司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問19
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問題
令和5年度 司法書士試験 午前の部 問19 (訂正依頼・報告はこちら)
委任に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せはどれか。
ア 受任者は、委任者の許諾を得なくとも、やむを得ない事由があるときは、復受任者を選任することができる。
イ 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用の償還を請求することができるが、支出の日以後におけるその利息の償還を請求することはできない。
ウ 受任者が第三者との間で委任事務を処理するのに必要と認められる金銭債務を負った場合において、受任者が委任者に対して自己に代わってその弁済をすることを請求したときは、委任者は、受任者に対して他の売買契約に基づき代金支払債権を有していても、受任者による当該請求に係る権利を受働債権とし、受任者に対する当該代金支払債権を自働債権として、相殺することができない。
エ 受任者の利益をも目的とする委任については、その利益が専ら受任者が報酬を得ることによるものであるときであっても、これを解除した委任者は、受任者の損害を賠償する義務を負う。
オ 委任の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
ア 受任者は、委任者の許諾を得なくとも、やむを得ない事由があるときは、復受任者を選任することができる。
イ 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用の償還を請求することができるが、支出の日以後におけるその利息の償還を請求することはできない。
ウ 受任者が第三者との間で委任事務を処理するのに必要と認められる金銭債務を負った場合において、受任者が委任者に対して自己に代わってその弁済をすることを請求したときは、委任者は、受任者に対して他の売買契約に基づき代金支払債権を有していても、受任者による当該請求に係る権利を受働債権とし、受任者に対する当該代金支払債権を自働債権として、相殺することができない。
エ 受任者の利益をも目的とする委任については、その利益が専ら受任者が報酬を得ることによるものであるときであっても、これを解除した委任者は、受任者の損害を賠償する義務を負う。
オ 委任の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
- アウ
- アオ
- イウ
- イエ
- エオ
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この過去問の解説 (2件)
01
民法(委任)に関する問題です。委任は、司法書士試験で毎年必ず出題される頻出分野です。実務でも大変重要ですので、しっかり学習しておく必要があります。
(ア)受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することはできません(民法644条の2第1項)。従って、本肢は正しいです。
(イ)受任者は、委任事務を処理するのに必要があると認めらる費用を支出したときは、委任者に対して、その費用及び支出の日以後におけるその利息を請求することができます(民法650条第1項)。本肢は、利息は請求できないとしているため、誤りです。
(ウ)最高裁昭和47年12月22日判決では、受任者が民法650条第2項前段の規定に基づき、委任者をして受任者に代わって第三者に弁済をなさしめうる権利を受働債権として、委任者が受任者に対して有する金銭債権を自働債権として相殺することはできない。と判断しています。従って、本肢は正しいです。ちなみに、判例上の民法650条第2項前段は、受任者は、委任事務を処理するのに必要と認めらる債務を負担したときは、委任者に対して、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる、という規定です。
(エ)委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができます。そして、委任の解除をしたものは、やむを得ない事由があった場合を除き、委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものは除く)を目的とする委任を解除したときは、相手方の損害を賠償しなくてはなりません(民法651条第1項第2項)。本肢は、その利益がもっぱら受任者が報酬を得ることによるものであるときであっても、損害を賠償する義務を負うとしているため、誤りです。
(オ)賃貸借契約を解除した場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生じます(民法620条前段)。この規定は、民法652条によって、委任にも準用されます。従って、本肢は正しいです。
この問題は、条文から4枝、判例から1枝の出題でした。ただし、(エ)が条文からの出題といっても、非常に間違いやすい論点なので、判例からの出題があることも考えると、全体としては難しい問題といえます。
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02
債権各論の委任の論点です。各論の論点は具体的な場面をイメージ出来ると、理解しやすく、忘れにくいです。
ア 644条の2、1項により、”受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することはできない”とあるので、委任者の許諾か、やむを得ない事由がある場合のどちらかであれば、復任することは出来ます。よって、本肢は正解となります。
イ 650条1項により、”受任者は、委任事務を処理するのに必要があると認めらる費用を支出したときは、委任者に対して、その費用及び支出の日以後におけるその利息を請求することができる”とあるので、本肢の利息は請求できないとする記述は不正解となります。
委任の場合、受任者に対する責任は比較的、厳格に規定されています。もし、受任された内容が長期期間を要する場合、初期の段階で委任者のために支出した費用に利息がつかないとなると、委任者は早期に受任者に償還しない可能性があり、その費用によっては、委任者の活動に支障が及ぶ可能性があります。事前請求出来る規定(649条)があるくらいですから、これは当然の規定と言えるでしょう。
ウ 判例(最判昭47.12.22)によると、受任者が有する代弁済請求権に対しては、委任者は、受任者に対する債権をもって相殺がすることが出来ないとしています。もし、相殺を認めれば、受任者は自己資金をもって事務処理費用の立て替払を強制されることになり、委任事務に支障が出る場合があるからです。よって、本肢は正解となります。
エ 651条1項により、”委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。”とあります。そして、651条2項ただし書き、及び同条同項2号により、”委任の解除をした者は、委任者が受任者の利益(専ら報酬を得ることによるものを除く。)を目的とする委任を解除したときを除いて、相手方の損害を賠償しなくてはならない”とあります。本肢では、その利益がもっぱら受任者が報酬を得ることによるものであるときであっても、損害を賠償する義務を負うと記述されているので、不正解となります。
オ 620条前段により、”賃貸借契約を解除した場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生じる。”とあり、この規定が委任にも準用されています(652条)。賃貸借などの継続的な契約の場合、解除の遡及効を否定しないと、その法律行為を前提にした、様々な法律行為の全てが無かったことになり、当事者間の清算が複雑になるため、損害賠償を除いて、遡及効を否定することにしたからです。継続的な契約である委任にも、同様の趣旨が通じるため、準用されています。よって、本肢は正解となります。
解法のポイント
問題文は判例の趣旨に照らしとありますが、ウを除いて、条文知識を問う問題となっています。つまり、条文がきちんと頭に入っていれば、消去法で必ず、解ける問題です。
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