大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問54 (倫理(第3問) 問8)
問題文
次の会話は、授業後に、人間の思考と自然との関係をめぐり、高校生Dと先生が交わしたものである。
D:人間の賢さは理性的な思考能力によると考えられてきたのですよね。
先生:そうです。だから「理性的動物」というのが、古来の人間の定義でした。e 思想家たちは、理性とはどういうものか様々に論じてきました。
D:でも、そうした思考能力を持った人間が、自然を自分勝手に利用し、荒らし回っていますね。それを賢さとは言いにくい感じがします。
先生:確かにそうですね。ただ、人間の思考と自然との関係について言えば、もっと別の考え方もあります。
D:それはどんなものでしょうか?
先生:例えば、文豪ゲーテは、自然はただ計量され、利用されるものではなく、本来、人間の思考と生きてつながっていると考えていました。
D:生きてつながっている、とはどういう意味でしょうか?
先生:思考する人間と眼前の自然とは、生命という根源を同じくするという考え方です。それを自覚すれば、自然は本来の生き生きとした姿で現れてくるとされます。自然を思考とは別にあるものと捉え、何かに利用しようとする態度とは、対照的だと思いませんか。
D:確かにそう思います。そう言えば、自然を利用しようとする技術のあり方を批判したハイデガーの思想を、授業で習ったことを思い出しました。
先生:よく覚えていましたね。f 人間の実存の問題から出発したハイデガーは、後年、自然はもとより人間自身をも利用可能なものとみなす近代の技術の考え方を批判しました。そして、思考する人間と自然との根源的な関係を探ろうとしました。そうしたハイデガーの問題意識は、確かに、ゲーテと通じていたと言えるかもしれません。
D:そうした思想家たちは、自然との豊かな関係を築くために、人間の思考はどうあるべきかを探求したということなのですね。
先生:そうですね。ここから、ぜひ、思考する人間の賢さの意味を考え直してみてください。
以上の会話文の趣旨を記述したものとして最も適当なものを、次の回答選択肢のうちから一つ選べ。
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問題
大学入学共通テスト(公民)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問54(倫理(第3問) 問8) (訂正依頼・報告はこちら)
次の会話は、授業後に、人間の思考と自然との関係をめぐり、高校生Dと先生が交わしたものである。
D:人間の賢さは理性的な思考能力によると考えられてきたのですよね。
先生:そうです。だから「理性的動物」というのが、古来の人間の定義でした。e 思想家たちは、理性とはどういうものか様々に論じてきました。
D:でも、そうした思考能力を持った人間が、自然を自分勝手に利用し、荒らし回っていますね。それを賢さとは言いにくい感じがします。
先生:確かにそうですね。ただ、人間の思考と自然との関係について言えば、もっと別の考え方もあります。
D:それはどんなものでしょうか?
先生:例えば、文豪ゲーテは、自然はただ計量され、利用されるものではなく、本来、人間の思考と生きてつながっていると考えていました。
D:生きてつながっている、とはどういう意味でしょうか?
先生:思考する人間と眼前の自然とは、生命という根源を同じくするという考え方です。それを自覚すれば、自然は本来の生き生きとした姿で現れてくるとされます。自然を思考とは別にあるものと捉え、何かに利用しようとする態度とは、対照的だと思いませんか。
D:確かにそう思います。そう言えば、自然を利用しようとする技術のあり方を批判したハイデガーの思想を、授業で習ったことを思い出しました。
先生:よく覚えていましたね。f 人間の実存の問題から出発したハイデガーは、後年、自然はもとより人間自身をも利用可能なものとみなす近代の技術の考え方を批判しました。そして、思考する人間と自然との根源的な関係を探ろうとしました。そうしたハイデガーの問題意識は、確かに、ゲーテと通じていたと言えるかもしれません。
D:そうした思想家たちは、自然との豊かな関係を築くために、人間の思考はどうあるべきかを探求したということなのですね。
先生:そうですね。ここから、ぜひ、思考する人間の賢さの意味を考え直してみてください。
以上の会話文の趣旨を記述したものとして最も適当なものを、次の回答選択肢のうちから一つ選べ。
- 眼前の自然を利用できるということは、自然を対象化するという人間の思考の能力の優れた点を示している。自然を利用する能力を高めていくならば、思考を支える根源的な自然をも捉えられるようになるはずである。
- 眼前の自然を利用できることを、人間の思考の優れた点だと考えるべきではない。むしろ、自然と深いところでつながっていることを自覚できる点に、人間の思考のより豊かな可能性が探られなければならない。
- 人間は、思考の能力によって眼前の自然を自分勝手に利用しようとするが、それは自然に対する一面的な態度である。むしろ、あらゆる思考を捨て去り、自然に溶け込んで生きることが、人間には大切である。
- 人間は、思考の能力によって眼前の自然を利用できるが、それだけでは不十分である。さらに自然との根源的なつながりを自覚することによって、人間自身をも利用できるようにならなければならない。
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