大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問21 (世界史B(第5問) 問1)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問21(世界史B(第5問) 問1) (訂正依頼・報告はこちら)

歴史の研究において、ある地域や国の歴史をどのような視点から捉えるかは重要である。それについて述べた次の文章Aを読み、後の問いに答えよ。

A 中国史の講義を受けた大学1年生と教授とが会話をしている。
学生:高校までの学習を振り返ると、日本やヨーロッパの歴史では、古代や中世などの時代について、それぞれの時代の特徴を捉えるように心掛けていました。一方、中国史では、古代や中世などのように、時代を明確にしないまま学んでいたように感じるのですが、そもそも中国史には、時代に関する決まった分け方があるのですか。
教授:中国史の時代区分に関しては、日本でもかつて盛んに議論されたことがありました。次の資料1・2は、いずれも唐から宋への変化について述べた、日本の研究者による考察の概要です。中国王朝の時代区分について、異なる二通りの考え方があることが分かります。

資料1
中世と近世とは、いかなる点において異なるかと言うと、政治上より言えば貴族政治が衰退して君主独裁政治が起こったことである。貴族衰退の結果、高い官職に就くのにも家柄としての特権がなくなり、皇帝の権力によって任命されることとなった。

資料2
中世初期の支配的勢力は、新しいタイプの大地主層新官僚層であった。「佃戸」はこの大地主の土地に縛りつけられ、居住移転の自由を持たず、土地の処分に伴って土地の買い主へ引き渡されることさえある農奴であった。

学生:なるほど。二つのうちの( ア )を根拠として宋を( イ )に区分していますね。
教授:そのとおりです。

Aの文章中の( ア )と( イ )に入れる語句の組合せとして正しいものを、次の選択肢のうちから二つ選べ。
  • ア ― 資料1では、支配階層や土地経営の変化  イ ― 中世
  • ア ― 資料1では、支配階層や土地経営の変化  イ ― 近世
  • ア ― 資料1では、統治体制の変化  イ ― 中世
  • ア ― 資料1では、統治体制の変化  イ ― 近世
  • ア ― 資料2では、支配階層や土地経営の変化  イ ― 中世
  • ア ― 資料2では、支配階層や土地経営の変化  イ ― 近世
  • ア ― 資料2では、統治体制の変化  イ ― 中世
  • ア ― 資料2では、統治体制の変化  イ ― 近世

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題は、中国史の時代区分(中世・近世など)についての異なる学説を読み取り、それぞれの資料がどのような視点で区分しているか(統治体制 or 支配階層・土地制度)および、その視点で宋をどの時代と見ているか(中世 or 近世)を問う内容です。

選択肢1. ア ― 資料1では、支配階層や土地経営の変化  イ ― 中世

資料1は土地経営より統治体制の変化(君主独裁)を重視しています。視点が合っていないです。 誤りです。

選択肢2. ア ― 資料1では、支配階層や土地経営の変化  イ ― 近世

同上。視点が「統治体制」なので、支配階層という言い方は不正確です。誤りです。 

選択肢3. ア ― 資料1では、統治体制の変化  イ ― 中世

資料1は「近世」への移行を示しています。中世ではないです。誤りです。

選択肢4. ア ― 資料1では、統治体制の変化  イ ― 近世

資料1は「貴族政治の衰退と皇帝独裁の強化」に注目しており、これは統治体制の変化に基づいた近世への区分です。正解です。 

選択肢5. ア ― 資料2では、支配階層や土地経営の変化  イ ― 中世

資料2は「大地主層の支配と農奴化」に注目しており、これは中世的封建制度の強調です。正解です。

選択肢6. ア ― 資料2では、支配階層や土地経営の変化  イ ― 近世

資料2の内容は中世的(封建的関係)なので、時代区分が不適切です。誤りです。

選択肢7. ア ― 資料2では、統治体制の変化  イ ― 中世

資料2は支配階層や農民の地位に注目しており、統治体制には直接触れていないです。誤りです。

選択肢8. ア ― 資料2では、統治体制の変化  イ ― 近世

資料2は政治体制ではなく、経済的身分制を扱っています。時代区分も誤りです。誤りです。

まとめ

覚えるべきポイント

皇帝の権力が強くなったら近世

農民が縛られていたら中世

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02

【資料1について】

「貴族政治が衰退し、君主独裁が起こった」
統治体制の変化を重視、つまり、政治の仕組みの変化に注目している。

そして、君主独裁(皇帝の権力強化)=近世的な支配とみなす考え方です。

 

【資料2について】

「新しい大地主層・新官僚層」「佃戸が土地に縛られる(農奴化)」
→ これは支配階層や土地経営の変化を重視しています。

そして、農奴制的な支配が進む時代を、一般に「中世」としています。

選択肢1. ア ― 資料1では、支配階層や土地経営の変化  イ ― 中世

資料1は「統治体制の変化」であり、「中世」ではありません。

選択肢2. ア ― 資料1では、支配階層や土地経営の変化  イ ― 近世

支配階層ではなく、統治体制です。

選択肢3. ア ― 資料1では、統治体制の変化  イ ― 中世

統治体制は正しいですが、「中世」ではなく「近世」です。

選択肢4. ア ― 資料1では、統治体制の変化  イ ― 近世

正しい組み合わせのため【正解】です。

選択肢5. ア ― 資料2では、支配階層や土地経営の変化  イ ― 中世

正しい組み合わせのため【正解】です。

選択肢6. ア ― 資料2では、支配階層や土地経営の変化  イ ― 近世

土地経営の変化は合っていますが、時代は「中世」です。

選択肢7. ア ― 資料2では、統治体制の変化  イ ― 中世

統治体制ではありません。

選択肢8. ア ― 資料2では、統治体制の変化  イ ― 近世

どちらも違います。

まとめ

資料1では、唐から宋への変化を「貴族政治から皇帝独裁政治への変化」という統治体制の観点で捉え、宋を「近世」に区分しています。
一方、資料2では、「大地主層と農奴化した佃戸」という支配階層と土地経営の観点から中世的特徴を捉え、宋を「中世」に区分しています。

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