司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問17
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問題
令和5年度 司法書士試験 午前の部 問17 (訂正依頼・報告はこちら)
債権者代位権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せはどれか。
ア AがBに対して債権を有しており、その債権を保全するために必要があるときは、Aは、Bが有する債権者代位権を行使することができる。
イ 甲土地につき、AがBに対して所有権移転登記手続請求権を有し、BがCに対して所有権移転登記手続請求権を有しており、AがBのCに対する所有権移転登記手続請求権を代位行使することができるときは、Aは、Cに対し、甲土地につき、CからA への所有権移転登記手続をすることを請求することができる。
ウ AがBに対して甲債権を有し、BがCに対して乙債権を有している場合には、Aが甲債権を被保全債権として乙債権を代位行使したとしても、乙債権について、消滅時効の完成は猶予されない。
エ AがBに対して甲債権を有し、BがCに対して乙債権を有している場合には、Aが、Cに対して乙債権の代位行使に係る訴えを提起し、Bに対して訴訟告知をした後であっても、Bは、乙債権を第三者Dに譲渡することができる。
オ AがBに対して金銭債権である甲債権を有し、BがCに対して金銭債権である乙債権を有している場合において、Aが、乙債権を代位行使して、自己にその金銭の支払をするように求めたときは、CがBに対して乙債権につき同時履行の抗弁権を有していても、Cは、Aに対して、その同時履行の抗弁権をもって対抗することはできない。
ア AがBに対して債権を有しており、その債権を保全するために必要があるときは、Aは、Bが有する債権者代位権を行使することができる。
イ 甲土地につき、AがBに対して所有権移転登記手続請求権を有し、BがCに対して所有権移転登記手続請求権を有しており、AがBのCに対する所有権移転登記手続請求権を代位行使することができるときは、Aは、Cに対し、甲土地につき、CからA への所有権移転登記手続をすることを請求することができる。
ウ AがBに対して甲債権を有し、BがCに対して乙債権を有している場合には、Aが甲債権を被保全債権として乙債権を代位行使したとしても、乙債権について、消滅時効の完成は猶予されない。
エ AがBに対して甲債権を有し、BがCに対して乙債権を有している場合には、Aが、Cに対して乙債権の代位行使に係る訴えを提起し、Bに対して訴訟告知をした後であっても、Bは、乙債権を第三者Dに譲渡することができる。
オ AがBに対して金銭債権である甲債権を有し、BがCに対して金銭債権である乙債権を有している場合において、Aが、乙債権を代位行使して、自己にその金銭の支払をするように求めたときは、CがBに対して乙債権につき同時履行の抗弁権を有していても、Cは、Aに対して、その同時履行の抗弁権をもって対抗することはできない。
- アエ
- アオ
- イウ
- イエ
- ウオ
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この過去問の解説 (2件)
01
民法(債権者代位権)に関する問題です。司法書士試験の民法において、債権者代位権は、所有権や抵当権ほどではないのですが、比較的よく出題される分野です。
(ア)債権者は、債務者に代位して債務者に属する代位権を行使することができます(最高裁昭和39年4月17日判決)。従って、本肢は正しいです。
(イ)債権者は、被代位権を行使する場合に、被代位権が金銭の支払い又は動産の引き渡しを目的とする場合は、相手方に対して、その支払い又は引き渡しを自己に対してすることを求めることができます(民法423条の3後段)。しかし、この規定は、被代位債権が所有権移転登記請求権の場合には、適用されません。従ってAはCに対して、CからAに対する所有権移転登記を請求することはできないため、本肢は誤りです。
(ウ)債権者代位訴訟の既判力は債務者に及ぶため、代位による請求訴訟が提起されたときは、代位の目的である債権(被代位債権)について、消滅時効の完成が猶予されます(大審院昭和15年3月15日判決)。従って、本肢は誤りです。
