司法書士の過去問
令和4年度
午後の部 問10

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問題

令和4年度 司法書士試験 午後の部 問10 (訂正依頼・報告はこちら)

弁済供託に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア  建物の賃貸借における賃借人は、債務の本旨に従って賃料を賃貸人に提供し、賃料の受領と引換えに受取証書の交付を請求した場合において、賃貸人が賃料は受領しようとしたものの、受取証書の交付を拒んだときは、受領拒絶を原因とする弁済供託をすることができる。
イ  不法行為に基づく損害賠償債務について、債務者及び債権者の間で損害賠償の額に争いがあるために受領拒絶を原因とする弁済供託がされた場合において、被供託者が還付請求をするときは、損害賠償金の一部として受領する旨の留保を付すことはできない。
ウ  不法行為に基づく損害賠償債務の債務者は、損害賠償額に相当する額に履行の請求を受けた日から弁済の提供の日までの遅延損害金を加えた額をもって、弁済供託をすることができる。
エ  弁済供託の供託者が供託所に対して供託金取戻請求権を放棄する旨の意思表示をした場合には、これによって取戻請求権は消滅し、この放棄を撤回することができない。
オ  弁済供託が供託をすべき供託所以外の供託所に供託されている場合であっても、被供託者は、当該供託に係る供託金の還付を請求することができる。
  • アイ
  • アオ
  • イウ
  • ウエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

弁済供託に関する問題です。

選択肢3. イウ

アは正しいです。一般的に債務の履行と受取証書の交付は同時履行の関係にあります。

イは誤りです。額は少ないけど、当面の生活のために受け取りたいという場合などもあるでしょう。そして、足りない分は後日請求するわけです。

ウは誤りです。不法行為に基づく損害賠償の遅延損害金の起算点は、損害を受けた日です。

エは正しいです。信義則に反するような撤回はできません。

オは正しいです。供託者がそこに供託を済ませていて、被供託者が不便でないと言うならよいということでしょう。

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02

弁済供託の可否を問う問題です。供託法では,よく出題される項目です。過去問で出題された先例を確認しておけば足りることが多いです。しかも同じような先例が繰り返し出題されます。仮に知らない選択肢が出ても,知っている選択肢を検討して正答にたどり着けることが多いので,とにかく弁済供託については先例を中心に学習しましょう。

選択肢3. イウ

ア・・正しいです。

賃借人が賃貸人に対し賃料を提供したが,賃貸人が受領証書(受取証書)を交付しない場合には,受領拒否を原因として弁済供託をすることができます(昭和39年3月28日民甲773号)。

そもそも賃借人が賃料を提供するという弁済行為を行ったのですから,弁済を受領した賃貸人に対して受取証書の交付を請求できます(民法486条)。民法486条1項によれば,「弁済と引換えに」受取証書の交付を請求できると規定されていますから,弁済と受取証書の交付は,同時履行の関係にあります

実質的にも賃借人が弁済したにもかかわらず,賃貸人が受取証書を交付しなければ,賃借人が賃料を提供した証拠が得られなくなり,賃借人が弁済したはずの金額について,賃貸人から再度請求を受ける事態が起きかねないので,そのような事態を防止するために,弁済と引換えに受取証書の交付は必要となるからです。

債権証書の場合は,弁済が先になります。受取証書と異なり,同時履行ではありません。

 弁済後に債権者が債権証書の交付をしますので,弁済が先に履行されなければなりません。

イ・・誤りです。

損害額について争いがあるときでも,債権の「全額」であるとしてされた供託金を,被供託者が債権の「一部」として受託する旨を留保して還付請求することができます(昭和35年3月30日民甲775号)。

なぜなら,損害額の一部について債務の一部として受領しても債権の性質が異なるわけではない上,債権者である被供託者の不利益も回避できると考えられるからです。

ウ・・誤りです。

「履行の請求を受けた日から」ではなく,「不法行為時から」にすると選択肢が正しくなります。

不法行為に基づく損害賠償債務の額につき,加害者・被害者間で争いがある場合において,加害者が自ら算出した損害賠償額に不法行為時から提供日までの遅延損害金を付して被害者に提供し,受領を拒否されたときは,加害者は,その合計額を供託することができる(昭和32年4月15日民甲710号,昭和55年6月9日民四3273号)とされています。

エ・・正しいです。

取戻権者は,供託物取戻請求権を放棄できます。供託書の備考欄にその旨を記載するか,供託後に取戻請求権放棄書を供託所に提出する方法により行います。供託物取戻請求権の放棄の撤回はできません(昭和38年8月23日民甲2448号)。

相手方も取戻請求権の放棄をした意思表示に信頼を置くので,その信頼をほごにするような撤回は信義則上許されないからです。

供託受諾の意思表示も撤回できません(昭和37年10月22日民甲3044号)。

(なお,錯誤取消は撤回できます)

ですから,供託において,錯誤取消以外の場合には意思表示の撤回はできないと覚えておきましょう。

オ・・正しいです。

弁済供託においては,供託者が供託物を取り戻す前に被供託者が供託受諾又は還付請求をしたときは,管轄違背の瑕疵が治癒され,当初から有効な供託があったものとして取り扱われます(昭和39年7月20日民甲2594号)。

本来,管轄違いの供託については,移送の制度もないことから却下しなければなりません(供託規則21条の7)が,被供託者が受諾の意思表示又は還付請求という明確な意思表示をした以上,有効なものとして取り扱う方が早いという事例判断と思われます。

まとめ

以上から,誤りはイとウになります。

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03

弁済供託に関する問題です。

選択肢3. イウ

アは正しいです。

賃借人が債務の本旨に従って賃料を提供したが賃貸人が受領書を交付しない場合は、賃借人は供託をすることができます。(昭39.3.28民甲773号)

イは誤りです。

債務全額にとして弁済された弁済供託について被供託者が債権の一部として受諾することを留保することは認められています。

ウは誤りです。

不法行為に基づく債務は不法行為の時点で履行期が到来するので不法行為時から提供日までの遅延損害金を加算して弁済供託をする必要があります。(昭55.6.9.民四3273号)

エは正しいです。

供託物取戻請求権を放棄した場合取戻請求権は消滅します。禁反言の原則があるので撤回することはできません。

オは正しいです。

弁済供託の管轄違いは原則無効になりますが、被供託者が受諾または還付請求をした場合最初から有効と扱われます。

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