ア × 抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。(民法371)
民法372により物上代位(民法304)の規定は抵当権について準用されているので、
抵当権者が物上代位の目的債権から優先弁済を受けるためには、
その払渡し又は引渡しの前に差し押さえをしなければなりません。
よって、本肢は、差し押さえることなく直ちに取り立てることができるとする点で誤っています。
本肢をきっかけに条文を読んでおきましょう。
イ × 抵当権消滅請求をすることができる者は抵当不動産の第三取得者だけです。(民法379)つまり、抵当不動産の所有権を取得したものです。
比較の知識として根抵当権消滅請求権をすることができる者も併せて押さえておきましょう。
1.根抵当権設定者
2.根抵当不動産について所有権or 地上権or永小作権orを取得した第三者、又は登記した賃借権者
ウ 〇 登記をした賃貸借は、その登記前に登記をした抵当権者全員が同意をし、その同意の登記があるときは、当該賃貸借を抵当権者に対抗することができます(民法387条1項)。
そして、抵当不動産が競売により売却された場合、買受け人が賃貸人として存続します。
よって、Cは抵当権の実行としての競売により甲土地を買い受けた者に対し、賃借権を対抗することができます。
エ 〇 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができます(民法389条1項)。
これを一括競売といいます。土地と建物を別々で競売するのはめんどくさいから一括して競売してしまえ、ということです。
しかし、一括して競売したからといって抵当権を設定していない建物については優先権を行使することはできません。(抵当権の効力は土地にしか及んでいないからです。)
オ × 本肢を一言でまとめると、建物明渡猶予制度はあるが、土地明渡猶予制度はありません。
つまり、土地の賃借人は、競売における買受人の買受の時から6か月を待たずしてすぐに明け渡さなければなりません。
よって、Cは、甲土地を買受人に明け渡すことを要しないとする点が誤っています。