大学入学共通テスト(国語) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問34 (第4問(漢文) 問7)

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問題

大学入学共通テスト(国語)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問34(第4問(漢文) 問7) (訂正依頼・報告はこちら)

唐の王宮の中に雉(きじ)が集まってくるという事件が何度も続き、皇帝である太宗(たいそう)は何かの前触れではないかと怪しんで、臣下に意見を求めた。以下は、この時に臣下の褚遂良(ちょすいりょう)が出した意見と太宗の反応とに対する批評である。これを読んで、後の問いに答えよ。なお、設問の都合で本文を改め、返り点・送り仮名を省いたところがある。

(注1)秦文公 ―― 春秋時代の諸侯の一人で、秦の統治者。
(注2)陳倉 ―― 地名。現在の陝西(せんせい)省にあった。
(注3)南陽 ―― 地名。現在の河南省と湖北省の境界あたりにあった。
(注4)陛下本封秦 ―― 太宗は即位以前、秦王の位を与えられていた。唐の長安も春秋時代の秦の領地に含まれる。
(注5)上 ―― 太宗。
(注6)陳宝 ―― 童子が変身した雉を指す。
(注7)猶得白魚便自比武王 ―― 周の武王が船で川を渡っていると、白い魚が船中に飛び込んできた故事を踏まえる。その後、武王は殷(いん)を滅ぼして周王朝を開き、白魚は吉兆とされた。
(注8)諂妄 ―― こびへつらうこと。
(注9)愚瞽 ―― 判断を誤らせる。
(注10)史 ―― 史官。歴史書編集を担当する役人。
(注11)魏徴 ―― 太宗の臣下。
(注12)高宗鼎耳之祥 ―― 殷の高宗の祭りの時、鼎(かなえ)(三本足の器)の取っ手に雉がとまって鳴き、これを異変と考えた臣下が王をいさめた故事。後に見える「鼎雊」もこれと同じ。「雊」は雉が鳴くこと。

傍線部D「使魏徴在、必以高宗鼎耳之祥諫也」とあるが、【資料】は、魏徴が世を去ったときに太宗が彼を悼んで述べた言葉である。これを読んで、後の問いに答えよ。

【資料】から、傍線部D「使魏徵在必以高宗鼎耳之祥諫也」と述べられた背景をうかがうことができる。この【資料】を踏まえた傍線部Dの解釈として最も適当なものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。
問題文の画像
  • 鏡が物を客観的に映しだすように、魏徴は太宗に決してうそをつかなかったから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し、事件を誤解している太宗に真実を話しただろう。
  • 鏡で身なりを点検するときのように、魏徴は太宗の言動に目を光らせていたから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し、事件にかこつけて太宗の無知をたしなめただろう。
  • 鏡に映った自分自身であるかのように、魏徴は太宗のことを誰よりも深く理解していたから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し、事件で悩む太宗に同情して慰めただろう。
  • 鏡が物のありのままの姿を映すように、魏徴は太宗に遠慮せず率直に意見するから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し事件を機に太宗に反省するよう促しただろう。
  • 鏡が自分を見つめ直す助けとなるように、魏徴は歴史の知識で太宗を助けてきたから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し、事件にとまどう太宗に知恵を授けただろう。

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この過去問の解説 (2件)

01

【資料】より、魏徴と太宗との関係性を読み解いていきます。
波線部直後の通り、


・魏徴の存在があったので、太宗は過ちを防ぐことができていたと感じている
・魏徴は太宗にとっての鏡だった


とわかります。

また、傍線部D「使魏徴在必以高宗鼎耳之祥諫也」の意味をとってみると、
魏徴がいたなら、「高宗鼎耳之祥」の故事を引用して太宗を諫めただろう
となります。

 

諫める」は「いさめる」と読み、

目上のひとに対して、まちがいや、よくない点を改めるよう忠告すること

を意味します。

以上を踏まえて、選択肢を検討しましょう。

 

選択肢1. 鏡が物を客観的に映しだすように、魏徴は太宗に決してうそをつかなかったから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し、事件を誤解している太宗に真実を話しただろう。

