大学入学共通テスト(国語) 過去問
令和5年度(2023年度)追・再試験
問39 (第4問(漢文) 問9)

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問題

大学入学共通テスト(国語)試験 令和5年度(2023年度)追・再試験 問39(第4問(漢文) 問9) (訂正依頼・報告はこちら)

次の【文章Ⅰ】は、江戸末期の儒学者安積艮斎(あさかごんさい)が書いたアメリカ合衆国初代大統領ワシントンの伝記「話聖東(ワシントン)伝」の一節であり、【文章Ⅱ】は、宋代の儒学者范祖禹(はんそう)が君主の道について述べた文章の一節である。なお、設問の都合で返り点・送り仮名を省いたところがある。

次に示すのは、【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】を読んだ後に、教師と二人の生徒が交わした会話の様子である。これを読んで、後の問いに答えよ。

教師:【文章Ⅰ】の安積艮斎「話聖東伝」は、森鷗外(もりおうがい)の作品『渋江抽斎(しぶえちゅうさい)』においても言及されています。渋江抽斎は、江戸末期の医者であり漢学者でもあった人物です。抽斎はもとは西洋に批判的だったのですが、「話聖東伝」を読んで考えを改め、西洋の言語を自分の子に学ばせるようにと遺言しました。鷗外によれば、「話聖東伝」の中でも抽斎がとりわけ気に入ったのは、後の【資料】の一節だったようです。
教師:「戎羯」は異民族といった意味です。この【資料】で艮斎はどのようなことを言っていますか。
生徒A:( a )。ワシントンに対する【資料】のような見方が、抽斎の考えを変えたのでしょう。
生徒B:なぜ、【資料】のようにワシントンは評価されているのでしょうか。
教師:【文章Ⅱ】の『性理大全』の一節は、儒学の伝統的な君主像を示しています。【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】には似ているところがありますね。
生徒A:( b )。
生徒B:( c )。「話聖東伝」を通じて、抽斎は立派な為政者が西洋にいたことを知り、感動したのですね。
教師:このように漢文の教養は、西洋文化を受容する際の土台になったわけです。面白いと思いませんか。

空欄( b )・( c )に入る発言の組合せとして最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。
問題文の画像
  • b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが人々から反発されても動じなかったことを述べていますね
    c:それは、【文章Ⅱ】のどのような出来事にも信念を曲げない儒学の伝統的な君主像に重なります
  • b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが法律を整備して国を安定させたことを述べていますね
    c:それは、【文章Ⅱ】の個人の力より制度を重視する儒学の伝統的な君主像に重なります
  • b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが信頼する部下に自分の地位を譲ったことを述べていますね
    c:それは、【文章Ⅱ】の権力や名誉に執着しない儒学の伝統的な君主像に重なります
  • b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが政策の意図を率直に文章で示したことを述べていますね
    c:それは、【文章Ⅱ】の人々に対して誠実に向き合う儒学の伝統的な君主像に重なります
  • b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが優れた人材を登用し、政務に参与させたことを述べていますね
    c:それは、【文章Ⅱ】の公正な心で賢人と協力する儒学の伝統的な君主像に重なります

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この過去問の解説 (2件)

01

【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】の文章全体の内容を理解している必要があります。
選択肢を見ると、
【文章Ⅰ】からワシントンの政治や部下についてと、
【文章Ⅱ】から読み取れる儒学の伝統的な君主像についてが問われていることが分かります。
以上のことを踏まえて各選択肢を検討していきましょう。

選択肢1. b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが人々から反発されても動じなかったことを述べていますね
c:それは、【文章Ⅱ】のどのような出来事にも信念を曲げない儒学の伝統的な君主像に重なります

「ワシントンが人々から反発されても動じなかった」という部分が不適です。
【文章Ⅰ】にワシントンが動じなかったという話はありません。

選択肢2. b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが法律を整備して国を安定させたことを述べていますね
c:それは、【文章Ⅱ】の個人の力より制度を重視する儒学の伝統的な君主像に重なります

「制度を重視する」という部分が不適です。
【文章Ⅱ】は君主は心が清い状態が理想であることや一人では不十分な働きになるという内容はありますが、
制度を重視するべきという内容はありません。

選択肢3. b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが信頼する部下に自分の地位を譲ったことを述べていますね
c:それは、【文章Ⅱ】の権力や名誉に執着しない儒学の伝統的な君主像に重なります

「権力や名誉に執着しない」という部分が不適です。
【文章Ⅱ】は君主は心が清い状態が理想であることや一人では不十分な働きになるという内容はありますが、
権力や名誉への執着に関する内容はありません。

選択肢4. b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが政策の意図を率直に文章で示したことを述べていますね
c:それは、【文章Ⅱ】の人々に対して誠実に向き合う儒学の伝統的な君主像に重なります

「ワシントンが政策の意図を率直に文章で示した」という部分が不適です。
「文章の執筆に習熟している」という内容はありますが、
その主語はハミルトンでありワシントンではありません。

