大学入学共通テスト(国語) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問35 (第4問(漢文) 問8)
問題文
(注1)秦文公 ―― 春秋時代の諸侯の一人で、秦の統治者。
(注2)陳倉 ―― 地名。現在の陝西(せんせい)省にあった。
(注3)南陽 ―― 地名。現在の河南省と湖北省の境界あたりにあった。
(注4)陛下本封秦 ―― 太宗は即位以前、秦王の位を与えられていた。唐の長安も春秋時代の秦の領地に含まれる。
(注5)上 ―― 太宗。
(注6)陳宝 ―― 童子が変身した雉を指す。
(注7)猶得白魚便自比武王 ―― 周の武王が船で川を渡っていると、白い魚が船中に飛び込んできた故事を踏まえる。その後、武王は殷(いん)を滅ぼして周王朝を開き、白魚は吉兆とされた。
(注8)諂妄 ―― こびへつらうこと。
(注9)愚瞽 ―― 判断を誤らせる。
(注10)史 ―― 史官。歴史書編集を担当する役人。
(注11)魏徴 ―― 太宗の臣下。
(注12)高宗鼎耳之祥 ―― 殷の高宗の祭りの時、鼎(かなえ)(三本足の器)の取っ手に雉がとまって鳴き、これを異変と考えた臣下が王をいさめた故事。後に見える「鼎雊」もこれと同じ。「雊」は雉が鳴くこと。
傍線部E「非忠臣也」とあるが、そのように言われる理由として最も適当なものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。

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問題
大学入学共通テスト(国語)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問35(第4問(漢文) 問8) (訂正依頼・報告はこちら)
(注1)秦文公 ―― 春秋時代の諸侯の一人で、秦の統治者。
(注2)陳倉 ―― 地名。現在の陝西(せんせい)省にあった。
(注3)南陽 ―― 地名。現在の河南省と湖北省の境界あたりにあった。
(注4)陛下本封秦 ―― 太宗は即位以前、秦王の位を与えられていた。唐の長安も春秋時代の秦の領地に含まれる。
(注5)上 ―― 太宗。
(注6)陳宝 ―― 童子が変身した雉を指す。
(注7)猶得白魚便自比武王 ―― 周の武王が船で川を渡っていると、白い魚が船中に飛び込んできた故事を踏まえる。その後、武王は殷(いん)を滅ぼして周王朝を開き、白魚は吉兆とされた。
(注8)諂妄 ―― こびへつらうこと。
(注9)愚瞽 ―― 判断を誤らせる。
(注10)史 ―― 史官。歴史書編集を担当する役人。
(注11)魏徴 ―― 太宗の臣下。
(注12)高宗鼎耳之祥 ―― 殷の高宗の祭りの時、鼎(かなえ)(三本足の器)の取っ手に雉がとまって鳴き、これを異変と考えた臣下が王をいさめた故事。後に見える「鼎雊」もこれと同じ。「雊」は雉が鳴くこと。
傍線部E「非忠臣也」とあるが、そのように言われる理由として最も適当なものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。

- 褚遂良は、事件をめでたい知らせだと解釈して太宗の機嫌を取ったが、忠臣ならば、たとえ主君が不機嫌になるとしても、厳しく忠告して主君をより良い方向へと導くべきだったから。
- 褚遂良は、事件から貴重な教訓を引き出して太宗の気を引き締めたが、忠臣ならば、たとえ主君が緊張を解いてしまうとしても、主君の良い点をほめて主君に自信を持たせるべきだったから。
- 褚遂良は、事件は過去にも例があり珍しくないと説明して太宗を安心させたが、忠臣ならば、たとえ主君が不安を感じるとしても、事件の重大さを強調して主君に警戒させるべきだったから。
- 褚遂良は、事件と似た逸話を知っていたおかげで太宗を感心させたが、忠臣ならば、たとえ主君から聞かれていないとしても、普段から勉強して主君の求めに備えておくべきだったから。
- 褚遂良は、事件の実態を隠し間違った報告をして太宗の注意をそらしたが、忠臣ならば、たとえ主君から怒られるとしても、本当のことを伝えて主君に事実を教えるべきだったから。
