司法書士の過去問
平成29年度
午前の部 問12

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問題

平成29年度 司法書士試験 午前の部 問12 (訂正依頼・報告はこちら)

債務者Aに対する債権者として、A所有の甲土地の第1順位の抵当権者B(被担保債権額600万円)、第2順位の抵当権者C(被担保債権額2100万円)及び第3順位の抵当権者D(被担保債権額2400万円)がおり、また、無担保の一般債権者E(債権額400万円)がいる。甲土地の競売による配当金総額が5000万円であったとして、次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア 抵当権の順位を、第1順位の抵当権者D、第2順位の抵当権者C及び第3順位の抵当権者Bと変更するためには、BとDの合意があれば足りる。
イ BがEに対して抵当権を譲渡した場合において、Eが当該抵当権を実行するためには、Eの債権の弁済期が到来していれば足り、Bの債権の弁済期が到来している必要はない。
ウ BがEに対して抵当権を譲渡した場合のBの配当額は200万円であり、BがEに対して抵当権を放棄した場合のBの配当額は360万円である。
エ BからDに対する抵当権の順位の譲渡又は放棄は、BとDの合意によってすることができ、A、C及びEの承諾は不要である。
オ BがDに対して抵当権の順位を譲渡した場合のBの配当額は580万円であり、BがDに対して抵当権の順位を放棄した場合のBの配当額は500万円である。
  • アイ
  • アウ
  • イオ
  • ウエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は4です。

ア…誤りです。抵当権の順位変更は、順位変更に関わる抵当権者全員の同意が必要とされています(不動産登記法89条1項)。Cは順位の変更がありませんが、順位を変更する抵当権者にはさまれる中間順位の抵当権者も同意を要するとされます。よって本問ではB、C、Dの同意が必要です。

イ…誤りです。抵当権の実行には、当該抵当権の被担保債権が弁済期にあり、履行遅滞に陥っていることが必要です。抵当権が譲渡されても、当該抵当権の被担保債権が譲受人の有する債権と同一視できるわけではないので、Bの債権が弁済期にある必要があります。

ウ…正しいです。(抵当権者が無担保債権者に)抵当権を譲渡した場合、譲渡人は自己が受け取ることのできるはずであった弁済額から、譲受人が有する債権額を差し引いた金額を受け取れます(残額がなければ受け取れません)。これに対し、抵当権を放棄した場合、譲渡人は、自己が受け取ることのできるはずであった金額に対し、自己の有する債権額と譲受人の有する債権額を按分比例した額を受け取れます。したがって、Bが無担保債権者Eに対して抵当権を譲渡した場合は、Bは(受け取れるはずであった600万円)-(Eの債権額400万円)=200万円を受け取れます。BがEに対して抵当権を放棄した場合には、Bの債権額:Eの債権額=600万円:400万円=3:2により、Bは(受け取れるはずであった600万円)× 3/5=360万円を受け取れます。

エ…正しいです。抵当権の順位譲渡ならびに抵当権の順位放棄は、当事者の合意のみで成立します。順位譲渡および順位放棄は、下記に示す通り、その行為の当事者間でのみ影響があり、他の担保権者が受け取れる弁済額に影響がないからです。

オ…誤りです。(抵当権者が後順位抵当権者に)抵当権を順位譲渡した場合、譲渡人は譲渡前の抵当権順位にしたがって全員の配当額を計算したのち、自己が受け取ることのできるはずであった弁済額から、譲受人が有する債権額の不足分を差し引いた金額を受け取れます(残額がなければ受け取れません)。一方、抵当権を順位放棄した場合、債権者は譲渡前の抵当権順位にしたがって全員の配当額を計算したのち、自己と譲受人が受け取ることのできるはずであった金額に対し、自己の有する債権額と譲受人の有する債権額を按分比例した額を受け取れます。したがって、Bが後順位抵当権者Dに対して抵当権を譲渡した場合、譲渡前のBは600万円、Dは2300万円を受け取る予定でしたが、譲渡により、Bは(受け取れるはずであった600万円)-(Dの債権額の不足分100万円)=500万円を受け取れます。BがDに対して抵当権を放棄した場合には、放棄前のBは同様に600万円、Dは2300万円を受け取る予定であったので、その合計額は600万円+2300万円=2900万円となります。Bの債権額:Dの債権額=600万円:2400万円=1:4により、Bは(BとDとが受け取れる合計額2900万円)× 1/5=580万円を受け取れます。なお、どちらの場合も、Cが受け取れる額は2100万円で、順位譲渡または順位放棄がない場合と変わりません。

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02

正解は 4 です。

正しい選択肢は、ウとエなので、4が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 民法第374条の2に「前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない。」とあり、抵当権の順位の変更が効力を発生するためには登記が必要となります。従って、本選択肢は誤りです。

イ.  譲受人たるEが抵当権を行使するためには、Eの被担保債権の弁済期のみならず、譲渡人たるBの被担保債権の弁済期も到来していることが条件となります。従って、本選択肢は誤りです。

ウ. 抵当権を譲渡した場合、BとEの配当額を合算し、譲受人たるEに配当をした残りがBの配当となり、計算すると200万円となります。抵当権を放棄した場合、BとEの配当額を合算し、BとEの債権額に応じて配分します。計算すると360万円となるため、本選択肢は正しいです。

エ. 抵当権の順位の変更をする場合は抵当権者全員の同意が必要となりますが、抵当権の順位の譲渡又は放棄を行う場合は、抵当権者全員の同意を必要としません。従って、本選択肢は正しいです。

オ. 抵当権の順位の譲渡をした場合、BとDの配当額を合算し、順位を譲渡されたDの債権額の範囲内で配当を行った後、余った金額をBが債権額の範囲内で配当として受け取ることになります。計算すると500万となります。抵当権の順位の放棄をした場合、BとDの配当額を合算し、BとDの債権額の比率に応じて分配します。計算すると580万円となり、本選択肢は誤りです。

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03

正解は 4 です。

正しい選択肢はウとエであり、4が正解です。

各選択肢の解説は以下のとおりです。

ア 抵当権の順位の変更は関係者全員の合意によらなければ変更できません。従って、本選択肢は誤りです。

イ 抵当権譲渡の譲受人は抵当権を実行することができるが、そのためには、譲受人の被担保債権の弁済期のみならず、譲渡人の被担保債権の弁済期も到来している必要があります。従って、本選択肢は誤りです。

ウ BがEに対して抵当権を譲渡した場合のBの配当額は(600万円-400万円=)200万円で、BがEに対して抵当権を放棄した場合のBの配当額は(600万円×600万円/600万円+400万円=360万円です。従って、本選択肢は正しいです。

エ 抵当権の順位の譲渡・放棄は、抵当権の帰属自体に変更を生じさせず、配当上の効果を生じさせる相対的な効力を定めたとされています。よって、他の担保権者等第三者の抵当権の帰属自体にはなんらの影響を与えないので、その同意を得る必要はありません。従って、本選択肢は正しいです。

オ BがDに対して抵当権を譲渡した場合のBの配当額は(2,900万円-2,400万円=)500万円で、BがDに対して抵当権を放棄した場合のBの配当額は(2,900万円×600万円/600万円+2,400万円=580万円です。従って、本選択肢は誤りです。

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