大学入学共通テスト(国語) 過去問
令和6年度(2024年度)本試験
問38 (第4問(漢文) 問8)
問題文
(注1)華清宮 ―― 都長安の郊外にある、驪山(りざん)の温泉地に造営された離宮。
(注2)繡成堆 ―― 綾絹(あやぎぬ)を重ねたような驪山の山容の美しさをいう。
(注3)次第 ―― 次々と。
(注4)紅塵 ―― 砂煙。
(注5)妃子 ―― 楊貴妃(ようきひ)のこと。唐の皇帝玄宗(げんそう)(685―762)の妃(きさき)。
(注6)茘枝 ―― 果物のライチ。中国南方の特産物。
(注7)『天宝遺事』 ―― 唐の天宝年間(742―756)の逸話を集めた書。王仁裕(おうじんゆう)著。
(注8)涪州 ―― 中国南方の地名。
(注9)馬逓 ―― 早馬の中継による緊急輸送。公文書を運ぶのが本来の目的。
(注10)『畳山詩話』 ―― 詩の解説・批評や詩人の逸話を載せた書。謝枋得(しゃぼうとく)著。
(注11)明皇 ―― 玄宗を指す。
(注12)『遯斎閑覧』 ―― 学問的なテーマで書かれた随筆集。陳正敏(ちんせいびん)著。
(注13)唐紀 ―― 唐の時代についての歴史記録。
(注14)『甘沢謡』 ―― 唐の逸話を集めた書。袁郊(えんこう)著。
(注15)誕辰 ―― 誕生日。
(注16)駕 ―― 皇帝の乗り物。
(注17)小部音声 ―― 唐の宮廷の少年歌舞音楽隊。
(注18)長生殿 ―― 華清宮の建物の一つ。
(注19)南海 ―― 南海郡のこと。中国南方の地名。
【資料】をふまえた【詩】の鑑賞として最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。

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問題
大学入学共通テスト(国語)試験 令和6年度(2024年度)本試験 問38(第4問(漢文) 問8) (訂正依頼・報告はこちら)
(注1)華清宮 ―― 都長安の郊外にある、驪山(りざん)の温泉地に造営された離宮。
(注2)繡成堆 ―― 綾絹(あやぎぬ)を重ねたような驪山の山容の美しさをいう。
(注3)次第 ―― 次々と。
(注4)紅塵 ―― 砂煙。
(注5)妃子 ―― 楊貴妃(ようきひ)のこと。唐の皇帝玄宗(げんそう)(685―762)の妃(きさき)。
(注6)茘枝 ―― 果物のライチ。中国南方の特産物。
(注7)『天宝遺事』 ―― 唐の天宝年間(742―756)の逸話を集めた書。王仁裕(おうじんゆう)著。
(注8)涪州 ―― 中国南方の地名。
(注9)馬逓 ―― 早馬の中継による緊急輸送。公文書を運ぶのが本来の目的。
(注10)『畳山詩話』 ―― 詩の解説・批評や詩人の逸話を載せた書。謝枋得(しゃぼうとく)著。
(注11)明皇 ―― 玄宗を指す。
(注12)『遯斎閑覧』 ―― 学問的なテーマで書かれた随筆集。陳正敏(ちんせいびん)著。
(注13)唐紀 ―― 唐の時代についての歴史記録。
(注14)『甘沢謡』 ―― 唐の逸話を集めた書。袁郊(えんこう)著。
(注15)誕辰 ―― 誕生日。
(注16)駕 ―― 皇帝の乗り物。
(注17)小部音声 ―― 唐の宮廷の少年歌舞音楽隊。
(注18)長生殿 ―― 華清宮の建物の一つ。
(注19)南海 ―― 南海郡のこと。中国南方の地名。
【資料】をふまえた【詩】の鑑賞として最も適当なものを、次のうちから一つ選べ。

- 驪山の華清宮を舞台に、開放される宮殿の門、公文書を急送するはずの早馬、楊貴妃の笑みと、謎めいた描写が連ねられたうえで、それらが常軌を逸した茘枝の輸送によるものであったことが明かされる。事実無根の逸話をあえて描き、玄宗が政治を怠り宮殿でぜいたくに過ごしていたことへの憤慨をぶちまけている。
- 驪山の遠景から華清宮の門、駆け抜ける早馬へと焦点が絞られ、視点は楊貴妃の笑みに転じる。笑みをもたらしたのは不適切な手段で運ばれる茘枝であった。事実かどうか不明な部分があるものの、玄宗と楊貴妃の逸話を巧みに用い、玄宗が為政者の道を踏み外して楊貴妃に対する情愛に溺れたことを慨嘆している。
- 驪山の山容や宮殿の門の配置を詳しく描き、早馬が上げる砂煙や楊貴妃の笑みなどの細部も見逃さない。早馬がもたらすであろう茘枝についても写実的に描写している。玄宗と楊貴妃に関する事実を巧みに詠み込んでおり、二人が華清宮でどのような生活を送っていたかについての歴史的知識を提供している。
- 美しい驪山に造営された華清宮の壮麗さを背景に、一人ほほ笑む楊貴妃の艶やかさが印象的に描かれたうえで、ほほ笑みをもたらした茘枝の希少性について語られる。事実かどうかわからないことを含むものの、玄宗が天下のすべてを手に入れて君臨していたことへの感嘆を巧みに表現している。
- 驪山に建つ宮殿の門は後景に退き、ほほ笑む楊貴妃の眼中には一騎の早馬しかない。早馬がもたらそうとしているのは、玄宗が楊貴妃とともに賞味する茘枝であった。事実かどうかを問題とせず、玄宗と楊貴妃の仲睦まじさが際立つ逸話を用いることで、二人が永遠の愛を誓ったことを賛美している。
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この過去問の解説 (1件)
01
「驪山の遠景→華清宮の門→疾走する早馬→楊貴妃の笑み」と視点が順に絞られ、非常手段(馬逓)で運ばれる茘枝が笑みの理由であることを示し、玄宗が政より楊貴妃への情に溺れたことを慨嘆する、という鑑賞が適切です。
詩は逸話の史実性に議論があることを承知で、それでも政治的頽廃を批判するために巧みに用いています。
この詩は構図が明快で、「謎めいた」とは言いにくいです。また「事実無根」と言い切るのは過剰で、史料上の伝承は複数あります。口調も憤懣の直叙ではなく、寓意的批判です。
詩の三四句「一騎紅塵妃子笑/無人知是荔枝来」は、砂煙を上げた早馬の到来が妃の笑みを生む構図です。馬逓は本来公用ですが、私的嗜好のために動員された点が批判の核です。情に溺れ道を外した玄宗への嘆きという読みが自然です。
杜牧は写生や知識提供が目的ではありません。政治批判の寓意が中心で、茘枝そのものの描写もありません。評価の方向がずれています。
トーンが逆です。杜牧は賛美ではなく反省と批判へ導きます。感嘆より慨嘆がふさわしい詩です。
これは白居易「長恨歌」的なロマン化で、杜牧の詩意(政治的風刺)と合いません。恋愛礼賛は読み違いです。
この詩は、視点のズーム(山の遠景→宮門→早馬→妃の笑み)と最後の転じ(茘枝来)で、公的資源の私用を浮かび上がらせ、情に溺れた為政の堕落を短い四句で鋭く批判します。史実の細部は揺れがあるものの、逸話を装置にした諷刺として読むのが要点です。
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