問題
教授: Aを賃借人、Bを賃貸人とするB所有の甲建物の賃貸借契約の期間中に、Aが甲建物についてBの負担に属する必要費を支出し、Bからその償還を受けないまま、賃貸借契約が終了した事例について、考えてみましょう。この事例において、Aは、Bに対し、必要費償還請求権を被担保債権として、甲建物について留置権を主張することが考えられますが、Aが裁判手続外で留置権を行使した場合には、必要費償還請求権の消滅時効の進行に影響を及ぼしますか。
学生:ア はい。Aが甲建物を留置している間は、必要費償還請求権の消滅時効は進行しません。
教授: Aが、留置権に基づいて甲建物を留置している間に、甲建物について有益費を支出し、これによる価格の増加が現存するときは、Aは、Bに、有益費を償還させることができますか。
学生:イ はい。Aは、Bの選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができます。
教授: Aが、留置権に基づいて甲建物を留置している間に、Bに無断で、第三者に甲建物を賃貸したときは、それによって留置権は当然に消滅しますか。
学生:ウ はい。留置権は、当然に消滅します。
教授: 冒頭の事例において、甲建物が火災により滅失し、Bがこれによる保険金請求権を取得した場合には、Aは、留置権に基づき、この保険金請求権に物上代位することができますか。
学生:エ いいえ。Aは、Bが取得した保険金請求権に物上代位することはできません。
教授: 最後に、冒頭の事例において、実は、甲建物の所有者が当初からCであり、C に無断で、BがAに甲建物を賃貸していた場合には、Aは、Bに対し、必要費償還請求権を被担保債権として、甲建物について留置権を主張することができますか。
学生:オ はい。Aは、Bに対し、留置権を主張することができます。