(エ)民法423条の5前段は「債権者が被代位債権の行使した場合であっても、債務者は、被代位債権について、自ら取り立てその他の処分をすることを妨げられない」と規定しています。債権者は、被代位債権の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対して、訴訟告知をしなければなりませんが(民法423条の6)、この場合でも、債務者による被代位債権の処分は禁止されないため、本肢は正しいです。
(オ)債権者が被代位債権を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができます(民法423条の4)。従って、Cは、Aに対して、Bに対する同時履行の抗弁権をもって対抗できるので、本肢は誤りです。
(ア)が非常に簡単な枝でしたので、これで正解は(ア)(エ)か(ア)(オ)に絞られます。(オ)は有名な論点から×、(エ)は訴訟告知をしたら処分が禁止されという規定はないという常識的判断で〇、このどちらかに気が付けば、正解を導けます。
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02
債権者代位権の論点です。判例の結論をそのまま機械的に暗記していても、もちろん解けますが、判例で裁判官が使用した規範定立(債権者代位権の制度趣旨や条文趣旨から判示している)を知っておくと、憶えやすい上に、忘れにくい利点があります。
ア 代位権の代位行使が可能かどうかが論点です。判例(最判昭39.4.17)によれば、”代位行使する権利を代位行使する趣旨で本件反訴請求をなすものであり、右代位権行使は適法である”とあり、債権者は、債務者に代位して債務者に属する代位権を行使することができると旨、判示されていますから、本肢は正解となります。
イ 423条の3後段で、”債権者は、被代位権を行使する場合に、被代位権が金銭の支払い又は動産の引き渡しを目的とする場合は、相手方に対して、その支払い又は引き渡しを自己に対してすることを求めることができる”とあります。これは、動産や金銭の場合は、債務者が受け取りを拒否する可能性があるからです。しかし、被代位債権が不動産の所有権移転登記請求権の場合であれば、債務者が拒絶することが出来ないので、直接、債権者のもとへ請求しなくても、責任財産の保全という、債権者代位権の制度趣旨は叶います。よって、本肢のように、AはCに対して、CからAに対する所有権移転登記を請求することはできないため、不正解となります。
ウ 債権者代位権によって債権が行使された場合、消滅時効の完成が猶予されるのは、行使された債権であり、保全される債権ではありません。権利に眠る者は権利を失っても仕方がないという、消滅時効の趣旨から考えても、行使された債権について、時効の完成猶予が起こると考えるのが当然であることと、裁判上、行使した場合、既判力が債務者にも及ぶ(大審院昭和15.3.15)ことから考えても、被代位債権について、消滅時効の完成が猶予されると考える方が自然だからです。よって、本肢は不正解となります。
エ 債権者代位権の行使は、差押えと違い、債務者への処分禁止効果は発生しません(423条の5前段)。訴訟告知(423条の6)も、債務者の訴訟参加の機会を保障する手続を義務付けただけのものであり、債務者に参加義務はありません。よって、債務者は債権者に訴訟告知を受けた後であっても、被代位債権を第三者に譲渡出来るので、本肢は正解となります。
オ 423条の4により、”債権者が被代位債権を行使したときは、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって、債権者に対抗することができる”とあります。これは、代位によって行使された時に、直接の債権者に対して行使出来た抗弁が使えないとなると、第三債務者の保護に欠けるからです。よって、本肢のCは、Aに対して、Bに対する同時履行の抗弁権をもって対抗できないとする記述は不正解となります。
解法のポイント
正誤の判断に迷う肢は、2つの可能性を疑います。一つは自分が知らない条文や判例が出題された可能性です。もう一つは、そんな規定がないことを知っているかどうか、もっともらしく、本当は存在しない制度を肢の一つに入れてある可能性です(本問で言えば、肢エ)。後者であれば、知らなくて当然なので、まず、後者を疑って、肢を切ってみます。あとは、消去法で正解にたどり着いた場合、実際に後者であった確率が高いです。司法書士試験では、それなりの頻度でこのパターンの問題が見受けられますから、ある程度、有効な解法になると思います。
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