司法書士の過去問
令和2年度
午前の部 問12

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

令和2年度 司法書士試験 午前の部 問12 (訂正依頼・報告はこちら)

不動産質権に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、どれか。

ア  不動産質権者は、その実行前においては、所有者の承諾を得なければ、目的物を第三者に賃貸してその賃料を収受することができない。
イ  不動産質権の設定は、指図による占有移転の方法によって債権者にその目的物を引き渡すことによっても、その効力を生ずる。
ウ  不動産質権者は、目的物について必要費を支出した場合には、所有者にその償還を請求することができる。
エ  不動産質権の存続期間は10年を超えることができず、更新する場合における存続期間も更新の時から10年を超えることができない。
オ  同一の不動産について数個の不動産質権が設定されたときは、その不動産質権の順位は、設定の前後による。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

ア × 不動産質権には目的物の使用収益権がります。よって、質権者は、不動産の用法に従い生じた天然果実、法定果実を収取することができます。(民法356)

つまり、不動産質権者が不動産を賃貸することは使用収益に当たるのでその果実を収取して弁済に充てることができます。(不動産質権は占有担保)

イ 〇 質権は要物契約です。よって目的物を引き渡すことにより効力が生じます。

この引き渡しには指図による占有移転も含まれます。

ちなみに、占有改定は質権設定と即時取得の場面では引き渡しに当たりません。

ウ × 不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負う。(民法357)

不動産質権は占有担保だから必要費を支払うのは仕方のないことです。

しかし、これが実務で不動産質権が使われない大きな理由です。

銀行は金銭債権の担保として不動産質権者になったのに、必要費を払い続けていたら銀行の利益が減ってしまいますよね。

エ 〇 不動産質権の存続期間は、10年を超えることができず、設定行為でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、10年とされる。(民法360Ⅰ)

これも実務で不動産質権が使われない大きな理由です。

銀行にとって10年は短すぎる期間です。

10年より伸ばしたいなら改めて更新するしかありません。そして更新の時から10年を超えることができません。

銀行はいちいち更新するのが面倒なのです。

しかも、更新の費用も掛かりますしメリットはほとんどありません。

オ × 同一不動産について数個の不動産質権が設定されたときは、その不動産質権の順位は、登記の前後によります。(民法361・373)

比較の知識として不動産先取特権保存は後順位の者が優先します。(後に保存行為をした者が優先するということです。)

参考になった数26

02

正解は4です。

ア…誤りです。動産質の場合と異なり、不動産質の場合は、原則として、所有者の承諾がなくても、目的となる不動産の用法に従い、使用収益することができます(356条、359条)。

イ…正しいです。不動産質権も質権ですので、当事者どうしの質権設定の合意に加え、債権者に目的の不動産質を引き渡すことによって、その効力を生じます(344条)。ただし、第三者への対抗要件は登記です(177条)。

ウ…誤りです。不動産質権者は、抵当権者と異なり、原則として、管理費その他の必要費を所有者に請求することができません(357条、359条、H20過去問)。

エ…正しいです。不動産質に設定する存続期間は10年を超えることができず(360条1項)、更新後の設定期間は、更新のときから10年を超えることができません(360条2項)。

オ…誤りです。不動産質権については、質権の規定に反しない限り、抵当権に関する規定が準用されます(361条)。よって、同一の不動産について複数の不動産質権が設定されたときは、その不動産質権の順位は、登記の先後によります(373条)。

参考になった数16

03

正解 4

ア 誤り
不動産質権者は、質権の目的である不動産の用法に従い、その使用及び収益をすることができます(民法356条)。
この場合、所有者の承諾を得る必要はありません。

イ 正しい
質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生じます(要物契約 民法344条)。
これは、不動産質権の場合であっても同じです。

ウ 誤り
不動産質権者は、管理の費用を支払い、その他不動産に関する負担を負うこととされています(民法357条)。

エ 正しい
不動産質権の存続期間は、10年を超えることができません(民法360条1項)。
また、不動産質権の設定を更新する場合も、その存続期間は、更新の時から10年を超えることができません(同条2項)。

オ 誤り
同一の不動産について数個の不動産質権が設定されたときは、その不動産質権の順位は、登記の前後によります(民法361条、同373条)。

参考になった数7