大学入学共通テスト(国語) 過去問
令和5年度(2023年度)追・再試験
問38 (第4問(漢文) 問8)
問題文
次に示すのは、【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】を読んだ後に、教師と二人の生徒が交わした会話の様子である。これを読んで、後の問いに答えよ。
教師:【文章Ⅰ】の安積艮斎「話聖東伝」は、森鷗外(もりおうがい)の作品『渋江抽斎(しぶえちゅうさい)』においても言及されています。渋江抽斎は、江戸末期の医者であり漢学者でもあった人物です。抽斎はもとは西洋に批判的だったのですが、「話聖東伝」を読んで考えを改め、西洋の言語を自分の子に学ばせるようにと遺言しました。鷗外によれば、「話聖東伝」の中でも抽斎がとりわけ気に入ったのは、後の【資料】の一節だったようです。
教師:「戎羯」は異民族といった意味です。この【資料】で艮斎はどのようなことを言っていますか。
生徒A:( a )。ワシントンに対する【資料】のような見方が、抽斎の考えを変えたのでしょう。
生徒B:なぜ、【資料】のようにワシントンは評価されているのでしょうか。
教師:【文章Ⅱ】の『性理大全』の一節は、儒学の伝統的な君主像を示しています。【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】には似ているところがありますね。
生徒A:( b )。
生徒B:( c )。「話聖東伝」を通じて、抽斎は立派な為政者が西洋にいたことを知り、感動したのですね。
教師:このように漢文の教養は、西洋文化を受容する際の土台になったわけです。面白いと思いませんか。
空欄( a )に入る発言として最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。

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問題
大学入学共通テスト(国語)試験 令和5年度(2023年度)追・再試験 問38(第4問(漢文) 問8) (訂正依頼・報告はこちら)
次に示すのは、【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】を読んだ後に、教師と二人の生徒が交わした会話の様子である。これを読んで、後の問いに答えよ。
教師:【文章Ⅰ】の安積艮斎「話聖東伝」は、森鷗外(もりおうがい)の作品『渋江抽斎(しぶえちゅうさい)』においても言及されています。渋江抽斎は、江戸末期の医者であり漢学者でもあった人物です。抽斎はもとは西洋に批判的だったのですが、「話聖東伝」を読んで考えを改め、西洋の言語を自分の子に学ばせるようにと遺言しました。鷗外によれば、「話聖東伝」の中でも抽斎がとりわけ気に入ったのは、後の【資料】の一節だったようです。
教師:「戎羯」は異民族といった意味です。この【資料】で艮斎はどのようなことを言っていますか。
生徒A:( a )。ワシントンに対する【資料】のような見方が、抽斎の考えを変えたのでしょう。
生徒B:なぜ、【資料】のようにワシントンは評価されているのでしょうか。
教師:【文章Ⅱ】の『性理大全』の一節は、儒学の伝統的な君主像を示しています。【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】には似ているところがありますね。
生徒A:( b )。
生徒B:( c )。「話聖東伝」を通じて、抽斎は立派な為政者が西洋にいたことを知り、感動したのですね。
教師:このように漢文の教養は、西洋文化を受容する際の土台になったわけです。面白いと思いませんか。
空欄( a )に入る発言として最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。

- 「異民族の出身ではあるけれども」とあるように、艮斎は西洋の人々に対する偏見から完全に脱却していたわけではないものの、ワシントンの人柄には称賛に値する点があると言っています
- 「異民族の生まれだと言うものもいるが」とあるように、艮斎はワシントンの出自をあげつらう人々を念頭に置いて、そのような人々よりもワシントンの方が立派な人物であると言っています
- 「異民族に生まれていながらも」とあるように、艮斎はワシントンが西洋人であることを否定的に見る一方で、ワシントンの政策には肯定的に評価すべき面があると言っています
- 「異民族の出自であることを問わずに」とあるように、艮斎は欧米と東アジアの人々を対等であると認識し、ワシントンの人生はあらゆる人々にとって学ぶべきものであると言っています
- 「異民族の出身でなかったとしても」とあるように、艮斎は欧米と東アジアを区別しない観点に立ち、ワシントンの統治の方法にはどのような国でも賛同する人が多いであろうと言っています
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この過去問の解説 (2件)
01
【資料】の文章は送り仮名が省かれているため、
順番だけを正しく並び替えて読んでいきます。
「戎羯」は、
その後に「生」という字があることから、
全ての選択肢にある「異民族」を意味する漢字であると推測できます。
「雖」は「いへども」と読み、
「たとえ~だとしても」という逆説の意味です。
以上のことを踏まえて各選択肢を検討していきましょう。
適切です。
「雖」の解釈が正しい文章になっています。
また、
【資料】のその後の文章に「人為」とあり、
「人と為り」と読んで「人柄」を意味していると考えられるため、
「人柄には称賛に値する点がある」という部分も正しいと推測できます。
「そのような人々よりもワシントンの方が立派な人物である」という部分が不適です。
比較の表現が【資料】にはありません。
「ワシントンの政策には肯定的に評価すべき面がある」という部分が不適です。
ワシントンの政策について【資料】で言及されていません。
「異民族の出自であることを問わずに」という部分が不適です。
「問わずに」は「雖」の意味と異なります。
「異民族の出身でなかったとしても」という部分が不適です。
【資料】は「異民族の出身だとしても」という意味です。
「異民族の出身でない」という仮定の話はしていません。
「雖」の意味を知っていれば、
簡単に解ける問題だったと思います。
こういった問題に出やすい漢字の意味を覚えていきましょう。
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02
正解を導く上では「雖生於戎羯」の解釈がカギとなります。
「雖」は「いへどモ」と読んで、譲歩の意味を表します。
そして仮定条件の場合は「たとえ~しても」、
確定条件の場合は「~するが、~ではあるが」と訳します。
また「戎羯」はどちらも異民族を指す際に使われた漢字です。黄河流域から見て西側の異民族を西戎と称していましたし、五胡十六国の五胡の一つに羯があります。
これらから、「異民族の出身ではあるけれども」と訳している選択肢が正解です。
また、補足ですが「其為人」は「そのひととなり」と読めるので、その部分の訳も参考となるはずです。
「異民族の生まれだと言うものもいるが」は「言うものもいるが」の部分は「雖」を直接に訳しすぎている感があります。
ただ、これではまだ誤答かどうか判断に悩む程度ですので、その続きを読みます。
すると、「そのような人々よりも」とありますが、このような比較をしている解釈は読み取れません。よって不適です。
「異民族に生まれていながらも」の「いながらも」という訳は「雖」の基本的訳からはやや外れています。
ただし、意訳と言えなくもない程度とも言えますので、続きを読みます。
すると、「ワシントンの政策」とありますが、「政策」を表す言葉はありませんので、不適です。
「異民族の出自であることを問わずに」の「問わずに」の部分は、明らかに「雖」の訳には不適です。
「異民族の出身でなかったとしても」の「なかったとしても」の部分は、「雖」の訳としては不適です。
問題文に送り仮名がついていないことからも、この「雖」の漢字だけを見て、現代誤訳をすぐに思い出すことを求めている問題です。
基本的な句法ですので、まだ覚えていない人はこの問題で覚えてしまいましょう。
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