有効揚程H = 総落差 + 損失水頭 = 400 + (400×0.03) = 412m
  効率η = 1/0.85

よって出力P = 9.8 × 50× 412 × 1/0.87 = 237,505.882
  近似値の237,500を選びます。


③ 揚水にかかる時間
"高所にあげる水の量"を"揚水ポンプの流量"で
  割ってやると時間が求まります。

  高所にあげる水の量=発電に使った水の量
  という関係があるので
  高所にあげる水の量=発電時間 × 発電時の流量 = 8 × 60 = 480 m^3
揚水にかかる時間 = 高所にあげる水の量 / 揚水時の流量
= 480 / 50 = 9.6 [hour]


④ 揚水発電の総合効率
  "発電の電力量"を"揚水に必要な電力量"で
  割ってやると求まります。
つまり (①×発電時間) / (②×揚水時間) です。

  揚水発電の総合効率 =198,500 × 8 / 237,500 × 9.6
= 1,588,000 / 2,280,000 =0.69649123…

%で換算した近似値の69.6となります。

  



用語

水頭:発電に使われる水の位置エネルギー、その高さのこと。

揚水:水を高所にあげること。

有効水頭:総落差から得られるエネルギーから、
     摩擦等の損失エネルギーを引いたもの。

有効揚程:総落差の高さを引き上げるエネルギーから、
     摩擦等で余分にかかるエネルギーを足したもの。

参考になった数2

03

①発電電力

発電時流量QG[m3/s]、有効落差HG[m]、発電効率ηG[%]とすると、水力発電所の発電電力PG[kW]は次式で計算できます。

  PG=9.8QGGηG/100[kW]

問題文より、各値を以下に示します。

  QG=60[m3/s]

  HG=H0(1-発電時の損失水頭)

   =400(1-0.03)

   =388[m]

  発電効率ηG=87[%]

これらを発電電力Pの式に代入すると、

次式となります。

  PG=9.8×60×388×87/100

    ≒198500[kW]

したがって、発電電力は

約198500[kW]となります。

 

②揚水入力

揚水時流量QP[m3/s]、有効落差HP[m]、発電効率ηP[%]とすると、水力発電所の揚水入力PP[kW]は次式で計算できます。

  PP=9.8QPP/(ηP/100)[kW]

問題文より、各値を以下に示します。

  QP=50[m3/s]

  HP=H0(1+発電時の損失水頭)

   =400(1+0.03)

   =412[m]

  発電効率ηP=85[%]

これらを発電電力PPの式に代入すると、

次式となります。

  PP=9.8×50×412×(85/100)

    ≒237500[kW]

したがって、揚水入力は

約237500[kW]となります。

 

③揚水所要時間

発電に必要な貯水量V[m3]とすると、揚水所要時間TP[h]は次式で計算できます。

  TP=V/QP[h]

貯水量V[m3]は、発電時流量QG[m3/s]と発電時間TG[h]の積であるから次式となります。

  V=QGTG

   =60×8

   =480[m3

揚水所要時間TPの式に代入すると

次式となります。

  TP=V/QP[h]

   =480/50

   =9.6[h]

したがって、揚水所要時間は

9.6[h]となります。

 

④揚水総合効率

揚水総合効率η[%]は、

次式で計算できます。

  η=(発電電力量)/(揚水電力量)×100[%]

    =(発電電力PG×発電時間TG)/(揚水入力PP×揚水時間TP)×100[%]

各値を代入すると、

  η=(198500×8)/(237500×9.6)×100

   ≒69.6[%]

したがって、揚水総合効率は69.6[%]となります。

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