司法書士の過去問
平成30年度
午後の部 問68

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

平成30年度 司法書士試験 午後の部 問68 (訂正依頼・報告はこちら)

A社を吸収合併存続株式会社とし、B社を吸収合併消滅株式会社とする吸収合併による変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
なお、A社及びB社は、いずれも取締役会設置会社とする。

ア  A社及びB社の合意によって吸収合併の効力発生日を変更した場合には、A社の吸収合併による変更の登記の申請書には、効力発生日の変更に係るA社及びB社の合意を証する書面並びに効力発生日の変更の決議をしたA社及びB社の取締役会の議事録を添付しなければならない。

イ  吸収合併に際してA社の資本金の額が増加せず、かつ、その効力の発生と同時にA社の商号を変更する場合において、A社の吸収合併による変更の登記と商号の変更の登記を一の申請書で申請するときは、登録免許税の額は3万円である。

ウ  吸収合併に際してB社の新株予約権者に対してA社の新株予約権を交付する場合には、A社の吸収合併による変更の登記の申請書には、合併契約書のほか、B社の新株予約権の内容として、吸収合併によりB社が消滅する際には吸収合併存続会社の新株予約権を交付する旨を定めたB社の株主総会の議事録又は取締役会の議事録を添付しなければならない。

エ  B社が現に株券を発行している株券発行会社である場合において、B社がA社の完全子会社であるときは、A社の吸収合併による変更の登記の申請書には、B社が株券の提出に関する公告をしたことを証する書面を添付することを要しない。

オ  会社法上の公開会社でないA社が、種類株式を発行していない会社法上の公開会社であるB社の特別支配会社である場合において、吸収合併に際してB社の株主に対してA社の株式を交付するときは、A社の吸収合併による変更の登記の申請書には、合併契約の承認の決議をしたB社の株主総会の議事録を添付しなければならない。
  • アウ
  • アエ
  • イウ
  • イオ
  • エオ

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

正解:4

ア:誤
吸収合併消滅会社は、吸収合併存続会社との合意によって、吸収合併の効力発生日を変更することができます(会790Ⅰ)。効力発生日の変更があった場合、吸収合併による変更の登記の申請書には、吸収合併存続株式会社において取締役の過半数の一致があったことを証する書面又は取締役会の議事録(商登46)及び効力発生日の変更に係る当事会社の契約書も添付しなければなりません(平18.3.31民商782号)が、吸収合併消滅株式会社における取締役の過半数の一致があったことを証する書面又は取締役会の議事録は添付を要しません。

イ:正
吸収合併に際して資本金の額を増加しない場合、吸収合併による変更の登記の登録免許税の区分は、その他登記事項の変更(登録税別表1.24.(1)ツ)であり、また、商号の変更登記の登録免許税も同じ区分(登録税別表1.24.(1)ツ)となります。同じ区分の登録免許税は、一の登記申請でする場合は加算されないので、無増資の吸収合併による変更の登記と商号の変更の登記を一の申請書で申請するとき、その登録免許税額は1件につき3万円となります。

ウ:誤
吸収合併消滅株式会社が新株予約権を発行しているときは、吸収合併存続株式会社が吸収合併に際して当該新株予約権の新株予約権者に対して当該吸収合併存続株式会社の新株予約権を交付するときは、吸収合併契約において、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法を定めなければなりません(会749Ⅰ④イ)。したがって、吸収合併による変更の登記の申請書には、前記事項を記載した合併契約書を添付すれば足り、吸収合併消滅株式会社の株主総会の議事録又は取締役会の議事録を添付することを要しません。

エ:誤
吸収合併消滅株式会社が現に株券を発行している株券発行会社の場合、吸収合併に際して、株券提供公告及び通知をしなければなりません(会219Ⅰ⑥)。そして、吸収合併による変更の登記の申請書には、株券提供公告をしたことを証する書面の添付を要します(商登80⑨、59Ⅰ②)。この規定は吸収合併消滅株式会社が吸収合併存続株式会社の完全子会社の場合であっても適用されます。

オ:正
吸収合併存続株式会社が吸収合併消滅株式会社の特別支配会社の場合、吸収合併消滅株式会社においては吸収合併契約についての株主総会の承認決議を要しません(会783Ⅰ、784Ⅰ)。ただし、吸収合併おける合併対価等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合であって、消滅株式会社が公開会社であり、かつ、種類株式発行会社でないときは、吸収合併消滅株式会社の前記承認決議を省略することはできません(会784Ⅰ但書)。よって、吸収合併消滅株式会社の株主総会の議事録を添付しなければなりません。

