司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問21

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問題

令和5年度 司法書士試験 午前の部 問21 (訂正依頼・報告はこちら)

未成年後見に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア  未成年者に対して最後に親権を行う者であっても、管理権を有しない場合には、遺言で未成年後見人を指定することはできない。
イ  未成年後見人が欠けたときは、家庭裁判所は、職権で未成年後見人を選任することができる。
ウ  未成年後見人が数人選任されている場合であっても、各未成年後見人は、未成年被後見人の身上の監護に関する権限を単独で行使することができる。
エ  家庭裁判所は、法人を未成年後見人に選任することができる。
オ  親権を喪失した父又は母は、未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求することができない。
  • アウ
  • アエ
  • イエ
  • イオ
  • ウオ

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この過去問の解説 (2件)

01

民法(未成年後見)に関する問題です。問題文が短く端的でしたので、普段から条文を丁寧に読んでいる方であれば、正解できたと思います。

選択肢2. アエ

(ア)民法839条は「未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りではない。」と規定しています。従って、本肢は正しいです。

(イ)民法840条は、「前条の規定(839条の規定)により未成年後見人となるべき者がいないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けた時も同様とする」と規定しています。設問は、未成年後見人が欠けた時は、裁判所が職権で未成年後見人を選任するとしているため、誤りです。

(ウ)民法857条の2第1項は「未成年後見人が数人あるときは、共同してその権限を行使する」と規定しています。従って、本肢は誤りです。

(エ)民法847条では、後見人になることができないものとして①未成年者②家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人または補助人③破産者④被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びに配偶者及び直系血族⑤行方の知れない者、をあげています。この中に、法人は含まれないため、法人も未成年後見人になることができます。従って、本肢は正しいです。

(オ)民法841条は「父若しくは母が親権若しくは管理権を辞し、又は父若しくは母について、親権喪失の審判があったことによって未成年後見人を選任する必要が生じた場合は、その父または母は、遅滞なく未成年後見人の選任を、家庭裁判所にしなければならない」と規定しています。本肢は、親権を喪失した父または母は、未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求できないとしているため、誤りです。

まとめ

本問は、(イ)や(オ)が、今までほとんど出題されていなかった条文の細かいところから出題されていますので、やや難しい枝となっています。

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02

未成年後見の論点です。未成年後見は親権者を行使する者がいなくなれば、当然に開始されます(838条1項)が、未成年後見人はあくまで、利害関係人などによる請求を経て、家庭裁判所の審判で決まります。開始されることと、未成年後見人が決まることとの時期的な隔たりがある場合があるので、成年後見制度との違いに注意してください。

選択肢2. アエ

ア 839条により、”未成年者に対して最後に親権を行う者は、遺言で、未成年後見人を指定することができる。ただし、管理権を有しない者は、この限りではない。”とあるため、本肢は正解となります。
 

イ 840条により、”未成年後見人となるべき者がいないときは、家庭裁判所は、未成年被後見人又はその親族その他の利害関係人の請求によって、未成年後見人を選任する。未成年後見人が欠けた時も同様とする”とあるため、あくまで、請求によって、未成年後見人は選任され、裁判所が職権で選任することはありません。よって、本肢は不正解となります。
 

ウ 857条の2の1項により、”未成年後見人が数人あるときは、共同してその権限を行使する”とあるため、その反対解釈として、単独では行使出来ないと考えられます。よって、本肢は不正解となります。
 

エ 未成年後見人の欠格事由が、847条に”次に挙げる者は後見人になることができない”として、1号から5号まで、限定列挙されています。その中に法人は含まれておらず、法人は未成年後見人になることができると考えられます。従って、本肢は正解となります。
 

オ 841条により、”父若しくは母が親権若しくは管理権を辞し、又は父若しくは母について、親権喪失、親権停止若しくは管理権喪失の審判があったことによって未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父又は母は、遅滞なく未成年後見人の選任を、家庭裁判所に請求しなければならない”とあり、本肢では、親権を喪失した父または母は、未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求できないと記述されているため、不正解となります。
 

まとめ

解法のポイント

ウの未成年後見人は共同での権限行使が基本となりますが、役割分担を禁止している条文もないので、難しいところですが、設問が身上の監護に関する権限に限っていることや、他の選択肢からの関係で不正解としています。また、複数人いる場合、原則としては、成年後見人は各人、単独で行使、未成年後見は共同で行使が基本と考えられています。

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