大学入学共通テスト(公民) 過去問
令和5年度(2023年度)追・再試験
問48 (倫理(第3問) 問2)

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問題

大学入学共通テスト(公民)試験 令和5年度(2023年度)追・再試験 問48(倫理(第3問) 問2) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章を読み、後の問いに答えよ。

かつてあるイギリスの首相は「社会なるものは存在しない。存在するのは個々の男と女であり、家族である」と語った。しかし、多様な人々が共に生きる場としての社会というものを本当に無視できるのだろうか。社会をめぐる近代の西洋思想をたどることを通じて、私たちにとって社会が持つ意味を考えてみよう。
社会への意識は、まずは人々が共存する秩序を自ら構築しようとするところから生まれた。ルネサンス期のa エラスムスやトマス・モアらの著作に見られるように、中世末期から近世初頭にかけて、共に生きる場である社会の仕組みやルールを私物化することへの先鋭な批判が現れた。そうした批判は、17世紀以降の絶対主義国家の成立の中で、b 国家との関係においてあるべき社会のルールを自ら定めようとする市民の思想の誕生へとつながっていくことになる。その後、c 歴史を通じておのずと社会の秩序が生成してきたと主張した思想家もいた。だがd ヘーゲルはそこに現れる矛盾を鋭く批判し、社会のあるべき姿を模索した。
また、e 人々が時に貧しく困難な生を送っているとき、それを社会全体が対応すべき問題なのだと考える発想を生み出したのも、社会を論じた思想家たちだった。そうした発想は、19世紀において、資本主義体制そのものがもたらす諸矛盾を鋭く批判する社会主義者をはじめとした、f 社会の変革を志向する様々な思想家を生み出した。後のフェビアン協会の思想に見られる福祉国家の構想も、こうした社会問題への対応から生み出されている。
g 社会は多様な人々が共存する場である。社会societyの語源となったラテン語socius(ソキウス)は仲間を意味する言葉だが、そうした仲間の絆(きずな)を超えた包摂性を持つことによってこそ、社会は今あるような意味を獲得してきた。だがh 社会に多様な他者を包摂しようとする努力は、常に一定のモデルに沿って人々を画一化するというリスクと隣り合わせだったことは否定できない。しかし、仲間を超えて人々を結び付ける社会を作り出してきた歴史そのものが、他者と共に生きることへの人間の要求を証している。だからこそ、「他者と共に」の意味を常に新たに鍛え上げていくことが私たちに繰り延べられた課題なのである。

下線部bに関して、次の資料は、国と人との関係についてスピノザが論じたものである。資料の内容の説明として最も適当なものを、後の回答選択肢のうちから一つ選べ。

資料
国の究極の目的は、人々を支配したり、恐れによって押さえ付けたり、他人の権利に服従させたりすることではない。反対に、各人を恐れから解放し、できる限り安全に生きられるように、つまり人々が自分自身にも他者にも危険を及ぼさないで存在し活動する自然な権利を最高度に保持できるようにすることなのである。
国の目的は、人間を理性的存在から野獣や自動人形にすることではない。反対に、人々が自らの精神と身体の機能を発揮し、自由な理性を行使できるようにすることであり、憎しみや怒りや策略のために争ったり、敵意を持って対立し合ったりするのを防ぐことなのだ。したがって、国の目的は自由なのである。
(『神学・政治論』より)
  • 国の目的は自由であり、いかなる感情も自由に発揮され妨げられないようにすることこそ、国がなすべきことである。
  • 人間が理性によって導かれ、自らの心身の機能を発揮することを保障することこそ、国がなすべきことである。
  • 人々が争い対立することを防ぐため、憎悪や敵対心を押さえ付け、人々を服従させることこそ、国がなすべきことである。
  • 国の目的は自由であり、その基礎となる安全を確保するために、人々の自然権を抑制することこそ、国がなすべきことである。

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