大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和4年度(2022年度)本試験
問55 (倫理(第4問) 問1)

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問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和4年度(2022年度)本試験 問55(倫理(第4問) 問1) (訂正依頼・報告はこちら)

高校生JとKが倫理の授業の予習をしているときに交わした次の会話を読み、後の問いに答えよ。なお、会話と問いのJとKは各々全て同じ人物である。

J:うーん、次回の授業で扱うa 未来世代に対する責任ってよく分からないなあ。
K:後の世代のためによいことをしなければいけない、というのは当然じゃない?
J:その人たちに何がよいのかなんて、今の私たちに分かる?私にはb ネットがない生活なんて耐えられないけど、この気持ちは昔の人には分からなかったでしょ。未来の人はまた違うことを望むはずで、それは予想できないよね。
K:変わらないこともあるよ。誰だって衣食住や自由が必要だし、c 子どもは大人に守ってもらわないと。それに安全なd 環境や社会がなければ不安だよ。
J:でも、私個人のe 行動が、未来の人の生活に影響することなんてあるのかな。
K:一人ひとりの廃棄で川や海にプラスチックが溜(た)まり、電気やガスの使い過ぎでf 温暖化も進んだ、と授業で習ったね。個人の行動も未来に影響はするよ。
J:なるほど。だけど、そもそも私たちに未来世代に対する責任があるのかなあ。この責任を負う相手には、遠いg 将来の人だって含まれるかもしれないわけでしょ。そんな赤の他人になぜ何かをしてあげなければいけないのかな?
K:そういう人を思いやるのは難しいけど、それって何もしないことの言い訳になる?遠い未来に生まれるとしても私たちと同じ人間なんだから、h 道徳的に考えると、その人たちの利害も私たちのものと同様に重要なんじゃないの。
J:うーん、まだ存在もしていない人の利害よりも、いま現に生きている人の利害の方が大事な気もする。それに、同世代の人に何かよいことをするならお返しをしてもらえる可能性があるけど、未来世代の人からは何も返してもらえないよ。一方的な自己犠牲をしなきゃいけないの?
K:それは本当に一方的な自己犠牲なのかな。違うと思うよ。私たちが有限な人生を生きることの意味や幸福って、誰かが私たちの遺産を引き継いで幸せに生きていってくれるっていう期待にかかっているんじゃないの。
J:i 後を継ぐ人がいないとしても、自分らしく生きられるのなら、それで十分だと思うけど。まだ納得できないから、明日、授業を受けてからまた話そう。

下線部aに関して、次のメモは、授業の前夜にKが自分の考えをまとめたものである。会話を踏まえて、メモ中のa・bに入る語句の組合せとして最も適当なものを、後のうちから一つ選べ。

メモ
未来世代に対する責任の重要性を説いた思想家として、ヨナスが挙げられる。私たちが、自然を危機的なまでに傷つけ人類を滅ぼすことができる科学技術を手にしていることが、彼の議論の背景にある。( a )ことも、彼と同様の考えに基づくものだったようだ。さらにヨナスは、私たちの行為と技術の影響を、遠い未来に及ぶものでも、できる限り知らなければならないと主張した。これは、Jに伝えた、( b ) という私の考えと同じ発想に基づいていたようだ。でも、科学技術とその利用の影響について知るための教育の機会が得られない人だって多い。現在の問題にも取り組まないと、未来世代に対する責任は果たせないということか。
  • a 国連人間環境会議で「持続可能な開発」が提唱された
    b 遠い将来の人であっても、私たちの行為で被害を受けることがある
  • a 国連人間環境会議で「持続可能な開発」が提唱された
    b 未来の人を援(たす)けることは、見返りのない義務なのだ
  • a ハーディンが地球を宇宙船という閉ざされた環境に喩(たと)えた
    b 遠い将来の人であっても、私たちの行為で被害を受けることがある
  • a ハーディンが地球を宇宙船という閉ざされた環境に喩えた
    b 未来の人を援けることは、見返りのない義務なのだ
  • a ラッセルとアインシュタインが核兵器の廃絶を主張した
    b 遠い将来の人であっても、私たちの行為で被害を受けることがある
  • a ラッセルとアインシュタインが核兵器の廃絶を主張した
    b 未来の人を援けることは、見返りのない義務なのだ

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この過去問の解説 (1件)

01

未来世代に対する責任の重要性についての問題です。

 

a 「自然を危機的なまでに傷つけ人類を滅ぼすことができる科学技術」の文脈には、核兵器の廃絶を唱えたラッセル・アインシュタイン宣言が当てはまります。

「持続可能な開発」が提唱されたのは国連人間会議ではなく、国連環境開発会議です。

「宇宙船地球号」はハーディンではなくボールディングらが唱えた概念で、地球の資源の有限性を言ったものです。

b 会話文の中で、Kは「個人の行動も未来に影響はする」と述べており、未来世代に対する責任は「一方的な自己犠牲」ではないと述べています。

選択肢1. a 国連人間環境会議で「持続可能な開発」が提唱された
b 遠い将来の人であっても、私たちの行為で被害を受けることがある

誤りです。

 

a 不適切です。国連環境開発会議です。

b 適切です。

選択肢2. a 国連人間環境会議で「持続可能な開発」が提唱された
b 未来の人を援(たす)けることは、見返りのない義務なのだ

誤りです。

 

a 不適切です。国連環境開発会議です。

b 適切です。

選択肢3. a ハーディンが地球を宇宙船という閉ざされた環境に喩(たと)えた
b 遠い将来の人であっても、私たちの行為で被害を受けることがある

誤りです。

 

a 不適切です。ハーディンではなく、ボールディングらです。

b 適切です。

選択肢4. a ハーディンが地球を宇宙船という閉ざされた環境に喩えた
b 未来の人を援けることは、見返りのない義務なのだ

誤りです。

 

a 不適切です。ハーディンではなく、ボールディングらです。

b 不適切です。KではなくJの述べた内容です。

選択肢5. a ラッセルとアインシュタインが核兵器の廃絶を主張した
b 遠い将来の人であっても、私たちの行為で被害を受けることがある

正しいです。

 

a 適切です。

b 適切です。

選択肢6. a ラッセルとアインシュタインが核兵器の廃絶を主張した
b 未来の人を援けることは、見返りのない義務なのだ

誤りです。

 

a 適切です。

b 不適切です。KではなくJの述べた内容です。

まとめ

Kが述べた内容なのか、Jが述べた内容なのかが混ざらないように気を付けましょう。

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