司法書士の過去問
平成27年度
(旧)平成27年度 問11
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問題
平成27年度 司法書士試験 問11 (訂正依頼・報告はこちら)
次の対話は、地役権に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
教授:甲土地を所有しているAが、B所有の乙土地上に通行地役権の設定を受けたとします。Aは、乙土地上の通行地役権を、甲土地から分離して譲渡することができますか。
学生:(ア) 通行地役権の設定行為において別段の定めがされていなければ、Aは乙土地上の通行地役権のみを譲渡することができます。
教授:同じ事例で、CがAから甲土地を買い受けた場合に、Cが乙土地上の通行地役権を取得するためには、甲土地の売買契約において別段の定めが必要ですか。
学生:(イ) Cが乙土地上の通行地役権を取得するために、その通行地役権の移転について別段の定めをする必要はありません。
教授:事例を変えて、甲土地を所有しているAが、B所有の乙土地上に通行地役権の設定を受けていなかったものの、20年以上の期間にわたり、乙土地を事実上通行していたとします。その場合、乙土地の通行を目的とする地役権については、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものであれば、取得時効の対象となりますが、Aは、どのような場合に「 継続的に行使 」の要件を満たすことができますか。
学生:(ウ) 「 継続的に行使 」の要件を満たすためには、乙土地の上に通路が開設され、その通路をAが使用していることが必要ですが、通路の開設をA以外の第三者がした場合でも「 継続的に行使 」の要件を満たします。
教授:更に事例を変えて、甲土地を共有しているA及びDが、B所有の乙土地上に通行地役権の設定を受けていたとします。この事例において、その後、Aが甲土地に対する自己の持分をBに譲渡した場合、その持分についての通行地役権は混同により消滅しますか。
学生:(エ) BがAの持分を取得したとしても、その持分についての通行地役権が混同により消滅することはありません。
教授:同じ事例で、Dに通行地役権についての消滅時効の中断事由があるときには、Aのためにも通行地役権についての消滅時効の中断の効力は生じますか。
学生:(オ) 要役地の共有者の一人のために時効の中断がある場合でも、他の共有者との関係では消滅時効は進行しますのでAのためには通行地役権についての消滅時効の中断の効力は生じません。
教授:甲土地を所有しているAが、B所有の乙土地上に通行地役権の設定を受けたとします。Aは、乙土地上の通行地役権を、甲土地から分離して譲渡することができますか。
学生:(ア) 通行地役権の設定行為において別段の定めがされていなければ、Aは乙土地上の通行地役権のみを譲渡することができます。
教授:同じ事例で、CがAから甲土地を買い受けた場合に、Cが乙土地上の通行地役権を取得するためには、甲土地の売買契約において別段の定めが必要ですか。
学生:(イ) Cが乙土地上の通行地役権を取得するために、その通行地役権の移転について別段の定めをする必要はありません。
教授:事例を変えて、甲土地を所有しているAが、B所有の乙土地上に通行地役権の設定を受けていなかったものの、20年以上の期間にわたり、乙土地を事実上通行していたとします。その場合、乙土地の通行を目的とする地役権については、継続的に行使され、かつ、外形上認識することができるものであれば、取得時効の対象となりますが、Aは、どのような場合に「 継続的に行使 」の要件を満たすことができますか。
学生:(ウ) 「 継続的に行使 」の要件を満たすためには、乙土地の上に通路が開設され、その通路をAが使用していることが必要ですが、通路の開設をA以外の第三者がした場合でも「 継続的に行使 」の要件を満たします。
教授:更に事例を変えて、甲土地を共有しているA及びDが、B所有の乙土地上に通行地役権の設定を受けていたとします。この事例において、その後、Aが甲土地に対する自己の持分をBに譲渡した場合、その持分についての通行地役権は混同により消滅しますか。
学生:(エ) BがAの持分を取得したとしても、その持分についての通行地役権が混同により消滅することはありません。
教授:同じ事例で、Dに通行地役権についての消滅時効の中断事由があるときには、Aのためにも通行地役権についての消滅時効の中断の効力は生じますか。
学生:(オ) 要役地の共有者の一人のために時効の中断がある場合でも、他の共有者との関係では消滅時効は進行しますのでAのためには通行地役権についての消滅時効の中断の効力は生じません。
- アイ
- アウ
- イエ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (4件)
01
正しい選択肢はイとエです。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 民法281条2項では、地役権は、要役地から分離して譲り渡し、又は他の権利の目的とすることができない、と規定しています。従って、本選択肢は誤りです。
イ. 民法281条1項本文では、地役権は、要役地の所有権に従たるものとして、その所有権と共に移転し、又は要役地について存する他の権利の目的となるものとする、と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。
ウ. 判例は、民法283条による通行地役権の時効取得については、いわゆる継続の要件として、承役地たるべき他人所有の土地の上に通路の開設を要し、その開設は、要役地所有者によってなされるべきことを要する、としています(最高裁昭和30年12月26日判決)。従って、本選択肢は誤りです。
エ. 民法282条1項では、土地の共有者の一人は、その持分につき、その土地のために又はその土地について有する地役権を消滅させることができない、と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。
オ. 民法292条では、要役地が数人の共有に属する場合において、その一人のために時効の中断又は停止があるときは、その中断又は停止は、他の共有者のためにも、その効力を生じる、と規定しています。従って、本選択肢は誤りです。
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02
ア×
地役権とは用益地(自分の土地等)のために存在し、用益地が移転すれば、地役権も共に移転するという性質があります。(民法281条1項)
したがって、地役権のみ分離して移すということは、
できません。
イ○
民法281条1項でわかるように、用益地が移転すれば、地役権も共に移転します。
別段の契約をする場合は、用益地が移転すれば、
地役権が消滅するという場合であって
別段の契約をしなければ、当然に移転することを予定しています。
ウ×
判例は、通行地役権の時効取得の条件として、
自ら通路を開設し、継続的に行使しなければならないとしていますので、第三者が開設したものだと、
時効取得することはできません。
エ○
地役権において、持分が混同により消滅するという条文や判例は存在してません。
オ×
地役権は、成立しやすく、消滅しづらいという考え方があります。
民法はなるべく地役権を積極的に肯定していきたいようです。
民法292条にあるように、共有の場合、一人に生じた消滅時効の中断は全員についても中断の効力が及びます。
民法284条も一緒に覚えておきましょう。
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03
地益権は従たる権利ですので主たる権利である土地所有権と分離して譲渡することはできません。
イ正
その通り。地役権は土地の譲渡と共に移転するため特別の合意はいりません。
ウ誤
通行地役権は認められるためには、自身で道路の開設を行い継続的に行使することが必要です。
エ正
他の共有者保護のため、通行地役権は混同によって消滅せずに存続します。
オ誤
共有者の一人に生じた時効中断事由は他の共有者にも及びます。したがってAのために消滅時効の中断が生じます。
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04
地役権は土地に附随する権利ですので、甲土地から分離して、地役権だけを譲渡することはできません。
イ 〇
地役権は土地に付随する権利ですので、甲土地の所有権を取得すれば、乙土地上の地役権を取得することができます。
ウ ×
「継続的に行使」の要件を満たすためには、A自らが通路の開設をする必要があります。
エ 〇
共有持分を要役地として地役権が成立することはありません。共有者Dがいますので、BがA持分を取得したとしても混同で地役権が消滅することはありません。
オ ×
要役地の共有者の一人に対し、通行地役権の消滅時効の中断事由がある場合には、他の共有者に対しても、消滅時効の中断の効力が生じます。
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