司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問14
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問題
令和5年度 司法書士試験 午前の部 問14 (訂正依頼・報告はこちら)
動産質に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せはどれか。
ア 質権者は、質物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、被担保債権の弁済に充当することができる。
イ 質権の設定は、債権者にその目的物を現実に引き渡さなければ、その効力を生じない。
ウ 質権者は、その権利の存続期間内において、質権設定者の承諾がなくとも、質物を第三者に引き渡して、当該第三者のために転質権を設定することができる。
エ 質権者は、質権者による質物の使用について質権設定者の承諾がなく、かつ、目的物の保存のために質物の使用の必要がない場合であっても、質物の使用をすることができる。
オ 質権設定者が被担保債権の弁済前に質権者に対して訴訟を提起して目的物の返還を請求し、質権者が質権の抗弁を主張した場合には、裁判所は、当該請求を棄却するとの判決をするのではなく、被担保債権の弁済と引換えに目的物を引き渡せとの引換給付判決をしなければならない。
ア 質権者は、質物から生ずる果実を収取し、他の債権者に先立って、被担保債権の弁済に充当することができる。
イ 質権の設定は、債権者にその目的物を現実に引き渡さなければ、その効力を生じない。
ウ 質権者は、その権利の存続期間内において、質権設定者の承諾がなくとも、質物を第三者に引き渡して、当該第三者のために転質権を設定することができる。
エ 質権者は、質権者による質物の使用について質権設定者の承諾がなく、かつ、目的物の保存のために質物の使用の必要がない場合であっても、質物の使用をすることができる。
オ 質権設定者が被担保債権の弁済前に質権者に対して訴訟を提起して目的物の返還を請求し、質権者が質権の抗弁を主張した場合には、裁判所は、当該請求を棄却するとの判決をするのではなく、被担保債権の弁済と引換えに目的物を引き渡せとの引換給付判決をしなければならない。
- アイ
- アウ
- イオ
- ウエ
- エオ
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この過去問の解説 (2件)
01
民法(動産質)に関する問題です。動産質に関する問題は、所有権や抵当権のように、毎年必ず出題されることはなく、数年に1回ぐらいのペースで出題されます。
(ア)民法297条第1項は、留置権者は、留置物から取得した果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当ることができると規定しています。この規定は、民法350条によって、質権にも準用されていいるため、本肢は正しいです。
(イ)民法344条は、質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生じる、と規定しています。この「引渡し」には、現実の引渡しのほか、簡易による引渡しや、指図による占有移転も含まれるため、本肢は「現実に引き渡さなければ、質権は成立しない」とするため、誤りです。
(ウ)質権者は、その権利の存続期間内において、(質権設定者の承諾がなくても)自己の責任で、質物について、転質をすることができます(民法348条)。従って、本肢は、正しいです。
(エ)留置権者は、その物の保存に必要な使用をする場合を除き、債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に提供することができません(民法298条第2項)。この規定は、質物にも準用されています(民法350条)。従って、本肢は誤りです。
(オ)債務者の所有する動産を目的として質権が設定され、質物が債務者に引き渡された場合、債務の弁済と質物の返還は、債務の弁済の方が先履行となります。従って、債務者が、債務の弁済の前に、質権者に対して、質物の返還を請求する訴訟を提起した場合は、裁判所は、引き換え給付判決ではなく、請求棄却判決をします(大審院大正9年3月29日判決)。従って、本肢は誤りです。
質権に関する民法の規定は、留置権に関する規定の準用規定が多いので、先に留置権の勉強をして、続いて、質権と留置権は、どこが同じでどこが違うのかを理解するように勉強すれば、効率的です。
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02
動産質の判決に関する論点です。動産質は留置権や同時履行の抗弁権との違いとして、問われるケースが多いので、その点を整理して憶えておくと、短期間で正解肢を導き出すことが出来ます。
ア 297条1項(350条で質権に準用)により、留置権者は、留置物から取得した果実を収取し、他の債権者に先立って、これを自己の債権の弁済に充当ることができるとあるため、本肢は正解となります。
イ 344条の質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生じるとありますが、同条の「引き渡すこと」に、現実の引渡し以外に、簡易による引渡しや、指図による占有移転も含まれるかが問題になりますが、判例(大判昭9.6.2)によると、本条の「引渡し」には、現実の引渡しのほか、簡易の引渡し(182条2項)や、指図による占有移転(184条)も含まれるとあるので、本肢は不正解となります。
ウ 通常、質物は、所有者の承諾なく、動産の質権者は無断使用が出来ませんが、348条により、質権者は、その権利の存続期間内において、(質権設定者の承諾がなくても)自己の責任で、質物について、転質をすることができるとあり、質権を設定することは出来ます。ゆえに、本肢は正解となります。
エ 債務者の承諾を得なければ、留置物を使用し、賃貸し、又は担保に提供することができないとする、留置権の規定、298条2項が350条で動産質に準用されるため、本肢は不正解となります。
オ 判例(大審院大正9.3.29)によれば、債務者の所有する動産を目的として質権が設定され、質物が債務者に引き渡された場合、債務の弁済と質物の返還は、債務の弁済の方が先履行となり、同時履行の関係にはなりません。従って、債務者が、債務の弁済の前に、質権者に対して、質物の返還を請求する訴訟を提起した場合は、裁判所は、引き換え給付判決ではなく、請求棄却判決をすることになります。従って、本肢は不正解となります。留置権や同時履行の抗弁権の場合は、引き換え給付判決であることと、区別して憶えてください。
解法のポイント
イについて、占有改定(183条)は、本条の「引渡し」には含まれない(東京高判昭35.7.27)という判例もあります。占有改定は即時取得についても認められないとされています。その理由は外見上の変化によって、第三者が判断出来ないことにあります。
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