第三種電気主任技術者の過去問
平成29年度(2017年)
電力 問28

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

第三種 電気主任技術者試験 平成29年度(2017年) 電力 問28 (訂正依頼・報告はこちら)

電力系統で使用される直流送電系統の特徴に関する記述として、誤っているものを次の( 1 )~( 5 )のうちから一つ選べ。
  • 直流送電系統は、交流送電系統のように送電線のリアクタンスなどによる発電機間の安定度の問題がないため、長距離・大容量送電に有利である。
  • 一般に、自励式交直変換装置では、運転に伴い発生する高調波や無効電力の対策のために、フィルタや調相設備の設置が必要である。一方、他励式交直変換装置では、自己消弧形整流素子を用いるため、フィルタや調相設備の設置が不要である。
  • 直流送電系統では、大地帰路電流による地中埋設物の電食や直流磁界に伴う地磁気測定への影轡に注意を払う必要がある。
  • 直流送電系統では、交流送電系統に比べ、事故電流を遮断器により遮断することが難しいため、事故電流の遮断に工夫が行われている。
  • 一般に、直流送電系統の地絡事故時の電流は、交流送電系統に比べ小さいため、がいしの耐アーク性能が十分な場合、がいし装置からアークホーンを省くことができる。

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (4件)

01

直流送電系統の特徴に関する問題です。

選択肢1. 直流送電系統は、交流送電系統のように送電線のリアクタンスなどによる発電機間の安定度の問題がないため、長距離・大容量送電に有利である。

正しいです。

直流は周波数が0なので、リアクタンスがなくなり長距離・大容量送電に有利となります。

選択肢2. 一般に、自励式交直変換装置では、運転に伴い発生する高調波や無効電力の対策のために、フィルタや調相設備の設置が必要である。一方、他励式交直変換装置では、自己消弧形整流素子を用いるため、フィルタや調相設備の設置が不要である。

誤りです。

自励式と他励式の説明が反対になっています。

一般に自励式の方が、高価で性能が良いです。

選択肢3. 直流送電系統では、大地帰路電流による地中埋設物の電食や直流磁界に伴う地磁気測定への影轡に注意を払う必要がある。

正しいです。

大地帰路電流はその名の通り帰路電流が大地を流れるので、地中埋設物の電食や直流磁界に伴う地磁気測定への影響に注意を払う必要があります。

ただ、大地帰路方式を使えば電線路が1条で済むので経済的です。

選択肢4. 直流送電系統では、交流送電系統に比べ、事故電流を遮断器により遮断することが難しいため、事故電流の遮断に工夫が行われている。

正しいです。

直流送電系統では、交流送電系統に比べて事故電流を遮断器により遮断することが難しいです。

交流は 0 A になる瞬間があるので、そのタイミングを狙えば遮断が容易になります。

選択肢5. 一般に、直流送電系統の地絡事故時の電流は、交流送電系統に比べ小さいため、がいしの耐アーク性能が十分な場合、がいし装置からアークホーンを省くことができる。

正しいです。

直流送電系統の地絡事故時の電流は、交流送電系統に比べ小さいため、がいしの耐アーク性能が十分な場合、がいし装置からアークホーンを省くことができます。

参考になった数4

02

電力系統で使用される直流送電系統とは、変電所から送られる交流電圧を変換所にて直流に変換して送電し、受電側の方で再度交流に変換する方式です。

直流送電系統の長所と短所は以下のようになります。

【長所】

①電圧降下や電力損失が少ない(直流では無効電力が発生しない為)

②充電電流による影響がない

③異なる周波数の連携が可能である。

④交流送電のようなリアクタンス成分がない為、発電機間の同期安定度の問題がない。

⑤短絡容量を増加させずに系統連系が可能である。

【短所】

①高価な交直変換設備が必要となる。

②受電側(交流)に遅れ、進みの無効電力を供給するための設備が必要。

③交直変換装置による高調波が発生するので除去フィルターの設置が必要となる。

④高電圧、大電流の直接遮断が困難。

⑤交流のような変圧器が使用できないので、変圧が簡単にできない。

以上を踏まえた上で、各選択肢を見ていきましょう。

 

