司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問3
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問題
令和5年度 司法書士試験 午前の部 問3 (訂正依頼・報告はこちら)
財政に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せはどれか。
ア 公金を公の支配に属しない慈善事業に対して支出することは、憲法上禁じられている。
イ 国の収入支出の決算は、全て毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
ウ 内閣は、国会の議決に基づいて設けられた予備費の支出について、事前にも事後にも国会の承諾を得る必要はない。
エ 市町村が行う国民健康保険の保険料は、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有し、憲法第84条の趣旨が及ぶ。
オ 地方公共団体が条例により税目や税率を定めることは、憲法上予定されていない。
(参考)
憲法
第84条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
ア 公金を公の支配に属しない慈善事業に対して支出することは、憲法上禁じられている。
イ 国の収入支出の決算は、全て毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
ウ 内閣は、国会の議決に基づいて設けられた予備費の支出について、事前にも事後にも国会の承諾を得る必要はない。
エ 市町村が行う国民健康保険の保険料は、賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有し、憲法第84条の趣旨が及ぶ。
オ 地方公共団体が条例により税目や税率を定めることは、憲法上予定されていない。
(参考)
憲法
第84条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
- アウ
- アエ
- イエ
- イオ
- ウオ
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この過去問の解説 (2件)
01
憲法(財政)に関する問題です。(ウ)が誤りの選択肢であることは簡単にわかりますので、すぐに、正答を(ア)(ウ)と(ウ)(オ)の2択に絞り込むことができます。
(ア)憲法89条後段では「公金その他の公の財産は、公に属しない慈善、教育もしくは博愛の事業に対し、これを支出し、又は、その利用の用に供してはならない」と規定しています。そのため、本肢は正しいです。
(イ)憲法90条は「国の収入支出の決算は、すべて会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない」と規定しているため、正しいです。
(ウ)憲法87条第1項は「予見しがたい予算の不足に充てるために、国会の議決の基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる」と規定し、同第2項では「すべての予備費の支出については、事後に国会の承認を得なければならない」と規定しています。本肢は、「事前にも事後にも、国会の承認を得る必要がない」としているため、誤りです。
(エ)最高裁平成18年3月1日判決(旭川市国民健康保険条例事件)は「憲法84条における「租税」とは、国または地方公共団体が、特別の給付に対する反対給付としてではなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課税する金銭給付をいうところ、国民健康保険の保険料は、被保険者が保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるものであり、租税ではないが、保険料が強制徴収され、その強制の度合いにおいては租税に類似する性質のものであるから、これについても、憲法84条の趣旨が及ぶ」と判断しています。よって、本肢は正しいです。
(オ)憲法94条後段は「普通地方公共団体は、法律の範囲内で条例を制定することができる」と規定し、最高裁平成25年3月21日判決は「普通地方公共団体が課することができる租税の税目、課税客体、課税標準、税率その他の事項については、憲法上、租税法律主義の原則の下、法律において、地方自治の本肢を踏まえて、その準則を定めることが予定されている」と判断しています。本肢は「地方公共団体が条例により税目や税率を定めることは、憲法上予定されていない」としているため、誤りです。
憲法の条文からの選択肢が多いので、全体としては簡単な問題ですが、(エ)が少し難しいです。ただ、(エ)の正誤が分からなくても、(ウ)は容易に誤りだとわかるので、(ア)が正しいか、(オ)が誤りであることのいずれかを正しく判断できれば、正答を導けます。
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02
財政の範囲からの出題です。一部、地方自治制度(条例で課税出来るかどうか)と絡んだ問題が出ていますが、国民から徴収した税金を無制限に使うと国家が破綻しますから、国民の代表が制定した法律で規制するという趣旨から答えれば、普通に判断出来ます。
ア 89条後段「公金その他の公の財産は、公に属しない慈善、教育もしくは博愛の事業に対し、これを支出し、又は、その利用の用に供してはならない」とあるため、本肢は正解です。
イ 90条「国の収入支出の決算は、すべて会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない」とあるため、本肢は正解です。
ウ 87条第1項は「予見しがたい予算の不足に充てるために、国会の議決の基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる」と規定し、同第2項では「すべての予備費の支出については、事後に国会の承認を得なければならない」とあるため、「事前にも事後にも、国会の承認を得る必要がない」としている、本肢は不正解です。
エ 国民健康保険の保険料の法的性質の論点です。健康保険の保険料は事実上の強制徴収ですから、税金と実質は同じ性質を持っています。もっとも、健康保険によって、安価に受診出来る権利の対価としての性質があるため、税金と完全には同視出来ません。そこで、その法的性質が論点となります。
判例(最判平18.3.1)は「租税ではないが、保険料が強制徴収され、その強制の度合いにおいては租税に類似する性質のものであるから、憲法84条の趣旨が及ぶ」としており、84条そのものの直接適用はないものの、趣旨が及ぶとしています。よって、本肢は正解となります。
オ 地方公共団体は条例を制定出来ます。これは明文(94条後段)の通りです。次に、条例で課税できるかどうかが論点となってきます。判例(最判平25.3.21)では「普通地方公共団体が課することができる租税の税目、課税客体、課税標準、税率その他の事項については、憲法上、租税法律主義の原則の下、法律において、地方自治の本肢を踏まえて、その準則を定めることが予定されている」とあり、法律の範囲であれば可能であると判示しています。本肢では「地方公共団体が条例により税目や税率を定めることは、憲法上予定されていない」としていますが、実際には上記の判例の通り、可能であり、県民税、市民税と、実際に条例によって課税されていますから、不正解となります。
解法のポイント
憲法の統治編の場合、細かい数字を問われたりする問題もありますが、各条文の趣旨から判示された著名判例の論点を理解しているかどうかが問われる場合が多いです。本問も、基本的な論点ばかりです。過去問だけでなく、判例集で著名なものもおさえておけば、問題なく解けるでしょう。
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