司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問10
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問題
令和5年度 司法書士試験 午前の部 問10 (訂正依頼・報告はこちら)
A、B及びCが各3分の1の持分の割合で甲土地を共有している場合の法律関係に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア Aは、B及びCの同意を得なければ、自己の持分を放棄することができない。
イ 甲土地につき共有物の分割の裁判を行う場合には、裁判所は、Aに債務を負担させて、B及びCの持分全部を取得させる方法による分割を命ずることもできる。
ウ Cが所在不明である場合において、Aが甲土地にその形状又は効用の著しい変更を伴う変更を加えようとするときは、Aは、裁判所に対し、Bの同意を得てその変更を加えることができる旨の裁判を請求することができる。
エ AがBに対して甲土地の管理費用の支払を内容とする金銭債権を有する場合において、BがDに甲土地の持分を譲渡したときは、Aは、Bに対してその債権を行使することができなくなる。
オ Aが甲土地を駐車場として使用させる目的でDのために賃借権を設定する場合には、賃貸借の存続期間の長短にかかわらず、B及びCの同意が必要である。
ア Aは、B及びCの同意を得なければ、自己の持分を放棄することができない。
イ 甲土地につき共有物の分割の裁判を行う場合には、裁判所は、Aに債務を負担させて、B及びCの持分全部を取得させる方法による分割を命ずることもできる。
ウ Cが所在不明である場合において、Aが甲土地にその形状又は効用の著しい変更を伴う変更を加えようとするときは、Aは、裁判所に対し、Bの同意を得てその変更を加えることができる旨の裁判を請求することができる。
エ AがBに対して甲土地の管理費用の支払を内容とする金銭債権を有する場合において、BがDに甲土地の持分を譲渡したときは、Aは、Bに対してその債権を行使することができなくなる。
オ Aが甲土地を駐車場として使用させる目的でDのために賃借権を設定する場合には、賃貸借の存続期間の長短にかかわらず、B及びCの同意が必要である。
- アエ
- アオ
- イウ
- イエ
- ウオ
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この過去問の解説 (2件)
01
民法(共有)に関する問題です。民法の共有に関する規定については、令和5年4月1日施行の改正が実施されており、(ウ)や(オ)については、改正前と改正後では正誤が変わるため、注意が必要です。
(ア)共有者の共有持分は、他の共有者の同意を得ることなく、自由に放棄や譲渡ができます。従って、本肢は誤りです。
(イ)民法258条第1項は「共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる」と規定し、同条第2項は「裁判所は、次に掲げる方法により、共有物の分割を命ずることができる。」と規定し、条文上の「次に掲げる方法」を示す同条同項第2号は「共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」と規定しています。従って、本肢は正しいです。
(ウ)民法251条第1項は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない」と規定し、同条第2項は「共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。」と規定しています。従って、本肢は正しいです。
(エ)各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負います(民法253条第1項)。AがBに対して、共有地の管理費用の支払いを内容とする金銭債権を有する場合、その後、Bが第三者Dに持分を譲渡しても、Bが債務者であることには変わりないので、AはBに対して債権を行使することができます。従って、本肢は誤りです。
(オ)樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借等以外の土地の賃貸借等の設定は、その期間が5年を超えない場合は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数の同意で決することができます(民法252条第4項)。本肢では、賃貸借の存続期間にかかわらず、共有者全員の同意が必要であるとしているため、誤りです。
改正の前後で正誤が変わる選択肢が含まれているこの問題は、改正前の民法の共有に関する分野を完全にマスターしていたとしても、令和5年4月1日施行の改正民法に関する知識がないと、間違ってしまいます。
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02
共有に関する論点です。共有物の規定は令和3年改正があります。
主な改正点
従来、民法の共有物の規定では
①変更行為は全員一致
②管理行為は持分過半数
③保存行為は単独で可能
でした。しかし、共有物に関する従来の規定では、ある行為が 変更行為なのか管理行為なのかの判断が難しい場合や、共有者が多い、遠方の共有者がいる、行方不明者がいるなどで、全員一致による決定が困難である場合があるなど、問題があったため、改正となりました。今回の改正では、軽微変更、占有者の変更、管理者の選任、短期使用権の設定については、持分過半数で実施できることとしました。
また、共有物分割について、裁判所は所在不明の共有者がいたり、賛否不明共有者がいる場合、当該所有者の議決権を「存在しない」扱いにできる改正もされました。
ア 共有持分の所有者は、他の共有者の同意を得ることなく、当該共有者単独で自由に処分行為(譲渡、放棄)ができます。よって、本肢のAは他の共有者、B、Cの同意を得ることなく、放棄が出来る
ため、不正解となります。
イ 258条1項2号により、共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法とあるため、本肢にある方法の分割も認められます。よって、正解となります。
ウ 令和3年度改正により、共有物の変更であっても、軽微である場合は、共有者全員の同意は不要となり、持分の過半数で可能となりました(改正後251条1項)。また、共有者に所在不明者がいる場合、当該行方不明者以外の同意を持って、裁判所に請求することで、共有物に変更を加えることができる旨の裁判ができます(改正後251条2項)。よって、本肢は正解となります。
エ 253条1項により、各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負うとあり、一旦、債権が発生した以上、その後、持分を処分した場合であっても、担保物権の被担保債権のように、付従性があるわけではないので、債権が発生した時の所有者を債務者として、請求が出来ます。本肢では、Bが第三者Dに持分を譲渡した後でも、AはBに対して債権を行使することができるため、不正解となります。
オ 252条4項2号により、樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借等以外の土地の賃貸借等以外で、その期間が5年を超えない場合は、処分行為ではなく、管理行為として、共有者の持分の価格の過半数の同意で可能であるため、本肢の、賃貸借の存続期間にかかわらず、共有者全員の同意が必要であるとする記述は不正解となります。
解法のポイント
共有物は大幅な改正があります。追加された規定も含めて、条文整理をきちんとして、何がポイントなのか、つかむことが重要です。
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