選択肢5. b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが優れた人材を登用し、政務に参与させたことを述べていますね
c:それは、【文章Ⅱ】の公正な心で賢人と協力する儒学の伝統的な君主像に重なります

適切です。
「優れた人材」とはハミルトンのことです。
【文章Ⅰ】でハミルトンの能力を挙げた後に「話聖東之を挙げて政事を参決せしむ」とあり、
ワシントンはこれらの能力があることを理由にハミルトンを政治に参加させたという内容であることが分かります。


「公正な心」は【文章Ⅱ】に「人君必ず心を清めて」とあるため適切です。
「賢人と協力する」は「苟も誠を以て賢と与にせずして其の独智を役して以て天下に先だてば、耳目心志の及ぶ所の者、其れ能く幾何ぞ。」という部分から読み取れます。


「賢人と協力せずに一人で天下を治めようとすれば、君主の見聞や思慮が及ぶ範囲は決して広くない。」という内容です。
そこから賢人とは賢人と協力した方が良いという結論になります。

まとめ

本文の全体的な内容を理解している必要があったため、
難しい問題でした。
しかし、
これまでの漢文の他の設問や選択肢から分かる内容も多いため、
この問題以外の問題の対策をすれば、
自ずとこの問題も解けるようになると思います。

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02

文章Ⅰと文章Ⅱを全体的に訳すことができてかつ了解できていないと難しい問題ですが、それでもポイントとなる文はあります。

 

文章Ⅰの方は、「巴爾東…」から「参決政事」までの部分で、

「ハミルトンが才能と見識があり、文章に慣れていて、政治の要点に通じているため、ワシントンはハミルトンを挙げて(ここでは「推挙」などの意味でしょうか)、政治に参加させていた。」となります。

 

文章Ⅱは重要な部分は全体に及んでいますが、特に「人君以…」から「幾何」までの大意をつかめるかどうかが重要です。

「君主は一人の身で広い天下を治め、あらゆる人に対応しなければならない。もし仮に誠実に、他の賢臣と共に仕事を行わないとして、己一人の知で仕事をしようと天下に率先して立つようなことがあれば、その耳目や心が及ぶ範囲はいったいどれくらいであろうか」くらいの訳ができれば良いと思います。

 

これらの内容を不足なく示しているのは

bの方が「ワシントンが優れた人材を登用し、政務に参与させた」と書いてあるもの、

また、cの方は「公正な心で賢人と協力する儒学の伝統的な君主像に重なります」と書いてある選択肢が正解です。

選択肢1. b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが人々から反発されても動じなかったことを述べていますね
c:それは、【文章Ⅱ】のどのような出来事にも信念を曲げない儒学の伝統的な君主像に重なります

bの発言である「ワシントンが人々から反発されても動じなかった」という部分は文章Ⅰには書いてありません。

また、cの発言としての「どのような出来事にも信念を曲げない」という部分も、文章Ⅱにはそう読み取れる箇所はないため、不適です。

選択肢2. b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが法律を整備して国を安定させたことを述べていますね
c:それは、【文章Ⅱ】の個人の力より制度を重視する儒学の伝統的な君主像に重なります

bの発言の「ワシントンが法律を整備して国を安定させた」という内容は、文章Ⅰには特にありません。

cの発言の「個人の力より制度を重視する」という部分は、自分一人ではなく他と協力するという意味では完全に誤りとは言えないかもしれません。しかし、賢い人と協力することを「制度を重視」と読むのは相当強引な解釈ではありますので、やはり不適です。

選択肢3. b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが信頼する部下に自分の地位を譲ったことを述べていますね
c:それは、【文章Ⅱ】の権力や名誉に執着しない儒学の伝統的な君主像に重なります

bの発言にある「信頼する部下に自分の地位を譲った」という内容は文章Ⅰにはありません。「深自韜晦」のように、任を終えた後のワシントンは故郷で隠棲したことは示されていますが、部下に位を譲ったとはないため、誤りです。

cの発言の「権力や名誉に執着しない」も文章Ⅰのワシントンに対して言うのであれば概ね当てはまるかもしれませんが、cは文章Ⅱのことを述べていますのでやはり不適です。

選択肢4. b:【文章Ⅰ】は、ワシントンが政策の意図を率直に文章で示したことを述べていますね
c:それは、【文章Ⅱ】の人々に対して誠実に向き合う儒学の伝統的な君主像に重なります

bの発言の「政策の意図を率直に文章で示した」という内容は本文にないため、誤りです。文章のことはハミルトンのことを述べる部分としてありますが、ワシントンに対しての説明ではありません。

cの発言である「人々に対して誠実に向き合う」は全体を通しての内容としては間違っているとも言えないですが、具体的に本文のどの部分のことを踏まえてなのかが不明瞭です。

まとめ

本文全体を読解するという当たり前の作業を素早く行うことが重要です。ただ、本文全体を読解するには結局は一文一文を正確に読むことが土台となりますので、当たり前のことを淡々とこなせるように基礎的な句法や語彙の暗記を徹底しましょう。

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