司法書士の過去問
平成26年度
午前の部 問12

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問題

平成26年度 司法書士試験 午前の部 問12 (訂正依頼・報告はこちら)

AのBに対する貸金債権を担保するために、AがC所有の甲建物に抵当権の設定を受けた場合に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものは、幾つあるか。


ア  Cは、当該貸金債権の元本に加えて、満期となった最後の2年分の利息をAに支払うことにより、当該抵当権を消滅させることができる。

イ  当該貸金債権の弁済期が到来したときは、Cは、Bに対し、あらかじめ求償権を行使することができる。

ウ  Bは、Cから甲建物を買い受けた場合には、抵当不動産の第三取得者として、抵当権消滅請求をすることができる。

エ  当該抵当権は、B及びCに対しては、当該貸金債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。

オ  当該抵当権の設定の登記がされた後に、CがDとの間で甲建物についての賃貸借契約を締結しその賃料債権をCがEに対して譲渡した場合には、当該譲渡につき確定日付のある証書によってCがDに通知をしたときであっても、Aは、当該賃料債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。
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この過去問の解説 (3件)

01

正解は2です。

正しい選択肢はエ及びオなので、正しい選択肢の個数は2であり、正解は2となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 債務者や物上保証人は、被担保債権及び付随債権の全額を弁済しなければ、抵当権を消滅させることはできません。従って、本選択肢は誤りです。

イ. 物上保証人であるCには、事前求償権が認められておりません。従って、当該貸金債権の弁済期が到来してもは、Cは、Bに対し、あらかじめ求償権を行使することができませんので、本選択肢は誤りです。

ウ. 民法380条は、主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができない、と規定しています。従って、本選択肢は誤りです。

エ. 民法396条は、「抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない」と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。

オ. 民法304条の趣旨からすると、抵当権者が物上代位を行うためには、物上代位の目的債権が「払い渡し又は引き渡し」の前に、差し押さえる必要があります。債権譲渡は「払い渡し又は引き渡し」には含まれないため、債権譲渡があった場合でも、抵当権者は、目的債権を差し押さえて、物上代位をすることができます。従って、本選択肢は正解です。

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02

正しい記述はエとオの2個であり、2が正解です。

ア 抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができます(民法375条1項本文)。この2年分の制限は、他の債権者との関係で抵当権の優先弁債権を制限するものに過ぎず、債務者に代わって被担保債権を任意に弁済して抵当権を消滅させるためには、利息又は損害金の全部を弁済しなければなりません。したがって、本記述は誤りです。

イ 他人の債務を担保するため抵当権を設定した者(物上保証人)は、その債務を弁済し、又は抵当権の実行によって抵当不動産の所有権を失ったときは、保証債務に関する規定に従い、債務者に対して求償権を有します(民法372条、351条)。しかし、判例(最判平成2.12.18)は物上保証人の事前求償権を否定していますので、Cはあらかじめ求償権を行使することはできません、したがって、本記述は誤りです。

ウ 抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をすることができますが(民法379条)、主たる債務者、保証人及びこれらの者の承継人は、抵当権消滅請求をすることができません(民法380条)。Bは主たる債務者なので、抵当権消滅請求をすることはできません。したがって、本記述は誤りです。

エ 抵当権は、債務者(本記述のB)及び抵当権設定者(物上保証人、本記述のC)に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しません(民法396条)。したがって、本記述は正しいです。

オ 判例(最判平成10.1.30)は、「民法372条が準用する304条1項の『払渡し又は引渡し』には債権譲渡は含まれない」として、「抵当権の設定登記後、物上代位による差押えの前に債権譲渡がなされ対抗要件が具備された場合であっても、物上代位が優先し、抵当権者はなお債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる」としています。したがって、本記述は正しいです。

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03

正解 2

ア 誤り
抵当権者は、利息を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の2年分についてのみ、その抵当権を行使することができます(民法375条1項)。
もっとも、この規定は、抵当権者が有する優先弁済的効力を制限する趣旨の規定であり、本肢のように物上保証人が抵当権を消滅させる場合に適用される規定ではありません。
したがって、物上保証人Cが、当該抵当権を消滅させるためには、利息の全額を弁済しなければなりません。

イ 誤り
物上保証人と求償権の事前行使の可否について、判例(最判平成2年12月18日)は、「物上保証人は、被担保債権の弁済期が到来しても、あらかじめ求償権を行使することはできない。」と判示しています。

ウ 誤り
主たる債務者は、抵当権消滅請求をすることができません(民法380条)。

エ 正しい
抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しません(民法396条)。
本肢の場合、Bは債務者であり、Cは抵当権設定者であるため、当該貸金債権と同時でなければ、時効によって消滅しません。

オ 正しい
抵当権者による物上代位権の行使と目的債権の譲渡について、判例(最判平成10年1月30日)は、「抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる」と判示しています。

以上から、正しい肢はエとオの2つであり、2が正解となります。

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