選択肢1. 直流送電系統は、交流送電系統のように送電線のリアクタンスなどによる発電機間の安定度の問題がないため、長距離・大容量送電に有利である。

直流送電系統では解説の冒頭【長所】①、④でも述べているようにリアクンス、周波数の影響を受けないので安定度に問題がないため長距離・大容量送電に適しています。また、ケーブルの導体が2条で済む事から建設費を安く抑える事ができるのも利点の一つとなります。なのでこの記述は正しいです。

選択肢2. 一般に、自励式交直変換装置では、運転に伴い発生する高調波や無効電力の対策のために、フィルタや調相設備の設置が必要である。一方、他励式交直変換装置では、自己消弧形整流素子を用いるため、フィルタや調相設備の設置が不要である。

解説の冒頭【短所】③より、交直変換装置を用いる場合はィルタや調相設備の設置が必要となります。自励式、他励式共に交直変換装置を用いるのでどちらも設備が必要となります。自励式交直変換装置ではパワー半導体(自己消弧形整流素子)を用いて変換するため交流系統の電源が無くても、交直変換が行えます。他励式は交流系統の電源を利用して変換器を動作さえる方式で自己消弧形整流素子などは使用しません

なのでこの記述は誤りなので、問題の解答としてはこちらが適切となります。

選択肢3. 直流送電系統では、大地帰路電流による地中埋設物の電食や直流磁界に伴う地磁気測定への影轡に注意を払う必要がある。

直流送電系統を地中ケーブル等で敷設する場合は大地帰路電流発生に伴う、地中埋設物の電食が起きる可能性があります。また地中に直接埋設する為、流磁界に伴う地磁気測定への影轡を考慮する必要があります。

なのでこの記述は正しいです。

選択肢4. 直流送電系統では、交流送電系統に比べ、事故電流を遮断器により遮断することが難しいため、事故電流の遮断に工夫が行われている。

解説の冒頭【短所】④より、高電圧、大電流の直接遮断が困難なので、遮断器は交流側に設けられます。

なのでこの記述は正しいです。

選択肢5. 一般に、直流送電系統の地絡事故時の電流は、交流送電系統に比べ小さいため、がいしの耐アーク性能が十分な場合、がいし装置からアークホーンを省くことができる。

アークホーンはがいしの耐アーク性が十分に耐えうる場合は、がいし装置から省略する事ができます。直流送電系統では、事故時の地絡電流が交流系統と比較すると小さい為、記述通り省く事ができます。

よってこの記述は正しいです。

まとめ

この問題はかなり専門的な知識を問われている印象があります。初見ではなかな厳しいと思われますのでまずは交直送電方式のメリット・デメリットだけ覚えるだけでもよろしいかと思います。

参考になった数2

03

1. 正しい記述です。直流送電系統は、長距離・大容量送電に有利です。

2. 誤った記述です。自励式交直変換装置と他励式交直変換装置の説明が反対になっています。

3. 正しい記述です。直流送電系統では、地中埋設物の電食や直流磁界に伴う地磁気測定への影響に注意する必要があります。

4. 正しい記述です。直流送電系統は、交流送電系統のように電流ゼロ点が存在しないため、事故電流を遮断器により遮断することが困難です。

5. 正しい記述です。直流送電系統の地絡事故時の電流は、交流送電系統に比べ小さいため、がいしの耐アーク性能が十分な場合、がいし装置からアークホーンを省くことができる。

よって、この問題の正解は【2】となります。

参考になった数2

04

選択肢【1】

正しい記述です。直流送電系統はリアクタンスの影響を受けない為、長距離・大容量送電に有利です。

選択肢【2】

自励式交直変換装置と他励式交直変換装置の説明が反対になっています。これが間違いです。

選択肢【3】

正しい記述です。直流送電系統では、地中埋設物の電食や地磁気測定への影響に注意しなければなりません。

選択肢【4】

正しい記述です。直流は電流が周期的に0となりません。一方、交流は周期的に電流が0になるので遮断しやすいです。

選択肢【5】

正しい記述です。地絡事故時の電流は交流より直流の方が小さいため、がいしの耐アーク性能が十分な場合、がいし装置からアークホーンを省くことができます。

以上により、選択肢【2】が正解となります。

参考になった数2