大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和6年度(2024年度)本試験
問36 (日本史B(第1問) 問3)
問題文
印刷とは、墨などを塗った版を紙や布に押し付け、同じ文章や図像を複製する技術である。
日本最古の印刷物とされるのは、8世紀に作られた「百万塔陀羅尼」(写真1)である。『続日本紀』によると、a 光明皇太后と結びついて権力を握り太政大臣に相当する地位に就いた人物による兵乱が平定された後、木製の三重の小塔が100万基作られ、そのなかに陀羅尼経(仏典)が納められたという。
中世に入ると、京都や鎌倉の寺院などで印刷が行われる一方、中国大陸や朝鮮半島で印刷された書物が輸入された。仏典を集大成した大蔵経を日本側が朝鮮国王に求めた事例などからは、印刷物を通じたb 日本と朝鮮半島との交流を知ることができる。
印刷に使用する紙については、7世紀に朝鮮半島より製法が伝わったとされ、8世紀には律令体制のもとで地方でも生産された。中世になると、c 各地で生産された紙が商人によって運ばれ、広く流通していった。
下線部cに関連して、次の史料1・2は紙などの物資流通を担っていた商人に対して出された命令である。この史料1・2の内容について述べた後の文X・Yについて、その正誤の組合せとして正しいものを、後のうちから一つ選べ。
史料1 戦国大名六角氏の命令
紙商売の事、石寺新市(注1)の儀は楽市たるの条、是非に及ぶべからず(注2)。
濃州ならびに当国中(注3)の儀は、座人の外(ほか)商売せしむるにおいては、見相(みあい)(注4)に荷物押さえ置き注進致すべし。
(「今堀日吉神社文書」)
(注1)石寺新市:戦国大名六角氏の居城である近江国観音寺城の城下町。
(注2)是非に及ぶべからず:あれこれと議論してはならない。
(注3)濃州ならびに当国中:美濃国と近江国。ここでは近江国の石寺新市は含まれない。
(注4)見相:見かけること。見つけること。
史料2 織田信長の命令
大滝神郷(注5)紙座の事
一 上は木目を境、下は浅水の橋を境、東は境目、西は海端を境、前々の如(ごと)く諸役あるべからず。
(「大滝神社文書」)
(注5)大滝神郷:越前国大滝神社の所領。
X 史料1によると、六角氏が治める近江国・美濃国には楽市令が出され、座の特権を強要しようとする商人の荷物は没収されることになっていた。
Y 史料2によると、織田信長は、大滝神郷紙座が越前国内に有していた税免除の特権を撤廃した。

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問題
大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和6年度(2024年度)本試験 問36(日本史B(第1問) 問3) (訂正依頼・報告はこちら)
印刷とは、墨などを塗った版を紙や布に押し付け、同じ文章や図像を複製する技術である。
日本最古の印刷物とされるのは、8世紀に作られた「百万塔陀羅尼」(写真1)である。『続日本紀』によると、a 光明皇太后と結びついて権力を握り太政大臣に相当する地位に就いた人物による兵乱が平定された後、木製の三重の小塔が100万基作られ、そのなかに陀羅尼経(仏典)が納められたという。
中世に入ると、京都や鎌倉の寺院などで印刷が行われる一方、中国大陸や朝鮮半島で印刷された書物が輸入された。仏典を集大成した大蔵経を日本側が朝鮮国王に求めた事例などからは、印刷物を通じたb 日本と朝鮮半島との交流を知ることができる。
印刷に使用する紙については、7世紀に朝鮮半島より製法が伝わったとされ、8世紀には律令体制のもとで地方でも生産された。中世になると、c 各地で生産された紙が商人によって運ばれ、広く流通していった。
下線部cに関連して、次の史料1・2は紙などの物資流通を担っていた商人に対して出された命令である。この史料1・2の内容について述べた後の文X・Yについて、その正誤の組合せとして正しいものを、後のうちから一つ選べ。
史料1 戦国大名六角氏の命令
紙商売の事、石寺新市(注1)の儀は楽市たるの条、是非に及ぶべからず(注2)。
濃州ならびに当国中(注3)の儀は、座人の外(ほか)商売せしむるにおいては、見相(みあい)(注4)に荷物押さえ置き注進致すべし。
(「今堀日吉神社文書」)
(注1)石寺新市:戦国大名六角氏の居城である近江国観音寺城の城下町。
(注2)是非に及ぶべからず:あれこれと議論してはならない。
(注3)濃州ならびに当国中:美濃国と近江国。ここでは近江国の石寺新市は含まれない。
(注4)見相:見かけること。見つけること。
史料2 織田信長の命令
大滝神郷(注5)紙座の事
一 上は木目を境、下は浅水の橋を境、東は境目、西は海端を境、前々の如(ごと)く諸役あるべからず。
(「大滝神社文書」)
(注5)大滝神郷:越前国大滝神社の所領。
X 史料1によると、六角氏が治める近江国・美濃国には楽市令が出され、座の特権を強要しようとする商人の荷物は没収されることになっていた。
Y 史料2によると、織田信長は、大滝神郷紙座が越前国内に有していた税免除の特権を撤廃した。

- X:正 Y:正
- X:正 Y:誤
- X:誤 Y:正
- X:誤 Y:誤
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この過去問の解説 (1件)
01
正しい選択肢は、「X:誤 Y:誤」 です。
紙座に対する六角氏・織田信長の命令を読むと、六角氏は石寺新市だけを楽市とし、それ以外では「座外」の商人を取り締まっています。
また信長は大滝神郷紙座の免税特権を維持する内容を示しています。
【各文の内容】
X
命令は「石寺新市は楽市だから議論するな」とする一方、近江・美濃の他地域では座人以外の商売を見つけたら荷物を押さえ報告せよと指示しています。
つまり楽市は石寺新市だけで、近江・美濃全域ではありません。
没収対象も座人ではなく座外商人です。
よって誤りです。
Y
信長の命令は、大滝神郷紙座の領域を示したうえで「前々のごとく諸役あるべからず」と、従前どおりの免税を認めています。
免税特権を撤廃したという説明は事実と逆です。
よって誤りです。
誤りです。
誤りです。
誤りです。
正しい選択肢です。
史料1は「一部のみ楽市・他は座の特権維持」、史料2は「紙座の免税継続」を示しており、提示されたX・Yの説明はいずれも条件や内容を読み違えています。
したがって 「X:誤 Y:誤」 が正答となります。
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