司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問6
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問題
令和5年度 司法書士試験 午前の部 問6 (訂正依頼・報告はこちら)
Aが、Bの代理人と称して、Cとの間で、Bの所有する不動産を売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という。)を締結したが、実際にはAは代理権を有しておらず、また、CはAが代理権を有していないことを知らなかった。この事例に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア Cは、Bに対し、相当の期間を定めて、その期間内に本件売買契約を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、Bがその期間内に確答しないときは、追認したものとみなされる。
イ Bが本件売買契約を追認した場合において、別段の意思表示がないときは、本件売買契約は、その追認の時から効力を生ずる。
ウ 本件売買契約の締結時において、Aが成年被後見人であったときは、Aは、Cに対して民法第117条第1項による無権代理人の責任を負わない。
エ Bが、Aに対して、本件売買契約を追認した場合であっても、Cが当該追認の事実を知らないときは、Cは本件売買契約を取り消すことができる。
オ Aが、自己に代理権がないことを知りながら、本件売買契約を締結した場合であっても、Aが代理権を有しないことをCが過失によって知らなかったときは、A は、Cに対して民法第117条第1項による無権代理人の責任を負わない。
(参考)
民法
第117条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2(略)
ア Cは、Bに対し、相当の期間を定めて、その期間内に本件売買契約を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、Bがその期間内に確答しないときは、追認したものとみなされる。
イ Bが本件売買契約を追認した場合において、別段の意思表示がないときは、本件売買契約は、その追認の時から効力を生ずる。
ウ 本件売買契約の締結時において、Aが成年被後見人であったときは、Aは、Cに対して民法第117条第1項による無権代理人の責任を負わない。
エ Bが、Aに対して、本件売買契約を追認した場合であっても、Cが当該追認の事実を知らないときは、Cは本件売買契約を取り消すことができる。
オ Aが、自己に代理権がないことを知りながら、本件売買契約を締結した場合であっても、Aが代理権を有しないことをCが過失によって知らなかったときは、A は、Cに対して民法第117条第1項による無権代理人の責任を負わない。
(参考)
民法
第117条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2(略)
- アイ
- アオ
- イエ
- ウエ
- ウオ
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この過去問の解説 (2件)
01
民法(無権代理行為)に関する問題です。代理権に関する問題は、司法書士試験では頻出問題です。
(ア)無権代理行為の相手方は、相当の期間を定めて、その期間内に追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしなかった時は、追認を拒絶したものとみなされます(民法114条)。従って、本肢は誤りです。
(イ)無権代理人のした追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時に遡ってその効力を生じます。(民法116条)。従って、本肢は誤りです。
(ウ)無権代理人が、成年被後見人などの行為能力について制限を受けるものである場合は、その者は、無権代理人の責任を負いません(民法117条3項)。従って、本肢は正しいです。
(エ)本人が無権代理人に対してした追認は、相手方がその事実を知るまでの間は、相手方に対抗することができません。従って、Cが追認の事実を知らない間は、AがBにした追認はCに対抗できないので、Cは売買契約を取り消しできます(民法113条2項)。従って、本肢は正しいです。
(オ)無権代理人が代理権を有していなかったことを、相手側が過失によって知らなかった時は、無権代理人は、無権代理人の責任を負いません。ただし、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていた場合は、その責任を負います(民法117条)。Aは自己に代理権がないことを知って法律行為をしているので、無権代理人の責任を負いため、本肢は誤りです。
(エ)は有名な論点ですので、すぐ正しいと判断できるかと思います。すると、正答は(ウ)(エ)又は(ウ)(オ)に絞れます。(エ)が正しい、(オ)が誤り、のどちらかを正確の判定できれば、この問題は解くことができます。
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02
無権代理の論点です。無権代理は表見代理が成立するとき以外は本人に帰責性がなく、原則が無効となります。よって、相手方の催告に対して返信がない場合は、追認拒絶のみなしになります。制限行為能力者による法律行為の場合は原則が有効で、ただ、取消権の瑕疵が付いているだけなので、同様の状況だと、追認みなしになることと、対比して憶えてください。
ア 民法114条により、本人がその期間内に確答をしなかった時は、追認を拒絶したものとみなされます。これは本人に帰責性がなく、原則が無効だからです。よって、本肢は不正解となります。
イ 無権代理行為の追認は、原則が契約の時に遡及し、別段の意思表示があれば、遡及せず、効力は追認の時からとすることが出来ます。本肢では、別段の意思表示がないときとあるので、原則通り、契約の時に遡ってその効力を生じます(116条)。よって、本肢は不正解となります。
ウ 117条2項1号により、他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたときは、第1項の無権代理人の責任の規定を適用されません。本肢のAは成年被後見人であるため、117条第1項による無権代理人の責任を負わないとあるので、正解になります。
エ 113条2項により、本人の無権代理行為に対する追認は、相手方に対してしなければ、その、相手方に対抗することができません。よって、本肢の相手方であるCが当該追認の事実を知らないときは、Cは本件売買契約を取り消すことができるので、正解となります。
オ 117条2項2号但し書きに、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りではないとあるため、たとえ、相手側が過失によって知らなかった時でも、無権代理人は責任を負うことになります。本肢では、Aが、自己に代理権がないことを知りながら、本件売買契約を締結したとあるので、責任を負います。よって、本肢は不正解となります。
解法のポイント
すべて、条文知識です。民法は常にバランスを重視するので、どちらにどの程度、帰責性があるかを把握して憶えると、整理がしやすいでしょう。無権代理の場合は、本人、無権代理人、相手方の3者です。
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