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この過去問の解説 (2件)
01
傍線部Eを含む一文の意味をとってみましょう。
「遂良は(雉が来るのを異変と捉えた)高宗鼎耳祥の故事を知らないはずがないのにも関わらず、
(そうとは解釈せずに)陳宝(吉兆とする見方)を取った。
これは忠臣とは言えない」
となります。
筆者は、
・遂良の意見は、太宗にこびへつらうもので良くない
・魏徴なら、太宗を諫めただろう
と考えている
ことが分かります。
それでは選択肢の検討に移りましょう。
〇
遂良のやり方と、魏徴に対する考え方それぞれに合致します。
この選択肢が正解です。
×遂良は、事件から貴重な教訓を引き出して太宗の気を引き締めた
→筆者は太宗にこびへつらう遂良の意見を批判的にみているため、誤りです。
×主君の良い点をほめて主君に自信を持たせるべき
→このような内容は本文にはありません。
以上より、この選択肢は誤りです。
×遂良は、事件は過去にも例があり珍しくないと説明して太宗を安心させた
→遂良は、太宗にこびへつらうために意見したのであり、安心させる目的ではありませんでした。
遂良の意見を正しく解釈できているとは言えないため、この選択肢は誤りです。
×普段から勉強して主君の求めに備えておくべき
→このような内容は本文には書かれていません。
この選択肢は誤りです。
×事件の実態を隠し間違った報告をして太宗の注意をそらした
→「実態を隠し」たわけではないため、この選択肢は誤りです。
これまでの内容を踏まえた、全体の総括となるような問いでした。
それぞれの臣下の見方やそれに対する筆者の解釈を正確に押さえて考えましょう。
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02
この大問のまとめとなる設問です。
ここまでの問いで明らかになった点を整理してみます。
・太宗は、白魚を吉兆とした故事のように雉を宝とした遂良の意見を称賛し、「人は学のないものであってはいけない。遂良は知識豊富な賢い者である。」と言った。
・語り手は、遂良の意見について、太宗にこびへつらうものだと批判しており、雉が理由もなくたびたび宮に入ってくることは災異であるだと思っている。
・鏡が物のありのままの姿を映すように、魏徴は太宗に遠慮せず率直に意見するから、彼なら「高宗鼎耳」の故事を引用し事件を機に太宗に反省するよう促しただろう、と語り手は考えている。
これらの点をふまえて、選択肢を見てみましょう。
「こびへつらう」を「機嫌を取」る、「太宗に反省するよう促し」を「厳しく忠告して主君をより良い方向へと導く」とそれぞれ言い換えており、これまでの内容と合致するため、これが最も適当なものです。
「遂良は……太宗の気を引き締めた」は、「こびへつら」う「遂良」を「太宗」が「称賛」したことと矛盾するため、誤りです。
「主君に自信を持たせるべき」ということも本文では述べられていません。
「遂良」は「白魚を吉兆とした故事のように雉を宝とし」ましたが、これは「太宗」に「こびへつら」うためであり、「過去にも例があり珍しくないと説明して太宗を安心させ」るためではないため、誤りです。
本文では「主君から聞かれていないとしても……求めに備えておくべき」ということは述べられていないため,誤りです。
「遂良」は「こびへつら」う意見を述べましたが、それは「事件の実態を隠し……注意をそら」すためではないので、誤りです。
大問の最後の問いでは、その文章の中核となる点について問われることが多いです。
今回の文章で最も重要なポイントは、「たとえ主君が不機嫌になるとしても、厳しく忠告して主君をより良い方向へと導くべき」という語り手の臣下に対する考えです。
これまでの問いを振り返り、内容を整理したうえで解きましょう。
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