司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問18

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問題

令和5年度 司法書士試験 午前の部 問18 (訂正依頼・報告はこちら)

請負に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア  目的物の引渡しを要する請負契約においては、報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。
イ  目的物の引渡しを要する請負契約においては、請負人が仕事を完成した後であっても、その目的物の引渡しが完了するまでは、注文者は、いつでも損害を賠償して契約を解除することができる。
ウ  注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人は、仕事を完成した後であっても、報酬の支払がされるまでは、注文者の破産手続開始を理由として請負契約を解除することができる。
エ  請負人が注文者に引き渡した目的物の品質が請負契約の内容に適合しない場合には、その不適合が注文者の供した材料の性質によって生じたものであり、かつ、請負人がその材料が不適当であることを知らなかったときであっても、注文者は、請負人に対して、履行の追完の請求をすることができる。
オ  請負契約が仕事の完成前に解除された場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
  • アウ
  • アオ
  • イエ
  • イオ
  • ウエ

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この過去問の解説 (2件)

01

民法(請負)に関する問題です。この分野は、司法書士の民法においては頻出分野ですが、所有権や抵当権と比較するとややマイナーで、勉強が疎かになりがちですので、注意しなくてはなりません。

選択肢2. アオ

(ア)請負契約においては、報酬は、原則として、仕事の目的物の引き渡し同時に支払わなければなりません(民法633条)。従って、本肢は正しいです。

(イ)請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して、契約の解除をすることができます(民法641条)。この条文の反対解釈で、仕事が完成した後は、その損害を賠償しても、契約は解除できません。本肢は、仕事の完成後でも損害を賠償して契約を解除できるとしているため、誤りです。

(ウ)注文者が破産開始手続開始決定を受けた場合は、請負人または破産管財人は、契約の解除をすることができます。ただし、請負人による契約の解除については、仕事が完成した後は、この限りではありません(民法642条第1項)。本肢は、請負人は、仕事が完成した後でも、注文者の破産手続開始決定を理由として、契約の解除ができるとしているため、誤りです。

(エ)請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引き渡しを要しない場合には、仕事が終了したときに仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指示によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りではない。本肢は、知りながら告げなかった時でも、履行の追完の請求をすることができるとしているため、誤りです。

(オ)請負契約が仕事の完成前に解除された場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち、過分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分は仕事の完成とみなされます。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて、報酬を請求することができます(民法634条)。従って、本肢は正しいです。

まとめ

この問題はすべて条文からの出題で、一般的には条文だけからの問題は簡単なのですが、民法(請負)に関する条文は長文が多いので、本問題は意外に難しくなっています。

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02

債権各論の請負の論点です。条文からの出題ですが、平成の大改正で大幅に変更がありますから、旧法から勉強を開始した人は注意が必要です。

選択肢2. アオ

ア 633条により、報酬は、仕事の目的物の引き渡しと同時に、支払わなければならないとし、ただし書きで、物の引き渡しを要しないときは、労働終了後でなければ報酬を請求出来ないとする、624条1項を準用しています。本肢では、物の引き渡しを要するので、633条ただし書きには当てはまらないため、原則通り、報酬と仕事の目的物の引き渡しは同時履行の関係になりますから、正解です。
 

イ 641条に、請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して、契約の解除をすることがでるとあり、この反対解釈として、仕事が完成した後だと、もはや、その損害を賠償しても、契約は解除できないことになります。よって、本肢は、不正解となります。
 

ウ 642条1項により、注文者が破産開始手続開始決定を受けた場合は、請負人または破産管財人は、契約の解除をすることができます。これは、報酬が後払いであるため、仕事完成前だと、請負人は報酬債権を行使出来ない状態なので、保護が必要だからです。そのため、仕事が完成した後であれば、既に報酬債権を行使出来る状態になっているため、適用がなくなります(642条1項ただし書き)。本肢では、請負人は、仕事が完成した後であっても、注文者の破産手続開始決定を理由として、契約の解除ができるとあり、不正解となります。
 

エ 636条により、”請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引き渡しを要しない場合には、仕事が終了したときに仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指示によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りではない”とあります。本肢では、請負人はその材料が不適当であることを知らなかったとあるので、注文者は履行の追完請求は出来ません。よって、本肢は不正解となります。
 

オ 634条により、”請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて、報酬を請求することができる”とあるため、本肢は正解となります。
 

まとめ

解法のポイント

すべて条文からの出題です。憶える時のポイントは当事者の立場になって考えてみることです。民法は必ず、両当事者のうち、弱者の保護を重点に、全体のバランスをとるように規定されていますから、ほとんどが妥当な結論になっているはずです。

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