×魏徴は太宗に決してうそをつかなかった
→うそをつかなかったという内容は本文にはありません。


×事件を誤解している太宗に真実を話しただろう
→雉が集まることに対して、太宗は「何かの前触れではないかと怪しんで」はいますが、まだ真実は分かっていません。

 

よって、この選択肢は誤りです。

 

選択肢2. 鏡で身なりを点検するときのように、魏徴は太宗の言動に目を光らせていたから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し、事件にかこつけて太宗の無知をたしなめただろう。

×魏徴は太宗の言動に目を光らせていた
→このような内容は本文には書かれていません。

 

この選択肢は誤りです。
 

選択肢3. 鏡に映った自分自身であるかのように、魏徴は太宗のことを誰よりも深く理解していたから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し、事件で悩む太宗に同情して慰めただろう。

×鏡に映った自分自身であるかのように
→このような内容は本文には書かれていません。

 

×同情して慰めた
→「いさめる」の内容とは合いません。

 

よってこの選択肢は誤りです。

選択肢4. 鏡が物のありのままの姿を映すように、魏徴は太宗に遠慮せず率直に意見するから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し事件を機に太宗に反省するよう促しただろう。

〇反省するよう促しただろう
→「いさめる」の内容と合致しています。


この選択肢が正解です。
 

選択肢5. 鏡が自分を見つめ直す助けとなるように、魏徴は歴史の知識で太宗を助けてきたから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し、事件にとまどう太宗に知恵を授けただろう。

×魏徴は歴史の知識で太宗を助けてきた
→魏徴は「古の鏡」としてではなく、「人の鏡」として書かれているため、
この選択肢は誤りです。
 

まとめ

ことばの意味を正しく理解できているかが問われています。
どのような点から解釈するかを考えましょう。
 

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02

傍線部Dの内容は、魏徵がいたならば、故事のように太宗をいさめただろう、となります。

「いさめる」は、主に目上の人に対して、その過ちや悪い点を指摘し、改めるように忠告することを意味します。

それぞれの選択肢を見て、この内容に合致するものを探してみましょう。

選択肢1. 鏡が物を客観的に映しだすように、魏徴は太宗に決してうそをつかなかったから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し、事件を誤解している太宗に真実を話しただろう。

この時点ではまだ、雉がやってくるという事件が吉兆か異変かは定かでないため、「真実」というのは適切な表現ではありません

また、「魏徴」は「太宗」に対して「過ちや悪い点を指摘」しただろうとありますが、「決してうそをつかなかった」とは書かれていないため、誤りです。

選択肢2. 鏡で身なりを点検するときのように、魏徴は太宗の言動に目を光らせていたから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し、事件にかこつけて太宗の無知をたしなめただろう。

「魏徴は太宗の言動に目を光らせていた」という描写はないため、誤りです。

「事件にかこつけて」という表現も、適切ではありません。

「かこつける」は、関係がないことと強引に関連づけて、口実とすることを意味します。

選択肢3. 鏡に映った自分自身であるかのように、魏徴は太宗のことを誰よりも深く理解していたから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し、事件で悩む太宗に同情して慰めただろう。

「魏徴は太宗のことを」「自分自身であるかのように」思っていたと読み取れる描写はありません

また、「太宗に同情して慰め」ることと「過ちや悪い点を指摘し、改めるように忠告する」ことは矛盾するため、誤りです。

選択肢4. 鏡が物のありのままの姿を映すように、魏徴は太宗に遠慮せず率直に意見するから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し事件を機に太宗に反省するよう促しただろう。

「過ちや悪い点を指摘し、改めるように忠告する」を「反省するよう促し」と言い換えており、内容が合致するため、この選択肢が最も適当なものです。

選択肢5. 鏡が自分を見つめ直す助けとなるように、魏徴は歴史の知識で太宗を助けてきたから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し、事件にとまどう太宗に知恵を授けただろう。

語り手が評価しているのは、「魏徴」が「太宗」に対して、「歴史の知識」で「知恵を授け」られる点にではなく、「過ちや悪い点を指摘し、改めるように忠告する」ことができる点であるため、誤りです。

まとめ

「いさめる」という語句の意味がポイントです。

語り手が「遂良」と比較して「魏徴」を評価しているのはどのような点からなのかを整理して、選択肢を見ていきましょう。

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