参考になった数12

02


正解 4

ア 誤り
消滅株式会社は、存続会社との合意により、効力発生日を変更することができます(会社法790条1項)。効力発生日を変更した場合、存続会社において取締役の過半数の一致があったことを証する書面又は取締役会の議事録を添付しなければなりません(平成18年3月31日民商782号)。
しかし、消滅株式会社における取締役の過半数の一致があったことを証する書面又は取締役会の議事録を添付する必要はありません。

イ 正しい
吸収合併に際して資本金の額が増加しない場合、吸収合併による変更の登記の登録免許税の区分は、登記事項の変更(登録免許税法別表第一、二四(1)ツ)となります。
また、商号の変更の登記の登録免許税の区分も同じ区分になります。登録免許税の区分が同一である場合において、一の申請書で申請する場合は加算されないため、本肢における登記申請にかかる登録免許税の額は 3 万円となります。

ウ 誤り
吸収合併消滅株式会社が新株予約権を発行している場合において、吸収合併存続株式会社が吸収合併に際して当該新株予約権の新株予約権者に対して吸収合併存続株式会社の新株予約権を交付するときは、吸収合併契約で当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法を定めなければなりません(会社法749条1項4号イ)。
よって、本肢の場合、吸収合併による変更の登記の申請書には、合併契約書を添付することで足り、B社の新株予約権の内容として、吸収合併によりB社が消滅する際には吸収合併存続会社の新株予約権を交付する旨を定めたB社の株主総会の議事録又は取締役会の議事録を添付する必要はありません。

エ 誤り
吸収合併消滅会社が株券発行会社であるときは、吸収合併による変更の登記の申請書に、株券の提出に関する公告をしたことを証する書面を添付しなければなりません(商業登記法80条9号)。
これは、吸収合併消滅株式会社が吸収合併存続株式会社の完全子会社である場合も同じです。

オ 正しい
消滅株式会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約の承認を受けなければなりませんが、吸収合併存続会社が消滅株式会社の特別支配会社である場合には、株主総会決議による承認は必要ありません(会社法783条1項、同784条1項前段)。
もっとも、吸収合併における合併対価等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合であって、消滅株式会社が公開会社であり、かつ、種類株式発行会社でないときは、消滅株式会社は吸収合併契約について株主総会決議による承認を受けなければなりません(同条同項ただし書)。
よって、本肢では、A社の吸収合併による変更の登記の申請書に、合併契約の承認の決議をしたB社の株主総会の議事録を添付しなければなりません。

よって、正しい肢はイとオとなり、4が正解となります。

参考になった数2

03

正解:4

<解説>

ア:誤りです。

消滅株式会社は、存続会社との合意により、効力発生日を変更することができます(会社法790条①)。

効力発生日の変更があった場合には、吸収合併存続株式会社において取締役の合意を証する書面又は取締役会の議事録を添付しなければなりませんが、消滅会社のものは不要です(平18・3・31民商782号)。

したがって、本肢は誤りです。

イ:正しいです。

資本金の額の増加を伴わない吸収合併による変更の登記と商号の変更の登記は同じ区分で、その登録免許税は申請件数1件につき3万円です(登録免許税法別表第一24⑴ツ)。

これらを一の申請書で申請するときは、その登録免許税の額は3万円です。

したがって、本肢は正しいです。

ウ:誤りです。

吸収合併による変更の登記の申請書に、新株予約権に関する事項を決議した議事録を添付しなければならないとする規定はありません(商業登記法80条参照)。

したがって、本肢は誤りです。

エ:誤りです。

現に全部の株券を発行している株券発行会社は、合併により当該株式会社が消滅する場合には、株券提出日までに当該株券発行会社に全部の株式に係る株券を提出しなければならない旨を株券提出日の1か月前までに、公告しなければなりません(会社法219条①⑹)。

そして、吸収合併消滅会社が株券発行会社であるときは、吸収合併による変更の登記の申請書には、株券の提出に関する公告をしたことを証する書面を添付することを要します(商業登記法80条⑼)。

したがって、本肢は誤りです。

オ:正しいです。

原則として、吸収合併存続会社、吸収分割承継会社又は株式交換完全親会社が消滅株式会社等の特別支配会社である場合には、株主総会の決議による吸収合併契約等の承認を要しませんが、吸収合併又は株式交換における合併対価等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合であって、消滅株式会社等が公開会社であり、かつ、種類株式発行会社でないときは、吸収合併契約等の承認が必要です(会社法784条)。

したがって、本肢は正しいです。

以上により、正しいものは肢イ・オであり、正解は4となります。

参考になった数1