司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問8
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問題
令和5年度 司法書士試験 午前の部 問8 (訂正依頼・報告はこちら)
公道に至るための他の土地の通行権(以下「囲繞(にょう)地通行権」という。)に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せはどれか。
ア 他の土地に囲まれて公道に通じない土地(以下「袋地」という。)の所有権を取得した者は、所有権の移転の登記をしなくても、袋地を囲んでいる他の土地(以下「囲繞地」という。)の所有者に対して、囲繞地通行権を主張することができる。
イ 自動車によっては公道に出入りすることができないが、徒歩により公道に出入りすることができる土地の所有者は、その土地を囲んでいる他の土地につき、自動車による通行を前提とする囲繞地通行権を有しない。
ウ 民法第210条の規定による囲繞地通行権が認められる場合の通行の場所及び方法は、通行権者のために必要であり、かつ、囲繞地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
エ 共有物の分割によって生じた袋地の所有者が、他の分割者の所有地(以下「残余地」という。)について有する囲繞地通行権は、当該残余地について特定承継が生じた場合には、消滅する。
オ Aがその所有する一筆の土地を甲土地と乙土地とに分筆し、甲土地をBに譲渡するのと同時に乙土地をCに譲渡したことによって甲土地が袋地となった場合には、Bは、乙土地以外の囲繞地について囲繞地通行権を有することがある。
(参考)
民法
第210条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖(がけ)があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。
ア 他の土地に囲まれて公道に通じない土地(以下「袋地」という。)の所有権を取得した者は、所有権の移転の登記をしなくても、袋地を囲んでいる他の土地(以下「囲繞地」という。)の所有者に対して、囲繞地通行権を主張することができる。
イ 自動車によっては公道に出入りすることができないが、徒歩により公道に出入りすることができる土地の所有者は、その土地を囲んでいる他の土地につき、自動車による通行を前提とする囲繞地通行権を有しない。
ウ 民法第210条の規定による囲繞地通行権が認められる場合の通行の場所及び方法は、通行権者のために必要であり、かつ、囲繞地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
エ 共有物の分割によって生じた袋地の所有者が、他の分割者の所有地(以下「残余地」という。)について有する囲繞地通行権は、当該残余地について特定承継が生じた場合には、消滅する。
オ Aがその所有する一筆の土地を甲土地と乙土地とに分筆し、甲土地をBに譲渡するのと同時に乙土地をCに譲渡したことによって甲土地が袋地となった場合には、Bは、乙土地以外の囲繞地について囲繞地通行権を有することがある。
(参考)
民法
第210条 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。
2 池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができないとき、又は崖(がけ)があって土地と公道とに著しい高低差があるときも、前項と同様とする。
- アウ
- アオ
- イエ
- イオ
- ウエ
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この過去問の解説 (2件)
01
民法(相隣関係・囲繞地通行権)に関する問題です。この分野は、代理権や物件変動ほどではありませんが、司法書士試験では結構よく出題されています。
(ア)他の土地に囲まて公道に通じない土地(囲繞地)の所有権を取得した者は、所有権の登記がなくても、公道に至るためにほかの土地に対する通行権(囲繞地通行権)を取得します(最高裁昭和47年4月14日判決)。従って、本肢は正しいです。
(イ)最高裁平成18年3月16日判決は「自動車による通行を前提とする民法210条の通行権の正否及びその具体的な内容は、他の土地について自動車による通行権を認める必要性、周辺の土地の状況、自動車による通行を前提とする民法210条の通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合的に考慮して判断すべきである」と判断しています。この判例の趣旨からすれば、設問の場合、自動車による囲繞地通行権が成立しないとは言えないので、本肢は誤りです。
(ウ)民法210条の囲繞地通行権が認めらる場合の通行の場所及び方法は、民法210条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなくてはなりません(民法211条、1項)。従って、本肢は正しいです。
(エ)分割によって袋地が生じた場合は、その土地の所有者は、公道に至るために、他の分割者の土地のみを通行できます(民法213条、1項)。そして、この場合に生じる囲繞地通行権は、残余値が第三者に譲渡された場合でも、消滅しません(最高裁平成2年11月20日)。従って、本肢は誤りです。
(オ)分割によって袋地が生じた場合は、その土地の所有者は、公道に至るために、他の分割者の土地のみを通行できます(民法213条、1項)。従って、Bは公道に至るために、乙土地のみを民法210条の通行権を有し、乙土地以外の土地にはその権利を有しないので、誤りです。
有償の通行権は、当事者の契約が成立すれば特に制限なく設定できますが、民法210条の通行権は、無償の権利ですが一定の条件がないと成立しません。この問題は、その条件などについてのものでした。
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02
囲繞地通行権の論点です。最初から、袋地と囲繞地の関係になっている場合と、分割などで同様の状況になった場合とでは、通行出来る土地の場所的な制限と有償か無償かに、差が出てくることがポイントです。
ア 判例(最判昭47.4.14)の見解によると、袋地の所有者となった者は、所有権取得登記を経由してなくても、囲繞地所有者ないし囲繞地につき利用権を有する者に対して、囲繞地通行権を主張出来るとあるので、本肢は正解となります。
イ 判例(最判平18.3.16)の見解によると、自動車による通行を前提とする210条の通行権の成否及びその具体的な内容は、他の土地について自動車による通行権を認める必要性、周辺の土地の状況、自動車による通行を前提とする210条の通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきであるとしているので、徒歩により公道に出入り出来る場合は、自働車によって出入り出来ない場合でも、囲繞地通行権は主張出来ないとする、本肢は不正解となります。
ウ 211条1項により、通行の場所及び方法は、210条の規定による通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなければならないとあるため、本肢は正解となります。
エ 分割によって袋地が生じた場合でも、213条により法定通行権は生じます。また、判例(最判平2.11.20)によれば、残余地が第三者に譲渡され、特定承継された場合でも、この権利は消滅しません。従って、本肢は不正解となります。
オ 分割によって袋地が生じた場合は、その土地の所有者は、公道に至るために、他の分割者の土地のみを通行できる(213条1項)とあるので、Bは公道に至るために、分筆されて生じた、乙土地のみ、法定通行権を有し、乙土地以外では、その権利を行使できません。よって、本肢は不正解となります。
解法のポイント
ほとんどが定番になっている論点です。過去問などを通じて、有名判例と条文を整理して把握しておきましょう。
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