司法書士の過去問
平成25年度
午前の部 問19

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問題

平成25年度 司法書士試験 午前の部 問19 (訂正依頼・報告はこちら)

契約の終了又は物の返還時期に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  使用貸借契約においては、返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも、返還を請求することができる。

イ  賃貸借契約においては、賃貸借の期間が定められている場合であっても、賃貸人は、やむを得ない事由があれば、その期間の満了前に解約の申入れをすることができる。

ウ  請負契約においては、請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも、請負人に生じた損害を賠償して、契約を解除することができる。

エ  委任契約においては、委任が受任者の利益のためにも締結された場合であっても、委任者は、いつでも、受任者に生じた損害を賠償して、契約を解除することができる。

オ  寄託契約においては、寄託物の返還の時期が定められている場合であっても、受寄者は、やむを得ない事由があれば、その期限前に寄託物を返還することができる。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は4(イ、エが誤り)です。

ア 正しい。
 597条3項の規定がそのまま選択肢となっています。なお、返還の時期を定めたときはその時期に、使用の目的を定め返還の時期を定めなかったときは使用収益が終了したときまたは使用収益をするに足る期間が経過したときに返還すべきこととなります。

イ 誤り。
 期間の定めのある賃貸借契約においては、賃借人についても期間まで賃借する義務が存在します。
なお、一般に住居を賃借する場合、期間を定めつつも事前の通告により解約が可能となっていることがありますが、これは特約によるものです。

ウ 正しい。
 641条の条文が選択肢となっています。

エ 誤り。
 委任契約は双方がいつでも解除することが可能ですが(651条)、やむを得ない事情なく相手方の不利な時期に解除した場合には損害を賠償する義務を負います(651条2項)。
 そして、当初判例は受任者の利益のためにも締結された委任につき651条の適用による一方からの解除を認めていませんでしたが、直近の判例は受任者の利益のためにも締結された委任であっても、やむを得ない場合は無論、やむを得ない事情がなくとも「解除権自体を放棄したものと解されない事情がある場合」は解除を認めています(651条の規定に従い損害賠償は発生しうる)。
 以降の判例は「解除権自体を放棄したものと解されない事情がある場合」を広く認めるため、受任者のためにも為された委任であっても事実上損害を賠償すれば契約を解除できる(選択肢が強ち誤りと言えない)といえますが、題意は他の役務提供型契約との相違を問うたものと思われます。

オ 正しい。
 663条2項(「返還の時期の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができない。」)の反対解釈です。ほぼ条文通りの択といえるでしょう。

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02

ア 正しい
当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができます(民法598条2項)。
よって、本肢にいう貸主は、いつでも、返還を請求することができます。

イ 誤り
当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、いつでも解約の申入れをすることができます(民法618条、同法617条)。
よって、本肢の場合、賃貸人が賃貸借期間に解約をする権利を留保していなければ、その期間の満了前に解約の申入れをすることはできません。

ウ 正しい
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができます(民法641条)。

エ 正しい
委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除したときは、やむを得ない事由がある場合を除き、相手方の損害を賠償しなければなりません(民法651条2項)。

オ 正しい
返還の時期の定めがあるときは、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還をすることができません(民法663条2項)。
よって、やむを得ない事由があれば、その期限前に寄託物を返還することができます。

※ 上記は、2020年4月1日から施行された改正民法に基づく解説になっていますので、出題当時の正誤と異なる肢があります。

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03

正解は 4 です。

誤っている選択肢はイとエなので、4が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 民法597条3項で、「(使用貸借の)当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる」と規定しています。従って、本選択肢は正しい記述となります。

イ. 当事者が賃貸借の期間を定めた場合でも、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、各当事者はいつでも解約の申し入れをすることができます。(民法618条参照)。言い換えると、賃貸借解約に期間の定めがある場合には、その期間内に解約をする権利を留保した場合を除き、当事者は解約の申し入れができないのが原則です。従って、本選択肢は誤りです。

ウ. 民法614条は「請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる」と規定しているので、本選択肢は正しい記述です。

エ. 委任契約は、当事者がいつでも解除できるのが原則です。(民法615条1項参照)。但し、委任が受任者の利益にもなる場合には、やむを得ない事由があるとき、又は、委任者が委任契約の解除権自体を放棄したものとは解されないときは、解除できるとされています。(最高裁昭和43年9月20日判決、最高裁昭和56年1月19日判決参照)。従って、本選択肢は誤った記述です。

オ. 民法663条2項では「返還の時期の定めがある時は、受寄者は、やむを得ない事由がなければ、その期限前に返還することができない」と規定しています。従って、本選択肢は正しい記述となります。




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