司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問4

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問題

令和5年度 司法書士試験 午前の部 問4 (訂正依頼・報告はこちら)

後見、保佐及び補助に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。

ア  成年被後見人が成年後見人の同意を得てした不動産の取得を目的とする売買契約は、行為能力の制限を理由として取り消すことができない。
イ  成年被後見人が養子縁組をするには、成年後見人の同意を得ることを要しない。
ウ  保佐人は、保佐開始の審判により、被保佐人の財産に関する法律行為について被保佐人を代表する。
エ  保佐開始の審判をするには、本人以外の者が請求する場合であっても、本人の同意を得ることを要しない。
オ  借財をすることについて補助人の同意を得なければならない旨の審判がない場合には、被補助人は、補助人の同意を得ることなく、借財をすることができる。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (2件)

01

民法(後見、保佐、補助)に関する問題です。条文中心の基本的な知識を問う選択肢が多く、比較的簡単な問題です。

選択肢1. アウ

(ア)成年被後見人は、婚姻・養子縁組などの身分行為や日用生活品の購入その他日常生活に関する行為を除き、自己のした法律行為を取り消すことができます。これは、成年後見人の同意を得てした法律行為についても同様と解されています。本肢は「成年後見人の同意を得てした法律行為は取り消すことができない」としているため、誤りです。

(イ)民法799条・民法738条により、成年被後見人が養子縁組をする場合に、成年後見人の同意は不要ですので、本肢は正しいです。

(ウ)保佐人が、一定の行為について被保佐人を代理するためには、一定の者からの請求によって、家庭裁判所が、被保佐人のために、特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する審判が必要です。本肢は、保佐開始の審判によって、当然に代理権が付与されるとしているため、誤りです。

(エ)保佐開始の審判をするには、本人以外の者が請求する場合でも、本人の同意は不要です。なお、本人以外の請求で補助開始の審判をする場合は、本人の同意が必要です。従って、本肢は正しいです。

(オ)補助開始の審判だけでは、補助人は、被補助人に対して、何らの権利を持ちません。補助開始の審判と、補助人の同意を要する旨の審判又は補助人に代理権を付与する審判がなければ、補助人に同意権や代理権は付与されません。このため、補助開始の審判と、同意権又は代理権付与の審判は、同時になされます。従って、本肢は正しいです。

まとめ

後見、補佐、補助のに関する問題は、ほぼ毎年出題される頻出分野です。それほど深いところまでは問われませんが、成年後見は社会的課題となっていますので、しっかり勉強しておく必要があります。

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02

民法総則から、成年後見制度に関する問題です。基本的な制度理解を問う問題ばかりです。過去問はぜひ、反射的に解くのではなく、その制度理解が出来ているかどうかをチェックするように解くことをオススメします。

選択肢1. アウ

ア 成年後見人は、法律上の権限としての同意権を持っていません。事実上の同意があったとしても、それに法的な効果はありません。よって、成年被後見人が成年後見人の同意を得たとしても、不動産の取得を目的とする売買契約は、行為能力の制限を理由として取り消すことができます。よって本肢は、不正解となります。

 

イ 成年後見人は、法律上の権限としての同意権を持っていませんし、純粋な身分行為に関しては成年被後見人が単独で可能です(遺言をする場合は医師の判断は必要)。養子縁組をする場合は、成年被後見人、単独で可能です(799条・738条)。よって、本肢は正解となります。

 

ウ 保佐人が被保佐人を代表するとは、代理権を持つという意味です。保佐人は補佐開始により、13条の同意権は付与されますが、代理権に関しては、被保佐人自身か、一定の利害関係人から家庭裁判所に請求して、審判を経る必要があります。また、被保佐人自身からの請求で無い場合は、被保佐人の同意が必要になります。よって、保佐人は補佐開始があったとしても、当然には代理権を持つことはありませんから、本肢は、不正解となります。

 

エ 被保佐人自身が請求する場合以外で、被保佐人自身の同意が必要なのは保佐人に代理権を付与する場合で、保佐開始の審判自体ではありません。よって、本肢は正解となります。

 

オ 被補助人は13条の一部に同意権、もしくは代理権のどちらか、または双方を付与されます。同意権が付与されず、代理権のみ付与された場合は、被補助人は制限行為能力者ではありませんから、単独で借財をすることができます。よって、本肢は正解となります。

まとめ

解法のポイント

成年後見制度は、本人の行為能力の程度に応じて、制限される権限と保護される程度が変わります。その程度に応じて、本人の自由意思の尊重と、保護のための制限とのバランスを取るように、民法は制定されています。気を付けるべきポイントは2点あります。成年被後見人は必ずしも、意思無能力者とは限らないこと、被補助人の中には制限行為能力者でない者もいるということです。3者の違いを整理して憶えることが対策となります。

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